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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第三章 
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第53話「凍える終着点」


「ただいま〜」


ある日のこと、アラタが軽快な声と共にクロード家の拠点へと帰ってきた。今日も今日とて、ミオナへの指導をするためだ。


「あ、おかえりなさいアラタさん」


キッチンから、ミオナがひょこっと顔を出す。どうやらバルタに料理を教わっている最中らしい。


「ミオナ育成計画に料理の勉強もあったとはな。いつもバルタの飯だったから新鮮だな」


「いや、でも私全然下手ですよ? バルタさんに教わってるからそれなりに出来ますけど…」


「女の子の手作りってだけで価値があるんだよな〜」


アラタはニヤリと笑い、周囲を見やりながらソファに腰を下ろす。刀を手入れしているディノに問いかけた。


「そういえばボスは?」


「あぁ……お嬢なら今頃“監獄島”にいるだろうな」


ディノの何気ない一言に、アラタの表情が驚きに染まった。



海上。


シュティーは、エルメルからの呼び出しを受け、CIDの輸送船に揺られていた。


「監獄島」──ソルズカ共和国本土から約400km離れた孤島に築かれた、能力犯罪者専用の収監施設。

島全域が所長エルメル・ヴェロスの能力によって凍結されており、世間では畏怖と諦観を込めて“能力者の終着点”と呼ばれている。

その凍える終着点へ、シュティーは向かっていた。


数時間後、監獄島に到着。

甲板から軽やかに飛び降りた瞬間、肌を刺すような冷気が全身を包み込む。


「……寒っ」


対策を怠れば、ほんの数分で体温が奪われそうな寒さだった。


重厚な扉の前へ歩み寄ると、中から一人の女が姿を現す。


「あ、シューちゃん〜! やほやほ〜! おひさ〜」


「久しぶりだね、ミルム。今日も元気そうだね」


監獄島看守長・ミルム。看守服こそ着ているが、漂わせているのは威厳ではなく、陽気なギャルの空気。


「エルたんまだ仕事してるから、ちょい待ち〜」


案内された応接室は、島全域の凍結にもかかわらず、繊細な操作によって快適な温度が保たれていた。

ミルムが差し出したコーヒーを一口飲むシュティー。


「あっっっっま!! 何これ!」


「あ、ごめ〜ん、それエルたんのだったわ。新しいの入れてくるね〜」


軽やかにコーヒーを回収して出ていくミルム。


「……エルメル、相変わらず甘党だな」


そんな独り言を呟いたところで、ガチャリと扉が開いた。


鋭い青の瞳、白い肌、銀の短髪。軍服姿で現れた男は、監獄島所長エルメル・ヴェロスだった。


「やっほ〜エルた〜ん、激甘コーヒー飲む?」


からかうように声をかけるシュティー。


「その呼び方はやめろ。それにコーヒーはミルムが勝手にやっている」


「へぇ? でも毎回飲み干すんでしょ?」


「……そんなことはいい」


エルメルは話を遮り、対面に腰を下ろす。


「派手にやったようだな?」


その一言で、彼が指しているのがバスクファミリーとの戦いだと理解する。


「CIDが結構協力してくれたからね」


「ふん。レガルド・バスクおよびフェルナの殺害は隠蔽されているようだしな」


冷気がわずかに漂う。


「そこまでされると、CID内部で揉めそうだな〜って思ってるけど」


軽く返すシュティー。しかし視線は鋭くエルメルを捉えている。


「で? 今日はそのために呼んだわけじゃないでしょ?」


懐から封筒を取り出し、中の2枚の写真を机に置く。

1枚はぼやけた人物像。もう1枚は銀色の筒。


「最近、能力者の行方不明が増えている。調査の結果、この人物が関与している可能性が高い。正体は不明だがな」


シュティーは無言で写真を手に取り、視線を細める。


「そしてこれが“能力活性化剤”──通称ブースターだ。一定時間、能力を強化する薬物で、CIDが回収したものを分析したが、中身は合成薬物の類だった。何故これで能力が向上するのかは不明だが、使用者による犯罪が急増している」


「……つまり、能力者失踪事件への警戒と、もしブースターがセルカ島で流通したら犯人を突き止めろってことね?」


「そういうことだ。CIDも難航している。裏社会が絡むなら、クロード家のような筋に頼むしかない」


「でもなんでエルメルが?」


「……さぁな。直接より、私経由のほうが都合がいいのだろう、ここなら誰にも聞かれないしな」


「ふーん……。じゃあ何か分かったら連絡するわ」


立ち上がり、出口へ向かうシュティー。その背を、エルメルが呼び止めた。


「待て、シュティー・クロード。ひとつ言い忘れていた」


「んー? 何?」


「これは……貴様自身に関わる話だ…貴様は…」


その言葉を聞いた瞬間、シュティーは微笑み、「ありがとう」とだけ告げて部屋を後にした。



3章始まりまーす

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