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塔の魔法使いと見守る者、見守られる者

広い広い、それだけの空間。


あるのはただ白い石畳に白い壁と










それを真っ赤に彩る夥しい鮮血だった。


「ガァァァァアアァアアアァァァアアッ!?…グッ、カハッ。………クソがぁ。」


悪態を吐きながら、またも腹の底から湧き出てくる鉄の味のする液体。


それを力なく口から溢すように吐く男がいた。


倒れ伏しながらも、なんとか身体を起こそうと腕をついて上半身を起こす。


視界が揺れて見えるのは身体の震えか、はたまたそう見える程に弱っているのか。それとも、その両方か。


言うことの聞かない身体に鞭を打ち、立ち上がろうとするも身体を支えきれずにその場に倒れる。


もう何日そうやって血を吐き続けているのか、とうに感覚はない。


絶え間なく襲う痛みに顔を歪ませ、男は再び雄叫びをあげる。


「ハァ、ハァ、ハァ…っがぁ!?」


僅かな間痛みが消えたことで、憔悴しきった様子で息をしていれば、胸に一際強い痛みと衝撃を受け、そこから血が噴き出していった。


『バカだね、君は。そうなることが分かっていたくせに…。何でさっさと処理しなかったんだい?ソーマ。』


男の頭の中で不意に響く声。


最も会いたい者ので、最も聞きたくない者の声。


弱っていた眼光に光が戻り、文字通り飛び上がると辺りに破壊を振り撒く。


黒い何かが全方位に隈無く放たれ、強い衝撃が男のいる空間を揺るがす。


守護者の力では絶対に破壊は叶わない床や壁を、意図も容易く男は抉る。


「てめえがその名を呼ぶんじゃねえ!ぶっ殺すぞ!!」


『やれやれ。今の君じゃあまだまだ僕の足元にも及ばない―いや、正確には腰元くらいかな?ふふ、あはははははははは!』


人を小馬鹿にしたような笑い声がソーマの頭に響き、先程直ったばかりの床や壁に、大きな衝撃と共に再び亀裂や穴が生まれる。


『無駄だってば。そんなことよりほら、血が流れすぎて死んじゃうよ?さっさと治しなって。君の能力なら失った血を元通りになんてお手のもんだろう?』


「てめえに言われるまでもねえんだよ!なんだったら、このくそったれな塔もろとも消し飛ばして証明してやろうか!?アァ!?」


『だから無理だってば…。僕があげた力をさっさと統合もせずに十年も溜め込むからこんなことになっちゃって…お願いだから死なないでね?君だけなんだよ、僕が触れても壊れそうもないのは。やっと巡り会えたんだ。君が僕にたどり着くためならなんだって協力するよ?その為にあのいけ好かない女を守護者にしてあげたんだし、餓鬼に関しても見逃してあげてるんだ―――ほんとは後継になんてする気はないんでしょ?君が早く気づいてくれればいいけど…あんなゴミどもに関わってもなんの特にもならない―――』


響く声を遮るように、先程までとは規模がまるで異なる衝撃と音が辺りに響くと、壁に完全に穴が開き、外からの光が射し込んでいた。


「てめえの…物差しで……人の価値を測るんじゃ、ねえ…。」


ドサッ。と音をたてソーマは床に倒れる。


くそったれが。


ポツリとこぼした言葉と共に、ソーマは再び意識を飛ばす。


『ふ、ふふ。あははははははははははははははははははははははは!やっぱりだ!やっぱり君はいいよ。君しかいない。あぁ…。僕の事をこんなにも強く思って。』


それまでソーマが流した大量の血が一ヶ所に集まり、人の形をとる。


それはゆっくりとソーマが破壊した壁近付くと愛おしそうにガラスでも扱うかのようにそっとなぞる。


『愛してるよ…ソーマ。』


それの背後から何かが迫っていたのは気付いていた。


だが、一秒でも長く思いの強さの証である壁を眺めていたかったのであろう。


結局、弾けて消されるまではそれは壁を撫でることを止めようとはしなかった。


「お前が俺の名前を呼ぶんじゃねえって言っただろうが…クソ。」


振り絞った力が、意識を強制的に遠退かせていく。


『君の一番はぼくのものだよ。誰にも渡さない。あの女にも、魔王にも、あの忌々しい餓鬼にも…ね。』


圧倒的な悪意。


純粋で、真っ直ぐなその声は途切れゆくソーマの意識に、血に染まる三人の姿が浮かび上がらせ、意識と共に消えていった。




「なんでかなぁ…ねえ?何で私はソーマなんか好きになっちゃったんだろ?人の気も知らないで、一人傷ついて、他人を遠ざけて、やっぱり傷ついて。こんな馬鹿、他には知らない…。」


「だから、なのではないですか?ソフィア様。」


二人は、ソーマが一人で傷ついていたのをただ見ていたわけではない。


セラフィは種族による特性でソーマを癒し、ソフィアはソーマの中にある星に与えられた守護者としての力の排出に協力していたのだ。


勿論、同じ部屋に居ては二人は無事ではいられないことは分かっていたので、部屋のなかには入らず、階段にて安全を確保しつつサポートしていた。


「あー腹立つ。」


「これが無事終わったら、うんと憂さ晴らししましょう!実はもう計画を立てて―――」


「いや、ソーマにじゃなくて、自分に…なんだけど」


「あぁ。たいした助力も出来ない御自身の無力さに腹を立てられてたんですね?」


「いや、うん…まあ、そうなんだけどね?………何かもう自分にじゃなくてセラっちに腹が立ってきたわ。」


「先ずは図星を指された程度で腹を立てない度量を得ると、一つ上の段階にいけると思いますよ。頑張ってくださいね。」


「うーん…。ソーマがセラっちに度々折檻加えようとする気持ちが少し分かってきたわ…。」


「そういった心を自制するのも一つの修行かと。私も心を鬼にしてソフィア様の修行に付き合わせていただきます。」


「あー、やっぱ腹立つわー…。でも、ありがとね。」


ちょっとだけだけど、元気でた。


声に出さず、胸の内にだけ呟いた後ソフィアは赤く腫れぼったい瞳から流れる滴を拭う。


この後直ぐにマオから念話が入り、気の立っていたソフィアに盛大な八つ当たりを加えられるのだった。


「あーちょっとスッキリした。」


そういうこと止めれば、ソーマもソフィアの気持ちに少しは気付けるのにと思ったが、現状それはそれで面白いので敢えて教えないセラフィであった。

前回のを少し引用してソフィア側の心情を書こうかなと思いましたが、止めた方がいいかな?と思い書いてません。


書いた方がいいよーって方いたら教えてください。


編集し直しますので(汗)

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