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塔の魔法使いと懇願と命令

街へと向かうため、森の中を飛ぶように駆けるファーファ。


「銀…。マオお兄ちゃんに付いててって言ったのに…。銀のバカ。」


背後から音もなく近寄る銀龍に対してポツリと呟く。


「すまぬ…。マスターからの命で、二人が別れた場合はお主に付いていくようにと言われているのだ。」


「……。もういいよ。過ぎたことをこれ以上言ってもしょうがないもん。」


眉間にやや皺を寄せながら、振り返ることもせずただ走り続ける。


自分にできる限りの魔力を足に練り上げ全力で駆けることで街へは半刻もしない内に辿り着いた。


街の門で見張りに付いていた兵達に止まるよう呼び止められるが、我関せずといった様子で潜り抜けていく。


この街で仕事をしているファーファは、本来街に入場の際身分を証明するだけでいいのだが、始めて来た時に払った入国料と同じだけ突破する際に置いていった。


後でまた事情を話しに来ることを叫びながら、ファーファの足取りには迷いがなく、真っ直ぐと目的のマオの居る場所へと向かっていく。


そして、マオの姿が漸く確認できる位置まで来たところで、辺りに濃厚な魔力が流れ、マオはファーファの目の前で力場フィールドへと飲み込まれた。


ファーファは速度を落とすことなく、むしろ加速しながら力場へと突っ込んでいくが、寸前のところで銀龍によって阻まれる。


「邪魔しないで!!」


ファーファはやや乱暴に銀龍を振り払うと、杖にありったけの魔力と力を籠めて一撃を振るう。


「ぐ……くぁ。」


だが、力場には傷一つ付くことなく、籠めた力は反射するように辺りへ散っていく。


その余波をもろに受けたファーファはあっけなく吹き飛ばされるも、よろよろと起き上がり再び攻撃を繰り返そうと突撃を開始する。


その光景に、集まり始めていた住人達は酷く違和感を与えた。


力場は上級の実力者達にとって、所謂切り札のようなもので、それに囚われたものは脱出するには二つの方法しかない。


一つは術者を倒すこと。


こう言ってしまえば酷く簡単に聞こえるが、力場内は術者の力が最大限発揮できる空間となっており、戦いようによっては下剋上げこくじょうも夢ではない。


例として上げるなら、今まさにマオが戦っている相手は殺気を物理的なものに昇華して攻撃をするという異能の持ち主で、力場外なら目の前からでしか放つことができないそれを、内であれば好きな位置から放つことができる。


そして二つ目。


それは、力場を壊すほど強力な一撃を放つこと。だが、それに集中すれば間違いなく術者はその隙をついてくる。


故に、余程実力が離れていない限りは一つ目の方法を取るしかないのだ。


そして、街の人達が何故違和感を感じたか。


これには力場が持ち得る、もう一つの特性が関わっている。


その特性とは『不干渉』。力場は作り上げられた時点でそこに在ってそこにないものとなる。謂わば異次元のようなものを作り上げるのだ。


よって、外部からは認識もできず、触れることもできない。文字通り不干渉となり、一般人では力場に関する一切の事を一時的に忘れ、異次元であるが故にその場をなんの障害もなく素通りしてしまう。


ファーファや銀龍は、ある一定の水準を越えた実力を持っているために、認識し、触れることができたのだ。


だからこそ、その光景が異様なものに見え、散り始めていた観衆は再び集まり始めていた。


『止せ。それ以上は無理だ。ファーファよ、御主にはそれ(フィールド)は破れん。死にたいのか。』


もう何度目かになる突撃を行ったファーファは、ヒューッ、ヒューッ、と怪しげな呼吸に変わっている。


「銀…。」


悔しげに顔を歪め、力一杯杖を握る両手からは僅かに血が滴る。


「お願い、します。マオお兄ちゃんを助けて。」


自分の力不足はとうに悟っていたが、それでも諦めることができずに向かっていった。だが、それももう体力の限界で、へたりと力なく座り込むファーファは、瞳から大粒の涙を溢しながら懇願する。


『…………すまん。できぬ相談だ。』


銀龍は、マオが今男とだけ戦っているのではないことに気が付いていた。


それは自身の主から言われていた魔王の意思。この先の道をマオ自身に選ばせるため、銀龍はその邪魔をしないよう『命令』されていたのだった。


「銀!?お願い!お願いだから…。マオお兄ちゃんを…。」


力を振り絞って立ち上がり、銀龍に掴み寄り懇願する。


その必死な思いと、まだ幼い少女の瞳から流れ落ちる涙に銀龍も顔をしかめる。


『………………すまぬ。』


その一言にファーファの膝が再び折れそうになるが、右足を後ろへと伸ばし、その場に踏み留まるとゆっくりと視線を銀龍へ合わせる。


『なっ………!?』


そのファーファの瞳は深紅に彩られ、まるで別人のような雰囲気を漂わせていた。


「銀龍。『あれを壊せ』!」


(身体が、動かぬ…いや、違う!?)


