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。運命の出会い-3-





カランカランとドアに付けられた鈴を鳴らして、二人は店内に入り色々見てまわることにした。この町に来るまでの間にラクトの服はかなり汚れていたり破れていたりしているため、数枚着替えを買っておかなければならない。洗濯はするものの、どうしても魔物の血などは落ちにくいのだ。ラクトは肌着やズボンなど、必要なものを最低限買うことにした。


「ウルキは決まった?」


自分の買うものを持って、ラクトはウルキの元に歩いていく。


「うん、私これを買おうと思って。」


そう言ってウルキが手に取ったのは、頭巾のような被り物だった。


「え?服は?」


ラクトはウルキの答えに目をぱちくりさせていた。


「もちろん普通の服も買うわ。…でもね、やっぱりこの髪の色目立っちゃうと思うの。なかなか白い髪っていないでしょう?それに、まだ人間の多い場所って馴れなくて…苦手なの。だからちょっと隠れるみたいでいいかなって。…変かな?」


今まで長い間人間との接触を制限してきたウルキにとって、どうしても気にすることは多いらしい。なかなかハッキリした不安を言わないウルキだが、やはり人間の視線は恐いのだ。そんな気持ちをラクトは読み取る。


「…大丈夫、全然変じゃないよ。ウルキはウルキだ。」


そう言ってニコッと笑顔を見せた。


「うん。ありがとう、ラクト。」


ウルキも照れたように笑顔になって、会計をしにカウンターに向かった。


「買った服に着替えるから、ラクトもお会計してて。」


そう言うとウルキは店の片隅の試着室に入って行った。ラクトも服を持ってカウンターに向かい、台の上に商品を置いた。


「ウフフ、いらっしゃーい。可愛らしいカップルねぇ?観光?」


カウンターにいた女店主がニヤニヤとラクトを見て言った。


「カッ…!?い、え、ちちち違います――――!」


明らかな動揺ぶりに女の人は笑って小声でラクトに話しかけた。


「いいじゃない照れなくても。お似合いよー?可愛いわよね、彼女。あ、ほらこんなのとか似合うわよぉ?」


そう言って取り出したのは髪飾りだった。深い青色の石がキラキラと光っている。


「珍しい彼女の髪の色に映えると思うわよ?まけとくからプレゼントにどお?」


「ええ!?いやあ…まだ、彼女じゃないというか…え、ええと…。」


「まだ、ってことはこれからってことだね?いいねぇー若者は。」


「いやぁー…えへへ。」


顔を赤らめて照れながら、ラクトは店主と話をしているとき、着替え終わったウルキが試着室から出てきた。


「お待たせ…じゃ、ないみたいね。」


ラクトがまだカウンターにいることを確認すると、また店の中を見て暇を潰すことにした。すると、ふと見た窓の外で気になる光景が飛び込んできて、ウルキは急いで店の外に出てしまった。ウルキが出ていったことにも気づかず、ラクトはまだお会計をしている。


そして、やっと支払いを終えて試着室にやってきたラクトだったが。


「ごめん、遅くなって…ウルキ?」



「…何よ?」


試着室の向こうからは低く太い女性の声が聞こえてきて、ラクトは驚き固まった。そして当然出てきたのはウルキではなく、恰幅のよいおばさんだった。


「なんか用?」


「――――っ!失礼しましたー!」


ラクトはおばさんに素早くお辞儀をして、女店主のところに行った。


「すみません!彼女、じゃなくて、一緒にいた女の子知りませんか!?」


すると店主はけろりとした顔で答える。


「出てったよ?あんたが会計してる間に。気づかなかったのかい?」


「ええ!?」


あわてて外に出ようとしたラクトに、店主はこう呼び掛けた。


「若者よ、恋とはハプニングだよ!」


ラクトは顔を真っ赤にしながらペコリとお辞儀をして店をあとにした。







一方、ウルキはというと。


「こらっ!ケンカなんてやめなさい!」


と、子供たちのケンカの仲裁に入っていた。


服屋の中からウルキは一人の子供が二人がかりで追いかけられているのを見て、止めさせようと急いで外に出たのだ。だが子供たちは細い路地を通って人気の少ない方へと入っていき、もう少しで見失いそうになる。しかし、道の先は小さな公園があり、そこで二人の子供が座っている子供の帽子を引っ張ったりしているのが見えた。追いついたウルキはついに大声を出して子供たちを叱ったのだ。


「うわーぃ、逃げろー!」


「おっかねー!」


いじめていた二人はウルキに気づくと一目散に公園から逃げていった。残された少年はただジッと動かず、自分の大きな帽子を両手で掴み、顔を隠している。


「もうっ。ケンカはだめよ?大丈夫?」


ウルキは逃げていく少年たちが見えなくなると、しゃがみこんでいる少年の方へ視線を向けた。少年は黙ったまま顔を隠し続けている。


「あなたこの町の子?」


ウルキが質問すると、少年は小さく頭を左右に振った。


「そうなの?誰かと一緒にこの町に来たの?その人は?」


「…。」


少年はまた黙って何も反応しない。ウルキは少年の元に近づき、少しかがんでまじまじと少年を見た。大きく膨らんだ帽子から見える髪は綺麗なエメラルドグリーンだ。帽子をしっかりと掴んだまま下を向き続ける少年に、ウルキは優しい声で話しかけた。


「…私は敵じゃないわ。大丈夫よ。」


すると、少年はゆっくりと顔を上げて、青く透き通った瞳をウルキに向けた。






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