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佐藤さわりの霊障事件簿 住んではいけない家

佐藤さわりは、超能力者でもなければ、霊媒師でもありません。

特別な力を持たない、どこにでもいる人間です。

だからこそ、彼女を主人公に据えるとき、私はいつも迷います。

――最期をどう迎えさせるべきか、と。

しかし、普通の人間が、普通の感覚のまま、霊障現象に立ち向かう。

その“無力さ”と“勇気”の同居こそが、物語としての魅力になるのではないか。

そう思い、このシリーズを書き続けています。

本作もまた、特別な力を持たない一人の女性が、理不尽な怪異と向き合う物語です。

どうか、最後までお付き合いください。

第一章:地元の名家

田羽村(たはむら)家――この町でその名を知らぬ者はいない。

青梅のこの敷地は、ちょっとした学校の校庭ほどもある。門をくぐれば、手入れの行き届いた庭木が並び、奥には黒塀に囲まれた大豪邸が鎮座していた。古いが、古びてはいない。金と手間を惜しまなかった家の気配が、建物の隅々にまで染みついている。

その主、田羽村杉人(たはむら すぎと)はつい先日、九十歳で亡くなった。

年齢を聞けば誰もが驚くほど、彼の頭には白髪が豊かに残っていた。禿げるという概念が、この老人には最初から存在しなかったかのようだ。

妻の杉子はずいぶん前に亡くなり、娘のたむえも杉人の死の一ヶ月前にひっそりと息を引き取った。

ただ、奇妙なことに――村の誰も、たむえの姿をほとんど見たことがない。

幼い頃に見かけたという者が数人いるだけで、その後は何十年も姿を現さなかった。

「美人らしい」「いや、醜い顔で人前に出せなかったらしい」

噂だけが独り歩きし、真実は誰にもわからないままだった。

杉人は生前、この屋敷を売却するか、借家として出すよう不動産屋に依頼していた。

田羽村家の歴史は、ここでいったん幕を閉じたのである。

*

不動産屋の社長・高橋欣三は、五十代半ばの男だ。

真ん中からきっちり分けた髪には、昔の総理大臣が愛用したという柳屋ポマードがべったりと塗られている。腹は前に突き出し、歩くたびに揺れる。肥満というより、もはや体型そのものが一つの主張になっていた。