「了解したマスター。」


突如として上塗りされた『命令』。その言葉に突き動かされるように銀龍の意思とは関係なく口を開き、人の形態へと姿を変える。


それも、舌足らずな子供の姿などではなく、完全な大人としての姿だった。


「あ…れ?…………銀?」


深紅の瞳から、空のような青い瞳へと戻ったファーファは、目の前の男性が銀龍と直ぐには気付くも、声を掛けるのが戸惑われた。


何故なら、その身から発せられる殺気にも近い力強い魔力は、一度も感じたことがなかったからだ。


「我が身に秘められし怒れるいかずちよ。か弱き者達を尽くほふれ。《導死庄厳秀麗雷》(ダオスジャンイエンシウリィレイ)」


銀龍より放たれる細い銀色の光。それが力場に触れるや否や、眩い閃光とけたたましい爆音に集まっていた観衆は尽く意識を失う。


突然の光景に眼をやられ、まともに眼が見えるようになった時には力場が崩れ落ちていくところだった。


その光景に、ファーファは先程までの痛みや疲労も忘れ、血まみれになりながらも立っているマオに向かって一心不乱に駆け出していく。


なれない形態で、必要以上に力を籠めたことで竜の姿に戻った銀龍は、先程自分の身に起こったことはとりあえず胸に納め、ファーファに追従していく。



ファーファはマオに近付くにつれ、凄まじくスピードを上げていき、マオの名前を叫びながら、マオに向かって飛び付いた。


「ゴファ……。」


その頭からいった飛び付きは見事に鳩尾を捉え、マオは堪らず口から血反吐を吐く。


勿論そのままでは終わらず、飛びかかった勢いのままガッチリとホールドを決めたお陰?で、マオは傷口を地面へと何度も擦り付けることとなった。


「ッあぁ!ぃたい痛い痛い痛い!?」


「マオお兄ちゃん大丈夫!?嫌だ!マオお兄ちゃん死んじゃ嫌だよ!!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」


マオの悲鳴を耳に入れ、ファーファは包容に籠めていた力を更に籠める。


「き、貴様、ファーファ!殺す気か!?は、放せ。マジで、死ぬ…。」


マオが半分白目になりかけたところでファーファは慌てて手を離す。


「ご、ごめんね…。……つい。」


「貴様は。……つい。で人を殺していいと思ってるのか!?馬鹿かお前は!本当に死ぬとこだったわ!?大体何しに来た!?お前は夕べから何やら依頼を受けて出掛けてたんじゃないのか?全く…。いつも思うのだが、お前は隙あらば殺しに掛かってきてないか?そうだよ、よくよく考えてみたら初めてあったときも、あの時も、その時も………………塔の中でお前が一番恐ろしいわ!?」


目の前で未だ瞳を赤く張らしたファーファに畳み掛けるように言葉を投げるマオ。


その途中にやっとの呈で追い付いた銀龍がファーファの肩に停まる。


「まあそう責めるでない。ファーファもお主の事を心配して急いで戻ってきたのだ。」


「っ!?…全く。今回は銀龍さんに免じて許してやるが、気を付けろよ。」


「うん!…でも、よかった。マオお兄ちゃんが死んじゃうんじゃないかと思って…よかった。無事で。」


「この姿を見て無事ってお前…。まあいい。全く。」


泣きながらも花が咲くような笑顔を見せて笑うファーファに毒気が抜かれた様子のマオだったが、急に顔を顰めてヨロヨロとふらつきだした。


「うぅ…。」


だが、ファーファの視線と意識は既にマオにはなく、その蒼く澄んだ瞳は、血まみれで倒れ、両の手から酷く出血はしてるものの、未だ息がある男へと向けられていた。


自分の手に握られている、少し血で滑る杖。その杖の先にゆっくりと残された全てをくべるように集めていく。


その瞳は何処までも澄んでいて、見る者をいっそ凍えさせるようなものだった。


ゆっくりと男へ近づいていくファーファ。


そして、僅かに上下している胸に杖を差し込もうとして「止めろ…。」とのマオの声に手を止める。


「え…。でもこの人マオお兄ちゃんを殺そうとしたんだよ?」


「バカ、おまっ!?何するつもりだ!!」


「だって…マオお兄ちゃんをこんなにしたんだもん。」


「何考えてるんだ!?そいつはお前と一緒で人間なんだぞ?」


「そんなの知らない!…でも、マオお兄ちゃんが殺しちゃダメっていうなら…やめる。銀もマオお兄ちゃんに賛成みたいだし。」


そう言いファーファは自分の肩に留まる銀龍に眼をやると、銀龍の体は薄く銀色に輝いていた。


「恐いわ!?俺よりよっぽどお前の方が魔王らしいわ!?」


「ぶーっ…。」


頬を膨らませながら不機嫌を露にするファーファ。


そんなファーファにマオは男の治療を命じると、ファーファは心の底から嫌そうに男にセラフィ特製の傷薬を振り掛ける。


それを手伝うように銀龍は男の切断された両腕を口に加えると傷口に合わせ、男の腕は勿論、弱々しくなっていた呼吸も徐々に戻り出す。


男の傷もあらかた治り、マオの事をチラチラと心配そうに覗き見ていたファーファは、マオが意識せずにポツリと呟いた言葉に首を傾げる。


「そう言えば………こいつも人間なんだよな。」


マオが意識を手放す寸前に口から思わず溢れ出た一言。


その一言に銀龍は悲しそうに顔を歪めるのだった。



銀龍の魔法名で一文字本来付け加えなければ文章としておかしいのですが、なんか嫌だったので故意に抜いております…(汗)


そこについて突っ込みは無しの方向でお願いしますm(__)m



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