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。変化-8-







「…―――――はいっ!?」


「シャーロット!?」


突然の発言にラクトもウルキもショックを受けている。まあ当然だろう、いきなり死を宣告されたのだから。


「別に今すぐってわけじゃない。が、お前には決定的な弱点がある。それを克服しない限り、旅の途中で命を落とす確率は非常に高い。」


「んななななななな…!」


シャーロットの真剣な目が余計にラクトの恐怖を煽った。ウルキも心配そうに二人を交互に見つめている。


「そのっ弱点ってなんですか!?な、なお…直せないんですか!?」


「直せないわけじゃない。が、完璧に直すまでかなりの努力が必要だ。人によっては途中で諦めてしまうだろう…それでも、必死で直す覚悟があるか?」



シャーロットの眼差しはまっすぐラクトの瞳に向かっていた。ラクトは混乱する頭を落ち着かせて、今までの旅を思い出す。たった数日だが、初めて村を出て、見たこともなかった魔物と闘って、いろんな人に会って、ウルキと笑って、シャーロットに怒られて…。辛くないといったら嘘になる、けれどラクトは二人と旅をすることが楽しい。そんな二人に迷惑をかけたくはない。自分自身が強くなりたいなら尚更――――。



「――――シャーロットさん、お願いします!教えてください!!」


「今までより断然厳しいぞ?」


「それでも…逃げません!!」


まったくあの冷たい目とは正反対だ。ラクトの瞳は強く熱い想いで溢れている。シャーロットは仕方ない、と言いたそうな顔をしたあと、意地悪そうに笑った。


「…言ったな?覚悟しとけよ?」









ラクトたちはその日、セレンたちの家で世話になることになった。


「いやあ、やっぱり大勢で食べる食事はいいな!」


セレンがニコニコしながら手料理を振る舞った。リビングにはラクトたち三人とセレン姉弟、そしてアーニーたちもいて、部屋は結構ぎゅうぎゅうだ。テーブルにも床にも食事の皿が置かれ、足の踏み場もない。それでも皆は楽しそうに食事を楽しんでいた。


「あらあ、美味しいわよこれ。ちゃんと女らしいとこあるじゃない。」


「おい、皿よこせ!食わなくていいぞホロン!!」


「あはは、でも本当に美味しいですよ!ね、ウルキ。」


「うん、とっても!!」


「良かったね、姉ちゃん。」


「よーし、飲むぞアーニー!」


「いいわね!私強いわよ?」


「「!だ、だめ―――――!」」




ラクトとウルキの制止は間に合わず、シャーロットがいつも通りに具合が悪くなり、食事会はお開きとなった。


夜、セレンとウルキ、シャーロットはセレンの部屋、セインの部屋にはセインとラクトが、アーニーたちはリビングで寝ることになり、それぞれにこの日起こったことを笑い語りながら夜を明かした。





次の日、シャーロットたちはセレンたちに見送られ、再び港に向かって旅を始める。


「皆、元気でな―――――!!」


「お気をつけて―――――!!」


「「またいつか会いましょう――――!!」」


ラクト達が見えなくなるまで、四人は大きく手を振っていた。そして見送りが終わると、セレンは三人の方に振り返ってニンマリと笑みを浮かべる。


「よっしゃー!!ガンガン働いて貰うから覚悟しとけよ!!」


「あらあら、横暴な雇い主ね。いいわ、受けて立とうじゃない!」


「報酬に油を付けること、忘れるんじゃないわよ!!」


仲良くなった姉と元花泥棒二人組を見て、セインは嬉しそうに微笑んだ。


「さあ、仕事を始めましょう!」









「ふふふ。」


セレンたちと別れたあともウルキは嬉しそうに微笑んでいた。皆の姿はもう振り返っても見えない。しかし楽しかった時間は紛れもなくウルキの中で大切なものになった。


「いい人たちだったね。」


ラクトが言うと、ウルキは満面の笑みを浮かべ頷く。


「…なんか、思い出しちゃった…。」


「?」


ウルキがポツリと呟いたが、ラクトが尋ねようとしたとき強い風が吹き抜けた。



チリリリン。



するとどこからともなく鈴の音が聞こえてくる。


「?なんだろこの音。」


「ああ!昨日の夜セレンさんに教えてもらったの。この花は"キリルフィル"、別名"カゼスズナ"っていって、風が吹くと葉っぱ同士が擦れ合って鈴みたいな音を奏でるんだって。――――…綺麗な音。」


「…うん。」


耳を澄ませて心地好い音色に二人がうっとりしていると、シャーロットが欠伸をしながら言った。


「音なんて腹の足しにならないじゃないか。ほら、とっとと行くぞー。」


「んもうっ、シャーロットったら!!」


「あははは!!」





青空の下、黄色い花が咲き誇る中をラクトたちは進んでいく。花の音色にこれからの旅の行く末にある希望を感じながら―――――…。










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