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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第三章 
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第65話「棘の後…」

ノーラの家は壁も梁もあちこちが抉れ、居住の体をなさない。彼女と幼い子は、CID管轄の簡易居住スペースに一時避難していた。


「今回は本当にありがとうね」


ベンチに腰掛けたノーラの隣に、アラタが立つ。彼は肩をすくめただけだ。


「別に大したことはしてない。運が良かった」


ノーラはくすりと笑うと、息を整えて切り出した。


「それでねアラタ…あの時話せなかったことなんだけど…」


一拍置いて、正面から見上げる。


「あのさ、私たち、やり直せないかなって…子供も懐いてるし…あの時のことがあるから、断ってもらってもいいけど…」


「そうだな。正直、それも悪くない話だな」


「じゃ、じゃあ!」


「だがすまん。無理だ」


短くも揺るがない返答。ノーラの睫毛が震える。


「やっぱりあの時の事が原因だよね…分かってる」


「結果的に良かったって前も言ったろ? 無理な理由は一つ。俺にはもう“家族”がいるからな」


それはクロード家。拾い、認め、居場所をくれた人々。新たなボスに仕え、同じ卓を囲む者たち――単なる義理ではなく、自分が拠り所と決めた家族だ。


「そう…わかったわ…」


悲しみを押し隠すように、ノーラは小さく笑おうとする。


「そう悲しい顔すんなって。ひとまず悩みは消えたんだ。あとはお前がその子と一緒に幸せになれ」


アラタは濁りのない笑顔を向けた。その笑みが、ノーラの肩の力をほんの少し抜いた。


――場面切り替え:クロード家


「ただいま〜!!!!」


扉が弾ける勢いで開き、アラタの声が広間に震えた。数週間ぶりの帰還だ。


「はぁ…おかえり、アラタ。依頼はしっかり完了したみたいだね?」


ソファの背にもたれるシュティーは、どこか疲労の色を帯びている。


「せっかく久しぶりに帰ってきたのに、そう疲れた様子見せられたら困るな〜」


「アラタがいない間、別件で動いてたからね。それで解決したあと、ちょうどアラタが帰ってきたってとこ」


「ふ〜ん? そっか、まぁいいや。それよりボス、これを渡しておく」


アラタは懐から銀色の筒を取り出し、掌で転がしてみせた。シュティーの目が細くなる。


「これ、どうしたの?」


「今回の相手が使ってた。首に打ち込んだ途端、能力の性能が格段に上がった。CIDが気付かなかったから回収しといた」


「手癖悪いね、ほんと」


茶化しながらも、シュティーは受け取って微笑む。


「ありがとう、アラタ。……また一歩前進したよ」


銀の筒――ブースター。もしセルカ島にまで流入しているのだとしたら、ばら撒いている連中が必ずいる。シュティーは、別の闇の輪郭にそっと触れた。


「それで? ボスの方の依頼はどうだったんだ?」


話題を切り替えるように、アラタが尋ねる。


「そうだね……とても変な事件だったよ」


シュティーは天井を見上げ、短い溜息を落とす。目蓋を閉じ、記憶を辿るように。


――そして、静かにその依頼を振り返り始めた。



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