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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第三章 
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第54話「プリンチペ・ディ・ソルツァの怪」Part1

拠点の扉が開き、シュティーが軽い調子で入ってくる。


「ただいま〜」


その声を聞くや否や、アラタが勢いよく駆け寄ってきた。


「ボス! 大丈夫か!」


「んー? 大丈夫だけど?」


「そっか……ボスが監獄島に行ったって聞いたから……クソ、あの氷結野郎、今度会ったら一発殴ってやる!」


「やめときなよ。というかアラタじゃエルメルどころか、ミルムにも勝てないでしょ?」


「前よりは強くなってるぞ、俺!」


キッチンから顔を出したミオナが首を傾げる。


「そんなに強いんですか? エルメルさんとミルムさんって」


ディノが軽く笑いながら口を挟んだ。


「そうだな。ミルムは元CID部隊の隊長だ。最年少で隊長になったほどで、戦闘センスならお嬢以上じゃないか?」


その一言に、ミオナは驚きを隠せなかった。


「シュティーさん以上……? ってことは、エルメルさんも……?」


「エルメルは戦闘センスってより、能力そのものが反則だな。瞬間的な氷結。アイツが監獄島の所長になってから脱獄者はゼロだ。それに——アイツの能力は“覚醒能力”だからな」


「覚醒能力……?」


ミオナが小首を傾げる。


「知らないか。まあ世間じゃ都市伝説みたいな扱いだからな。けど確かに存在する。能力のスペックすべてが、普通の能力者を遥かに凌駕する。アラタなんて一瞬で凍らされて終わりだな」


「まぁそういうわけだから、アラタは大人しくしててね」


「……わかったよ」


シュティーはそこで話題を変えるように、ミオナへと視線を向けた。


「それで話は変わるんだけどね、ミオナちゃん」


懐から一通の手紙を取り出し、ひらりと見せる。


「今からホテルに行こうか」



場面は切り替わる。


セルカ島からおよそ4時間。ソルズカ共和国本土、北部内陸に位置する大都市“セリオラ”。

経済規模は国内第2位を誇り、金融・商業・ファッション・観光の中心地として知られる街だ。


歴史的建造物が並ぶ旧市街と、近代的な高層ビル群が融合する都市景観。その中心に堂々とそびえ立つ、高級ホテル——プリンチペ・ディ・ソルツァ。


重厚な扉の前で、ミオナは不安げに口を開く。

「……本当に大丈夫でしょうか?」


「大丈夫だって。支配人とは知り合いだからさ」


扉をくぐった瞬間、煌びやかな内装に思わず息を呑む。場違いではないかと錯覚するほどの空間——。

そのとき、足元の影からぬるりと仮面の男が現れた。


「ようこそおいでくださいました! シュティー様! そして、そちらがミオナ様でございますね? 私、このホテルの支配人を務める者でございます。以後、お見知りおきを……」


妙に高いテンションの裏に、不気味な雰囲気を纏った男だった。


「久しぶりだね、支配人。それで、手紙にあった依頼ってのは?」


「話が早い! まずは、こちらへ」


応接室に案内され、支配人が事情を語り始める。


「依頼というのはですねぇ、当ホテルで起きている異常現象にございます。10階建ての当館、その4階にて——1週間ほど前のこと。宿泊されたお客様が、いつまで経っても出てこなくなったのです。そして様子を見に行ったスタッフまでもが、戻らない。私が直接赴くと、彼らは口を揃えて“出られない”と言うのです」


支配人はそこで一呼吸置き、続けた。


「私は能力でお客様とスタッフを救出し、一時的に4階を使用禁止にいたしました。しかし、このままではホテルの格に関わります。そこで——シュティー様に依頼を出した次第です」


「なるほどね……話を聞く限り、能力でなら脱出は可能ってことかな?」


「左様でございます。しかし裏を返せば、能力なしでは脱出不可能ということでもあります」


「……わかった。とりあえず4階に行ってみるよ。電話は使えるんだよね?」


「はい、電波は遮断されておりませんので、いつでもご連絡ください。私がすぐにワープで繋ぎます」


「助かる。じゃあ、ミオナちゃん初任務、がんばってこ」


「はい!」


こうして、ホテル「プリンチペ・ディ・ソルツァ」における異常の調査が幕を開けた——。


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