高橋は田羽村家の依頼を受けると、さっそく「売り家・一戸建て」「貸家」の広告を出した。

豪邸であるにもかかわらず、値段は驚くほど安い。

理由を深く考える者は少ない。安さは、時に人の判断力を奪う。

*

高橋不動産の前で、腰を低くして貼り紙を覗き込む三十代の夫婦がいた。

大野満彦と、その妻・満子である。

SNSでこの屋敷の情報を見つけ、興奮気味に店へ飛び込んできたのだ。

「この物件、まだありますか」

満子はドアを開けるなり声を張った。

「こんな豪邸、きっと何かあるんだよ。事故物件とかさ」

満彦は浮かない顔で呟く。

高橋は事故物件であることを否定した。

ただし――と、一本指を立てる。

「一つだけ条件があります」

「ほら、出た」

満彦が肩をすくめる。

「屋敷の中に、娘さんが使っていた部屋があります。その部屋だけは手をつけないでいただきたい。それだけです」

部屋数は十を超え、すべて冷暖房完備。

そのうち一つを使わないだけで、破格の豪邸が手に入る。

「そんなの全然問題ないわ」

満子は即答した。

それでも満彦は渋った。

すると満子が夫の耳元に顔を寄せ、ひそひそと囁く。

「お金が足りなくなったら、あたしが売春で稼ぐわ」

満彦は言葉を失った。

だが、妻の勢いに押される形で、結局契約へと進むことになった。

*

高橋に案内され、屋敷の下見に向かった大野夫妻は、その広さと美しさに圧倒された。

中古とは思えないほど手入れが行き届き、どの部屋も清潔で、空気さえ澄んでいるように感じられた。

一目で気に入り、二人は即決した。

*

引っ越しはあっけないほど簡素だった。

満彦はソープ通いが趣味で、家に執着がないため荷物も少ない。

満子の荷物も、衣類と化粧品が少しある程度だ。

荷物を運び終えると、二人は“使用禁止”と言われた部屋の前に立った。

「ちょっとだけ……見るだけよ」

満子がそっと襖を開ける。

途端に、二人の首筋を冷たい風が撫でた。

ぞくりとする寒気。

六畳ほどの空間はがらんとしているが、真正面の壁に掛け軸が一つだけ掛かっていた。

長い髪。

赤く大きな目。

やしゃぐれた鼻。

裂けた口。

白い着物。

足はない。

幽霊画だった。

「気味が悪いわね」

満子は顔をしかめ、掛け軸を外すと丸めて部屋の隅へ放り投げた。

*

その夜。

大きな風呂に二人で浸かり、引っ越し祝いのように笑い合っていた。

「えっ……今、“あたしも入っていい?”って言わなかった?」

満彦が眉をひそめる。

「言うわけないでしょう」

満子は笑い飛ばした。

その瞬間、満彦の首筋にぽたりと冷たい雫が落ちた。

触ると、指先が赤く染まった。

「……血?」

二人は悲鳴を上げて飛び出した。

思い出す。

この風呂の真上は、たむえの部屋だった。

急いで体を拭き、寝室へ逃げ込む。

だが深夜――。

体が重い。

何度も目が覚める。

満彦は、暗闇のどこかから視線を感じて仕方がなかった。

誰かが、じっと見ている。

そんな気配が、部屋の隅にまとわりついていた。


第二章:第二の被害者

青梅の駅前に、ひときわ目立つ男がいた。

杉浦鯛蔵(すぎうら たいぞう)――衆議院議員。

本人いわく「日本一お馬鹿な政治家」。

その言葉を聞いた国民のほとんどは、「いや、笑えない」と眉をひそめる。

かつては妻も子もいた。

しかし、真夏の炎天下、ショッピングモールの駐車場に生まれたばかりの子を置き去りにし、熱中症で死なせた。

その後もパワハラとセクハラを繰り返し、妻を精神的に追い詰め、ついには縊死へと追い込んだ。

それでも鯛蔵は政治家を続けている。

比例代表で当選したため選挙戦も不要。

議員報酬は丸ごと貯金。

出版した本は『英語は肛門で話せ!』『肛門呼吸のすすめ』『本当の馬鹿にしかできない投資術』と、タイトルからして読者を挑発している。

そんな男が、例の田羽村家の豪邸に目をつけた。

「俺も代議士だからな。このくらいの家に住まないとな」

高橋不動産を訪れた鯛蔵は、嫌がる高橋欣三を押し切り、購入を決めた。

そしてその日のうちに、泊まってみることにした。

