表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロード家の云々  作者: カキちゃん
第二章 
52/91

第50話 「消えそうな光」

レガルドとの戦いは、ついに幕を閉じた。シュティーは振り向き、ミオナのほうへ歩み出す。だが、傷ついた身体はそれすら許してくれない。重度の火傷、打撲――そんな状態で己を奮い立たせ戦っていたのだ。無理もない。

足取りは重く、視界が揺れる。ゆっくり、しかし着実に、命は遠のいていく。そして意識が闇に沈む。最後に見たのは、泣きながら駆け寄ってくるミオナの姿だった。


夢の中


 暗い道を歩いている。果てが見えない。

 何のために? 理由は分からない。だが歩かなければならない。誰かにそう言われているように、ひとり暗闇を進む。


 何もない。それは、まるで自分の人生のようだった。

 母を殺し、父を失い、罪を背負ってきた。

 ただ、その罪を清算するためだけの人生、誰のためでもない、意味のない清算。最初から、何かの間違いで生まれたただの不幸、最悪。そう言い聞かせながら歩き続けた道は、決して優しいものではなかった。


 無数の試練、無数の傷。だが、その痛みこそが自分の人生を彩っていたのかもしれない。

 この先も罪を背負い、傷を負い続けるだろう。それでも、ボクが壊してきたすべてに比べたら大したことはない。


 暗い暗い夢の中、さらに深い闇へと向かおうとしたそのときだった。

 前方に、今にも消えそうな小さな光が見えた。光と呼ぶには頼りなく、吹けば消えるような輝き。

 手放すこともできる。だが、ボクは走り出していた。消えそうなその光を、掴むために。



現実


 まぶたがゆっくりと開く。

 痛みはまだ残っているが、意識ははっきりしていた。周囲を見回したシュティーは、すぐに異変に気づく。自分の身体が炎に包まれている。

 だが、それは焼き尽くす炎ではなかった。温かく、優しい炎――包み込むような熱だ。


傍らで、さらりと金髪を揺らす女と目が合う。


「お、起きた〜。ミオナちゃーん、シュティーちゃん起きたよ〜」


のんびりとした声。彼女は柔らかな笑みを浮かべた。


トトト、と軽快な足音が近づき、ミオナが駆け寄ってくる。

「シュティーさん! 良かった……生きてた……!」


涙をぼろぼろこぼすミオナ。動けないシュティーは、その涙を拭ってやることもできない。


「……今、どういう状況?」


シュティーの問いに、ミオナは涙を拭いながら答える。

「はい、あの後、瀕死だったシュティーさんを助けるために、リリーさんにお願いして治療してもらってたんです!」


「君が……リリー?」


「そうだよ〜。シュティーちゃん強いね〜、レガルド君に勝っちゃうなんて」


リリーは微笑みながら、シュティーの頭を軽く撫でる。


「なんとなくだけど……君がミオナちゃんをラグーザまで逃がしたんじゃない?」


問いかけに、リリーは驚いた表情を見せ、次いで感心したように笑った。


「すごい! そうだよ〜。まぁ結果的にシュティーちゃんを巻き込んじゃったのは、ごめんね」


深々と頭を下げるその姿に、敵意はまったく感じられない。本当にバスクファミリーの構成員なのか――そんな疑問を、ミオナが察して口を開く。


「リリーさんは、バスクファミリーの中で唯一、私のことを心配してくれた人なんです。マフィアとは思えないですけどね……」


「そうだね〜。危ないこと、基本的に嫌いだからね〜」


炎がふっと消える。


「あ、時間経っちゃった。もう一回やるね」


 そう言ってリリーは再び炎を生み出し、シュティーを包んだ。


「変わった能力だね。炎系なのに治療系って」


「でしょ〜? 珍しいからってレガルド君からスカウトされたんだ〜。でも借金あって仕事詰めだったから、断ったんだよね〜」


「すごいね、君。レガルドの誘いを断るなんて」


「まぁね〜。脅されたけど、私、両親いないし友達もいないから、『借金なくなったらいいよ〜』って言ったら、レガルド君が借金取りの人殺しちゃってね。それで恩もあるし、能力が役に立つならって思って入ったんだ〜」


「そっか……能力だけじゃなくて、本人も変わってるんだな

 シュティーは小さく笑う。


「でも、助かったよ。ありがとう」




 30分後、炎の効果が切れる。シュティーはゆっくりと身体を起こした。傷はほぼ完治している。


「まだ動かないほうがいいよ? 私、全然治すし」


 心配するリリーに、シュティーは首を振る。


「大丈夫。だいぶ良くなったし、現状を把握しておきたいから」


 窓辺へ歩み寄り、外を見下ろす。制圧された構成員たちが護送車へと送られていくのが見える。


「……良かった」


 小さく呟き、振り向いてミオナを見つめる。


「よし、これで今回の依頼は解決かな!」


「依頼……?」


「そうだよ! ミオナちゃんがボクに『助けて』って言ってくれたじゃん?」


 ミオナは驚いた表情を見せ、すぐに少しだけ俯く。


「そ、そうですか……それは、ごめんなさい」


 シュティーは励ますように、ミオナの手を握った。


「全然大丈夫! ボクはね、受けた依頼はしっかりこなすタイプだから!」


 その笑顔に、ミオナもまた微笑みを返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