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瀬戸陽子・高校生編

#06:秋晴れの残り香

作者: 瀬戸 陽子

高校生編の短編連作です。


2014年 秋・文化祭の数日後


音楽室の窓が少しだけ開いていて、外の空気が薄く流れ込んでいた。

紅く色付き始めた木々が、優しくざわめく。


「文化祭の本番のやつ、みんなで見よう」

誰かがスマホで録画していたらしい。


肩を寄せ合いながら、再生ボタンを押す。

小さなノイズのあと、あの日の音が流れ始めた。

……遠目で見ても、自分が映っているのは少し恥ずかしい。


ただ、あの日の空気に触れて、胸の奥が少しだけ温かくなる。


「フルートの細かいアレンジ、めっちゃ効いてるよね」

誰かが笑いながら言った。


……少し風景が傾いた。

よく分からない。

いつも“みんなに合わせて”って言われるのに。


でも、皆が楽しそうに話している気配だけは伝わってくる。


再生が終わると、部屋の空気がふっと軽くなった。


「またこういうのやりたいね」

「次は冬の発表会かぁ」


陽子はフルートケースの留め具を指で触れた。

金属の冷たさが、少しだけ現実に引き戻す。


帰り際、音楽室にひとり残って、

試しに音をひとつだけ置いてみた。


……あれ。


文化祭の日のように、指が勝手に揺れない。

音の行き先が、どこか決められているような気がした。


窓の外で風が吹き、紙の端がまた揺れた。

陽子はその揺れをしばらく見つめてから、フルートをそっとしまった。


胸の奥に、言葉にならない小さな違和感が残った。

でも、それが何なのかは分からなかった。


ただ、音楽室の空気だけが、少しだけ変わったように感じた。

次話:#07:小春の日和

2026/1/23 20:00に更新します

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