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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第二章 
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第51話「束の間の平穏、新たな門出」

カジノの扉を押し開け、シュティーはミオナとリリーを伴って外へ出た。

夜気の中、通りにはCIDの職員たちが忙しなく動き回っている。あちこちで無線の声が飛び交い、重々しい足音が石畳を打つ。その騒然とした光景を横目に、三人が足を踏み出すや否や、影がひとつ勢いよく駆け寄ってきた。


「お嬢! 無事……ではないようだな」


 低く響く声に、シュティーは思わず苦笑する。

 リリーの治療で致命傷は塞がっているが、服の下にはまだ生々しい傷が残っていた。本人はそれをさほど気にしていない。


「ギリギリ……というか、ほぼ負けてたね。運が良かっただけだよ」


 ディノは、安堵の息を吐くように肩を下ろした。


「とりあえず、任務は完了ってことだな」


 そう言いながら、今度はミオナに目をやる。


「アラタは能力のペナルティで休んでる。バルタはCIDと一緒に事後処理してやがる……あの体力バカが」


「そっか……。一応、ミオナちゃんはCIDに引き渡した方がいいね」


「は~い、私も一緒に行くよ~」


 リリーが軽い調子で手を挙げる。その様子を訝しげに、ディノは目を細めた。


「おい、この女は何者だ?」


「私? 私はリリー。バスクファミリーの医療班ってとこかな~。ま、レガルド君倒されたから、もうバスクファミリーじゃないけど……」


「元レガルドの手下ってわけか……」


 ディノの声音には僅かな警戒が滲む。それを察したシュティーが口を尖らせた。


「こら、ディノ。リリーちゃんが居なかったら、ボク、死んでるからね!」


「そうか……すまねぇな。そしてありがとう。うちのボスを助けてくれて」


 短く頭を下げるディノ。


「ううん、全然!」


 リリーはぶんぶんと両手を振り、大丈夫を全身で表現した。


 わずかな和やかさが空気に広がる。

 その後、ミオナとリリーはCIDへ引き渡された。一応関係者として事情聴取を受け、場合によっては軽い拘置や監視がつく可能性もあったが――シュティーは、問題はないだろうと思っていた。


数日後。

バスクファミリーとの一件は、CIDがうまく処理したようだった。報道では「カミラ・クローチェ地区での事件に対する制圧作戦」として発表され、クロード家の存在は一切伏せられている。死亡者はNo.2のフェルナ、そしてボスのレガルド。どちらも、シュティーの手によるものだとは記されていない。


「正直、ここまで協力されるとCID内部で問題になりそうだけどな~」


 新聞を広げたまま、シュティーはソファに寝転がる。事件後は休暇を取り、だらけた生活を送っていたが――その裏では、レガルドとの戦いを反芻し、己を鍛え直す必要を感じてもいた。


「そういえば……レガルドのやつ、死んじゃったから聞けなかったけど、“ある筋”って誰なんだろ」


 それは唯一の心残りだった。もし本当に存在するのなら、いつか自分に直接関わってくるだろう。

 父の死に関係しているのなら、なおさらだ。敵意を向けられるなら、迎え撃つしかない。


「ま、今はのんびり、この平和を満喫するか~」


 軽口を叩きつつも、心の奥底では確かな変化が芽吹いていた。

 ――ただ罪を清算するためだけの人生が、別の色を帯び始めた瞬間だった。


惰性のままダラダラしていると、コンコンと軽くドアを叩く音。

「どうぞ〜」と返しながら、どうせヴァリーナだろうと考えていたシュティーは、入ってきた人物を見て目を丸くした。

そこに立っていたのは、ミオナだった。


「えっと…久しぶりですね、シュティーさん」


気まずそうに微笑むミオナを迎え入れる。


「久しぶりだね…どうしたの、こんな所まで?」


「えっと、シュティーさん達がCIDの人に話してくれたおかげで、基本的にお咎めなしってことになりまして…」


ミオナはつらつらと経緯を語る。


「おかげで家族とも再会できましたし、そのお礼をと…」


そう言って菓子折りを差し出す。


「別に良いのに」


受け取りながらも、シュティーは肩をすくめる。


「そうですね…依頼料って思っていただければ…」


依頼というのは建前だったが、「まぁいっか」と心の中で呟くシュティー。


ふと見ると、ミオナが何やらモジモジしていた。


「…どうかした?」


「え!いや!えーと、そのー…」


歯切れの悪い様子に、シュティーは優しく促す。


「他に何かあったの?ボクで良いなら解決するけど」


ミオナは首を横に振り、一呼吸置いて決意を込めた表情で告げた。


「あの、シュティーさん!私をクロード家に入れてもらえませんか!」


シュティーはその言葉に、再び目を丸くした。


 

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