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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第四章 
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第76話「怨念の種」Part1


「そういえば、社長の記憶、見たんだよね? 犯人の顔とか分からなかったの?」 シュティーがおもむろに尋ねる。


「追体験は“記憶を見る”だけだ。相手が忘れてたり、都合よく改竄して覚えてたら、正確には拾えない」


「つまり分からなかったと」


「社長も“無かったこと”にしたいんだろうな」


「なるほどね。じゃあ相記化は――社長室と工場(こうば)。あとは……社員寮にも植えて」


この工場は寮を併設し、一定数の従業員はそこから通っている。


シュティーは考える。社長が言ったのは「機械の故障による事故」。だがアラタの追体験で視た光景は、恐らく夜。夜間に点検? いずれにせよ、被害者は“おびき出された”か“追い詰められた”形だ。そこで頭部を貫通させるほどの一撃――能力による殺害。社長が何故その場にいたのかは不明だが、筋は通る。 そして夜のインダストラは警備が厳しい。車両の規制もあり、遠方からの侵入はほぼ不可能。ならば“近くに住む者”――社員寮の誰か、という結論になる。


「とりあえず、バレない場所に植えてくる。三位一体――」


アラタは擬態をセットし、音もなく工場へ消えた。


「ふぅ……さてと。それでさっきからボクたちのこと、見てるけど――誰かな?」 シュティーは視線だけで呼びかける。建屋の陰から、秘書の女がすっと現れた。


「話がある。それもボクだけに。そうでしょ?」


「貴女なら、信用できると思いまして……」


「まあ、アラタは“アレ”だからね。それで、話は?」


「“犯人”についてです」


「社長は知らない、って言い切れる? ボクを嵌める罠かもしれないし」


「今回は私の独断です。仮に露見しても、矛先がシュティー様に向かないよう動きます」


「オッケー。じゃあ移動しよ。ここは目立つ」


秘書の案内で、郊外の喫茶店へ。個室で念入りに周囲を確認してから、口火を切らせる。


「犯人は――ルカ・フェリーニ。従業員です。能力は“静電放出”。微弱な電気を発生させるだけ。他の電気系に比べて、せいぜい“強い静電気”の域です」


秘書は唇を噛む。


「社長も彼が犯人なのは知っています。ただ――どうやって殺したのかが不明でした。工場の器具を使った形跡はなく、あまりに精密な電撃で致命傷が……あの能力でそこまでの殺傷は、ありえないはずなのに」


「――ブースター、ってことでしょ?」


「……はい。恐らく。確証ではありませんが、インダストラでも出回っているという話はあります」


「日頃のストレスで手を出し、そして殺害。――動機は?」


「…………」


秘書は口を噤む。


「言えないね。いいよ。情報は十分」


シュティーは肩を竦める。


「それで、ここからボクに何を? 犯人が分かったなら今すぐ確保もできる。でもCIDすら隠蔽に回るなら、現行犯以外は難しい。仮に捕まえても、“工場の体制”は変わらない」


「……そう、ですね。でも――」


「連鎖を止めたい。でしょ?」


射抜くような眼差しに、秘書は小さく頷いた。背信に等しい告白を押し出す声は、必死で、嘘がない。


「よーし。ちょっと頑張ってみるよ」


シュティーは柔らかく微笑んだ。



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