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.邂逅-2-








「ではそろそろ移動しましょう。僕の後についてきてください。」


マシューは立ち上がり、すぐ側の扉から出ていく。ラキたちもそれに続いて歩き始めた。外に出ると、空は快晴で青く広がる空が清々しい。村を歩くと数人の村人とすれ違い、軽く挨拶をするが、皆ラキに対して笑顔を見せる。それだけ勇者の存在が村にとって大きいということなんだろう。


ラキたちはマシューの後ろを歩き、森の中へと入っていく。そこには道という道はなく、知らない者が入ったら間違いなく迷ってしまうだろう。足場も悪い上、昨日の雨で土はぬかるんでいる場所が多い。慎重に進みながら村から十数分歩いたところで、マシューは立ち止まった。そこに何かがあるわけでもなく、鬱蒼と生い茂った木々の間でマシューは呟く。


「ミネルヴァ、入ります。」


その瞬間、リコは何かが空気中を走った気配を感じた。しかし、キョロキョロと辺りを見回しても何もなく、ロンたちも何かを感じた素振りを見せない。


「?どうしたリコ?」


リコの様子に気がついてロンが言う。しかし、リコも一瞬のことだったので気のせいだったと思うことにして首を振った。


「う、ううん。なんでもない…。」


すると、ラキがリコの肩に手を置いて微笑む。


「気のせいじゃないよ。」


きょとんとするリコ。そのときマシューが振り返って皆を見回した。


「進みます。ついてきてください。」


そう言って一歩を踏み出したマシューの足は突然消えていき、瞬く間に姿が見えなくなってしまった。


「へ?…ええ―――――!?」


驚きのあまりリコは大声を出してしまった。


「―――これ、村に入るときもそうだったな…?」


そう、リコは気を失っていたが、マシューがラキたちを村に案内したときにも同じような現象があった。


ロンがラキに視線を送ると、ラキはう頷いてマシューの消えた場所に向かった。すると吸い込まれるようにラキの姿が消えてしまう。


「うわああっ!?ラキちゃん…!?」


おどおどしているリコの手を掴んで、ロンも同じ場所を目指す。


「おっ、お兄ちゃ――――?」


「…多分これが魔人の魔力だ。」


ロンの言葉を聞いて、リコは目を大きく見開いた。そして二人の姿も消えて、森の中には誰もいなくなった…。



「――――…はれ?」


消える自分の姿を見て目を瞑っていたリコが次に見たのは、自分を見るマシューたちの姿だった。皆、傷ひとつなく平然と立っているのを見て、思わず安堵のため息をつく。


「大丈夫ですよ。ただトンネルに入っただけですから。」


マシューは優しくリコに言った。


そこは先ほどまでいた森ではなかった。薄暗いトンネルの中で、よく見ると山を掘って作られた跡がある。どうやら人工的に作られたトンネルのようだが、どうしてこんなところにいるのかリコは戸惑っている。


「リコ、後ろを見て。」


ラキに言われて振り返ると、そこには今までいた森の姿があった。リコたちが立っているのはどうやらトンネルの入り口だったらしい。なのでマシューたちがいる方より、森の方が草も生えているし、明るく暖かい。


「…でも、こんなトンネルなかった…よ?」


確かに森の真ん中にいて、体が消えたと思ったらトンネルの中に立っていた。状況が理解できず、リコは顔をしかめる。


「これは結界なんです。このトンネルが外から見えないよう、魔力で隠しているんですよ。…お二人とも、ラキさんに聞いているでしょう?」


マシューは静かに問う。どうやらラキが魔人に会うという情報をロンたちに伝えたことを知っていたらしい。


「ラキさんが魔人について話さず連れてきたなんて思ってませんよ。」


苦い顔で笑うラキに、マシューはお見通しだというような微笑みを向けた。


マシューが持ってきたランプを灯して、四人はトンネルの中を進んでいく。


高さは二メートル、横幅は大人二人が通れるぐらいの狭いトンネルをランプ一つで数百メートル歩くと、目の前に光が見えてきた。


「っ――――…まぶしい…。」


暗がりに慣れた目が日光を浴び、リコは思わず目を細めて呟く。



「…な、んだここ――――…?」


目が光に慣れたころ、ロンは目の前の光景に驚き感嘆の声をあげた。


トンネルを抜けた先には、太陽の光が降り注ぐ中、白く美しい神殿が建っていたのだ。至るところにシンプルだが細かい彫刻が彫られていて、周りには三本の太い柱と、一本だけ折れた柱がある。頭上を見上げると、空が丸く切り取られたように見えた。山の頂上はまるで火山のように大きく凹んでいて、そこに悠然と建てられた神殿が神秘的な雰囲気を作っている。周りの壁は円く、大きな傾斜になっていて、そこには草が生えてはいるが大きい木はない状態だった。


「さあ、いきましょう。」


マシューは神殿の入口前の階段を昇り、重そうな石の扉を両手で押した。するとそこには何もない広い部屋があるだけで、石の隙間から光が入っているが変わった様子はない。マシューは中央より右側の床を触り、一部を持ち上げた。


「階段…?」


リコたちの前で開けられた床の下には、細く下につながる階段が現れた。マシューに続いて入った瞬間、ひんやりとした涼しい空気が流れる。



そして―――…。









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