*

夜。

浴室の湯気が立ちこめる中、鯛蔵は窓の外にふと視線を向けた。

白いものが、ガラス越しにこちらを覗いている。

最初は湯気のせいだと思った。

だが、よく見ると――。

頭は黒。

目と口の位置だけが真っ赤。

首から下は真っ白。

人の形をしているようで、していない。

「気の迷いだな。予算審議で疲れてるからだ」

鯛蔵は湯船にどっぷり浸かり、今日の委員会での出来事を思い返した。

厚生労働委員会で、大臣に向かって「雑司ヶ谷墓地に行ったことがあるか?」と質問し、委員長に「関係ない質問はしないでください」と注意されたばかりだ。

そのとき――。

「あたしも……いいですか?」

女の声がした。

「いいよ」

鯛蔵は即答した。

自分に都合よく解釈するのが、この男の特技だった。

――代議士の自分に、不動産屋が女性を献上したのだ。

そう思い込み、にんまり笑う。

「僕ちゃん人気者だものね。早く入りなよ」

もじもじしているのだろうと、浴室のドアを開けた。

誰もいない。

その瞬間、首筋にぽたりと冷たいものが落ちた。

「なんだ? 冷たい……」

指先を見ると、真っ赤な血がついていた。

天井を見上げる。

赤い染みが広がり、そこから血が滴り落ちている。

そして――。

窓の外にいた白いものが、ガラスをすり抜けて浴室に入ってきた。

鯛蔵は息を呑んだ。

それは、昼間たむえの部屋で何気なく拾い上げた掛け軸の“絵”そのものだった。

長い髪。

赤い目。

裂けた口。

白い着物。

足はない。

掛け軸の女が、こちらへ滑るように近づいてくる。

「ひっ……!」

鯛蔵は裸のまま服を掴み、浴室から転がるように逃げ出した。

背後で、女の声が響いた。

「ふふはははは……」

屋敷全体が笑っているような、底冷えする声だった。


第三章:佐藤さわり登場

翌朝。

高橋不動産のドアが乱暴に開き、杉町鯛蔵が怒鳴り込んできた。

「よくも幽霊屋敷を斡旋したな! 裁判だ、裁判!」

高橋欣三は、額の汗を拭いながら縮こまった。

鯛蔵は多額の賠償金を要求し、机を叩き、ポマードの匂いが漂う店内に怒声が響く。

しかし、警察に相談しても取り合ってくれない。

「失踪ですか? 殺されたら捜査しますよ」

そんなつれない返事ばかりだ。

あの大きな屋敷は維持費だけでも莫大だ。

やっとの思いで“日本一お馬鹿な政治家”が買ってくれたと思ったら、翌日には逃げ出してくる始末。

他に売るにも、もう噂が広まりすぎている。

高橋は途方に暮れ、SNSを眺めていた。

そこで目に入ったのが――霊障事件をいくつも解決しているという、佐藤さわりの名前だった。

*

佐藤さわり。

政治を専門とするジャーナリストで、黒髪のチューリップ型ショートがよく似合う。

身長は百六十センチ。紺のスーツに身を包み、歩く姿は凛としている。

だが、彼女を見た者がまず印象に残すのは、意外にも“美尻”だった。

スーツ越しにわかる、引き締まったライン。

本人は気にしていないが、取材先の議員たちが目をそらすのに苦労しているという噂もある。

鞄には五七の桐のキーホルダー。

豊臣家ゆかりの品だと、さわりはさらりと言う。

本当は小説家志望だが、今は政治家を追い回して記事を書く日々。

たまたま成功した霊障事件をきっかけに、“霊障探偵”の名刺も持ち歩くようになった。

そんな彼女に、高橋は藁にもすがる思いで連絡を取った。

「……幽霊屋敷、ですか」

依頼を聞いたさわりは、あまり乗り気ではなかった。

一つは、選挙期間中で政治取材が忙しい。

もう一つは、霊障といっても幅が広い。単なる失踪かもしれない。

「それに……霊障現象で、杉浦鯛蔵さんも逃げ出すくらいなんです」

「えっ、日本一お馬鹿な政治家、杉浦鯛蔵?」

「そうなんです」

さわりは目を細めた。

――これは、いい記事になるかもしれない。

*

青梅の住宅街を歩き、例の屋敷へ向かう途中。

さわりは、塀の前にあるごみ収集所に目を留めた。

今日は可燃ごみの日。

山のように積まれた袋の中に、丸められた紙が一本だけ突き出ている。

