塔の魔法使いと養女で幼女
偏頭痛持ちなものでまたまた頭が痛くて更新ができませんでした(汗)
楽しみにしてくださった方には申し訳ありませんでした。
次からは更新は二日に一遍くらいにしようかなと思ってます(・・;)))
期間が短いと内容もグダグダになるし、頭痛が発生しかねないので。(T^T)
「こっちです!?」
「殺すぞ!言われなくてもこんな状況になればわかるに決まってんだろ!!」
ソーマ達三人が森を駆け抜けているなか、突如として生まれた局地的力の渦。ソーマはその力に心当たりがあるのか、苛立たしげに二人を置いて先を急ぎ出す。
「……まだ早えんだよ。もうちょっと大人しく待ってられねえのか糞餓鬼!!」
ソーマが一人でどんどん先に進んでいき、ソフィアは地面を駆けながら、セラフィは空を飛びながらその後を追う。
「相変わらず早いねー。もう豆粒みたいになっちゃった。近接職のセラっちより早いとか反則じゃない?」
愉しげにカラカラと笑いながら、ソフィアはセラフィと並走するように木々の上へと飛び移りそう一人ぼやく。
「そういうソフィア様も十分お早いと思いますよ。」
「やだ。慰めてくれるの?ありがとう。お礼に今晩―」「いえ。お断りいたします。」
「もう、恥ずかしがっちゃって…可愛いんだから。」
セラフィは心の中でひっそりとため息をつくと、六枚の羽を淡く光らせ更にスピードをあげた。
「申し訳ありませんが私も少々先を急がせていただきます。」
「はーい。気を付けてね。」
二人がそんな会話をしている頃には、ソーマは既にファーファの姿を目に捉えていた。
ファーファの周囲に張られていた結界は今まさに破られ、アングリーベアーの鋭い爪はファーファの喉元に手をかけんと腕を伸ばす。
「汚ねえ手でそれに触ってんじゃねえぞ!!」
ソーマが叫び声にも等しい声をあげると、アングリーベアーの右腕は荒縄でも引きちぎったかの様な音をたてて地面へ落ちた。
「ッ!?ギャァァァァァァァァァ!?」
「臭え息を吐きかけてんじゃねえぞ糞虫が!!」
一瞬何が起こったのか理解が追い付かなかったアングリーベアーだったが、ファーファを掴もうとした腕が地面にぼとりと音をたてて落ちたところで激しい痛みが全身を駆け巡り、まるで呪詛のような叫び声をあげる。
しかし、痛みに浸る暇もなくソーマはアングリーベアーに追従の手を休めなかった。
ファーファとアングリーベアーとの僅かな空間が一瞬歪むと、辺りを振動させるほどのファーファの叫び声より一際大きな炸裂音と共に、アングリーベアーのまだ未成熟な身体は後ろへと弾け飛ぶ。
その体は地面に着く前にバラバラの肉片になって辺りに散らばった。
「なんなのさあの見るからに凶悪な面をした男は!?しかも産まれたての幼体とは言え一撃で…。私達はあんなに苦労して捕獲したってのに。」
「この子の知り合い、なのか?」
「じゃあ助かったのか俺たち!?」
「取り敢えずこの声か音かは知らないが、これを何とかしてくれればなんでもいい。頭が冗談抜きで割れそうだ。」
僧侶の女がソーマの青白い肌に赤い瞳、更には銀髪を携えた凶悪な容姿に動揺を隠しきれず、槍使いは冷静な分析を。魔力切れで立つことも儘ならない魔法使いは助けがと喜び、剣士は現状を淡々と語った。
「おい糞餓鬼!?何してやがる!!早く魔力を止めねえか!?死ねてえのか!?」
四人は取り敢えず窮地は脱したと判断し、今だ予断を許さない拳闘志の元へ集まり治療を始める。その頃には、ソーマは魔力を発し続けるファーファの元へと辿り着いており、その両肩を首が取れんばかりに揺する。
「糞が…完全に我を失って暴走してやがる。」
ファーファの叫び声に聞こえるそれは実のところ声ではない。
厳密に言うと多量にもれ出している魔力が周囲に現存する自然界の魔力と共鳴を起こし音を発していただけなのだ。
それを男達がそれだと認識できなかったのは、一重にファーファの様な並外れた魔力の持ち主が暴走したときにもたらす共鳴の事を知らなかったからであった。
膨大な魔力を延々と垂れ流すファーファの身体はかなりの熱量を伴い始め、ソーマの両手からは徐々に肉の焼ける音が漏れ始める。
「ファーファ!!てめえいい加減にしろ!?俺の言うことが聞けねえのか!!」
「お…とう…さん。」
ソーマの声にファーファが僅かに反応を示す。その途端力の奔流が止まり、それと同時にファーファの体温が急激に下がり出す。
魔力を使ったこともない幼い彼女が、その身体からソーマの肉体を傷つけるほどの魔力を発したことでみるみる内に弱っていく。
「お父さん………えへへ。お名前……読んで…もら……ちゃった。」
「…馬鹿が。あんまり手を焼かせてんじゃねえぞ糞餓鬼。これを食べれるか?」
ソーマは飴の様な物を服の袖から取り出すと、ファーファの口へと運んでやる。が、ファーファの肉体は想像以上に衰弱しており、飴を舐める気力もないようだった。
「ごめ…なさい。ファーファ…食べれ……」
「手を焼かせんじゃねえって言ったばっかりだろうが。……糞が。」
ソーマはファーファの口から飴を取り出すと、迷うことなく自身の口に放り込み即座にそれを噛み砕く。
何度か細かく噛み砕いた後袖口から水筒を取りだし、軽く水を口に含む。ソーマは口に含んだ水を飴ごと口移しでファーファの口に無理矢理捩じ込んだ。
全部移し終えた時点で口を離し、ファーファの顎を上へと持ち上げ、嚥下を強制する。
ゆっくりとファーファの喉が何かを飲み込んだ動きをすると、身体が青く光り、ファーファの身体に体温が戻り始めた。
「うわぁ……。さすがに養女にそれをやってはいけないと思うよ。………………幼女なだけに。」
いつの間にか二人の側に来ていたセラフィとソフィア。さっきの発言はやはりと言うか、ソフィアだった。
「…ソフィア様。それはさすがに寒すぎるかと。」
「えー。そうかなあ。結構うまいこと言ったと思うんだけど。」
「…んなこたあどうだっていいんだよ。ぶっ殺す!!!!」
青白い稲妻を纏った銀竜がソーマの声に呼ばれるように姿を表し、ソフィアを焼き尽くさんと襲いかかる。
「あはは。ちょっとそれはさすがにヤバイかな?そこまでやらなくてもよくなくない?」
おどけて見せながらも、内心冷や汗を流しながら必死に避けるソフィア。
「…行け。」
ソーマはセラフィにも顎をしゃくって突撃を命じる。
「ちょ、ちょっと…目がマジなんだけど。ちょっとした冗談じゃない。可愛い私に免じて許して…なーんて…。」
ソーマの瞳は銀竜と同じく瞳孔が縦長になっており、全身から殺気を迸らせていた。
「………………逝け。」
ソーマは抱えていたファーファをゆっくりと地面に横たわらせると、タバコを一本取りだし大きく一吸いすると煙をゆっくりと吐き出し口を開いた。
「字が違う!?明らかに字が違うんだけど!?」
二人と一匹の戦いは、王を失って狂気したドレッドベアーたちを一瞬で焼き払う。
五人の冒険者達は、ボロボロの身体に二人の攻防の余波の煽りを受ける事で全員その場で意識を手放した。