「……ポスター?」

何気なく拾い上げ、広げた瞬間、さわりは息を呑んだ。

醜い女の幽霊画。

長い髪、赤い目、裂けた口。

掛け軸のような作りで、異様な迫力がある。

「気味悪いけど……捨てるのは惜しいわね」

そう呟き、鞄にしまった。

屋敷の前に立つと、古い門構えが静かに佇んでいる。

玄関のノブに触れた瞬間、首筋に冷たい風が入り込んだ。

「……嫌ね」

春とはいえ、まだ薄寒い。

だが、今の冷たさは季節のせいではない気がした。

中に入ると、台所も浴室も驚くほど綺麗だった。

人が住んでいない家特有の埃っぽさがない。

そして――いわくつきの“たむえの部屋”。

調査しないわけにはいかない。

襖を開けると、拍子抜けするほど殺風景だった。

家具は一つもなく、壁にフックのような金具が残っているだけ。

ただ、壁にはうっすらとしたシミがあった。

「……きっと、何かでこのシミを隠していたのね」

そう呟いたが、さわりはまだ気づいていなかった。

自分の鞄に入れた幽霊画こそ、この部屋に掛けられていたものだということに。

それよりも、別の違和感があった。

表から見た屋敷の大きさと、部屋の広さが一致しない。

言葉にできないが、たむえの部屋は“思ったより小さい”。

しかし、それ以上の手がかりは見つからなかった。

さわりは高橋に連絡し、こう告げた。

「調査のために、しばらくこの家に泊まります。あなたも一緒に」

こうして、霊障探偵・佐藤さわりの青梅調査が始まった。


第四章:鉈を持ったたむえ

その夜、佐藤さわりと高橋欣三は、屋敷の別々の部屋で眠ることにした。

静まり返った青梅の夜は、耳鳴りがするほど静かだった。

なかなか寝つけなかったが、いつしか意識が沈んでいった。

――夢を見ていた。

「お父さん……どうしてあたしを、この部屋に閉じ込めるの?」

女性の声。

その向こうに、年老いた男の影が揺れている。

「それは……」

言いかけた瞬間、女の声が急に太く、濁ったものに変わった。

「ふはははは……そんなこと、わかっているだろう。あたしの、この顔のせいだよ」

女性は能面のような仮面を外した。

その下から現れたのは、髪が逆立ち、目と口が真っ赤に染まった、醜い顔。

「そうじゃないんだ……たむえ……」

「なにが“そうじゃない”だよ。あんたは自分のために、醜いあたしを外に出さなかった。学校にも行かせず、ここで飼い殺しにした。あんたは人間じゃない」

少女の声は、恨みと怨念が混ざり合っていた。

「あたしの顔は醜い。でもね、お父さん……あんたの心は、あたし以上に醜いじゃないか。呪ってやる。死んだからって許さないよ」

「やめてくれ……お父さんは、もう若くないんだ……心臓が……」

「苦しいかい? もっと苦しむといいさ」

男は胸を押さえ、床に崩れ落ちた。

――後に判明したことだが、田羽村杉人は心臓に埋め込まれたペースメーカーの電池漏れによる感電死だった。

その瞬間、佐藤さわりははっと目を覚ました。

「……そういうことだったのね」

*

廊下の向こうから、金属が床を引きずるような音が聞こえた。

ぎ……ぎ……ぎ……

佐藤が襖を少し開けると、そこには――鉈を持ったたむえの霊がいた。

白い着物。

逆立つ髪。

真っ赤な目と口。

そして、ゆっくりと高橋の部屋の前に立つ。

鉈がドアを叩いた。

ガンッ!

高橋の悲鳴が上がる。

「ひっ……!」

佐藤は部屋を飛び出した。

「やめて、たむえさん。あなたのお父さんはもう死んだわ。他の人は関係ないでしょう」

たむえはゆっくりと振り返り、佐藤を睨みつけた。

「おまえ……なんかに……何がわかる……し……ね……ば……いいのよ……死ねばいいのよ!」

叫び声は屋敷全体を震わせた。

佐藤はたむえに手を伸ばしたが、指先は霊の身体をすり抜けた。

高橋は恐怖で腰を抜かし、佐藤の腕にしがみついて離れない。

「いくわよ、高橋さん。たむえの体はすり抜けるのよ!」

二人はたむえの霊をすり抜け、佐藤の部屋へ駆け込んだ。

鞄を掴み、たむえの部屋へ飛び込む。

鍵を閉めたが――。

「無駄よ。そんなもの……」

ドンッ!

鉈がドアを叩き、木が裂ける音がした。

高橋はうずくまり、震えながら呟く。

「これは夢だ……怖いと思うから怖いんだ……なんともない……なんとも……」

佐藤は鞄を開け、例の掛け軸を取り出した。

壁のフックに掛けようとした瞬間、反動で壁にぶつかった。

――ゴン。

壁が回転した。

佐藤は隠し部屋へ転がり込んだ。

そこには、古い棺が一つ。

その上に、きれいな顔の仮面が置かれている。

佐藤は額の汗を拭った。

「……隠し部屋があったのね。道理で部屋が狭かったわけだ」

たむえの霊は、もう消えていた。

佐藤は棺の蓋に手をかけ、ゆっくりと開けた。

中には――ホルマリン漬けの、醜い顔の女性。

たむえだった。

皮膚は膨れ、目は濁り、口は裂けたまま固まっている。

液体の中で、髪がゆらりと揺れた。

「……両親からも愛されず、ここで齢を重ねて、死んだのね」

その言葉を口にした瞬間、部屋の空気が凍りついた。

棺の中のたむえの口が、わずかに動いたように見えた。

たむえの声が、耳元で囁かれた気がした。


エピローグ

翌朝、佐藤さわりは高橋欣三とともに、真言宗の憲政寺(けんせいじ)へ向かった。

だが、和尚の判断は早かった。

「掛け軸は、この屋敷で処理した方がよい。怨念は場所に根を張るものです」

多夢庵和尚はそう言うと、袈裟を整え、屋敷へ同行した。

年老いてはいるが、その歩みには迷いがない。霊力が衰えたわけではないことが、さわりにもすぐにわかった。

たむえの部屋に入ると、和尚は掛け軸を前に静かに目を閉じた。

読経が始まると、空気が震え、掛け軸の表面が波打つ。

赤い目が、最後にひとつ瞬いた。

その瞬間、屋敷全体がふっと軽くなった。

長く張りつめていた怨念が、ようやく解けたのだ。

「これでよいでしょう。掛け軸はこちらで預かります」

和尚は掛け軸を丁寧に包み、憲章寺へ持ち帰った。

*

警察は隠し部屋から発見された遺体を荼毘に付し、遺骨は田羽村家の墓に葬られた。

その費用はすべて高橋不動産が負担した。

彼の顔には疲労が刻まれていたが、どこか救われたような表情もあった。

屋敷は後日、富豪が買い取り、解体された。

佐藤も、多夢庵和尚も、高橋も立ち会った。

重機が壁を崩すたび、冷たい風が吹き抜けたが、もう怨念の気配はなかった。

――たむえの呪いは、完全に消え去った。

ただし、失踪した大野満彦・満子夫妻が戻ることは、ついになかった。

*

事件が終わった日の夕方。

佐藤さわりは近所のスターバックスにいた。

窓際の席で、キャラメルマキアートを手にする。

スーツの背筋は伸び、黒髪のショートが夕陽に照らされて艶めいている。

そして、椅子に腰かけたときにわずかに形を見せる、美しいヒップラインが、彼女の凛とした雰囲気に柔らかさを添えていた。

「今日は自分へのご褒美。キャラメルマキアート……甘くて美味しいわ」

さわりは静かに微笑んだ。

青梅の空は、春の色を帯びていた。

(完)

青梅を舞台にした今回の物語は、佐藤さわりシリーズの中でも、特に“静かな恐怖”を意識して書きました。

たむえという少女の怨念は、決して派手ではありませんが、閉ざされた空間に積もり続けた重さがあります。

そして、失踪した大野夫婦が戻らなかったことは、物語の余韻として残しました。

怪異がすべて解決されるわけではない。

人が消えたら、戻らないこともある。

その現実感こそ、さわりシリーズの根底にあるテーマです。

佐藤さわりは、これからも超人にはなりません。

ただの人間のまま、怪異と政治と日常の狭間を歩き続けます。

その不器用さと強さを、これからも描いていければと思います。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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