第46話「終焉の業火」Part1
玉座のように豪奢な椅子にふんぞり返り、深紅の衣をまとった男がいた。その傍らには、怯えた表情を浮かべるミオナ。
「お前が来たってことは……フェルナが殺られたか」
男──レガルド・バスクは、ゆっくりと笑みを浮かべる。
「紅い彗星が堕ちたか……いや、この場合“堕とされた”か?」
シュティーは一歩踏み込み、低く問う。
「聞きたいことがある。一つ目は、なぜミオナちゃんを監禁しているのか。二つ目は、ボクと君は面識もないのに、明らかにボクの能力を対策した構成員ばかりだった。理由は?」
レガルドは肩をすくめ、悪びれもせず答えた。
「そうだな……ミオナを俺の元に置いているのは、こいつの能力が使えるからだ。『嘘発見器』──相手が嘘をついているかどうかわかる。実に有用だ。俺を騙そうとする奴らは、この能力の前では無力。まぁ、実質ミオナが殺しているようなもんだな」
高らかに笑う声が、天井の装飾を震わせた。
「次の質問だが……“ある筋”からの情報とだけ言っておく」
「……“ある筋”?」
眉をひそめるシュティー。
レガルドは不敵な笑みを深めた。
「お前には関係ない……が、お前の“父親の死”には関係しているかもしれんな」
その一言に、胸の奥が冷たくなる。
父は事故で死んだ──そう教えられてきた。だが、目の前の男の口ぶりは、明らかにそれを否定していた。
「どうした?そんな顔をして……そうか、聞かされていないのか。傑作だな」
レガルドは腹の底から笑う。
「まさか現クロード家のボスが、自分の父親の死の真実を知らないとはな。随分甘く育てられたようだ。……おおかた、お前を育てたのはディノ・ファルクだろ? あの男のことだ、“ボスの娘だから”とか言って生ぬるい育て方をしたんだろうな。そうでなければ──」
レガルドはゆっくりと立ち上がり、炎のような眼で見下ろす。
「──そうでなければ、俺の手で殺されなかったのにな」
瞬間、彼の腕が轟々と燃え上がる。
「……円環」
次の刹那、炎が輪を描き、殺意を帯びて飛来した。
シュティーはボロボロの身体で、紙一重でそれをかわす。だが熱の余波は凄まじく、肌を焼き、髪先を焦がす。焦げた匂いが鼻をつく。
「ほう……そんな身体でも避けられるか。大したものだ」
しかし、レガルドは攻撃の手を緩めない。
――このままでは持たない。
レガルドは炎系能力者。そしてこの温度、この規模……耐性があっても限界は来るはずだ。そう思考した瞬間、男がその考えを打ち砕く。
「お前が考えていること、わかるぞ。炎系は炎に耐性があるが無限ではない……逃げ続ければ俺の限界が来ると」
レガルドは炎を体内に充満させ、爆発的な加速で迫る。
灼熱の気配が眼前に迫り、耳元で低い声が響く。
「残念だったな──俺の能力《業火の器》は、炎への耐性が“無限”だ」




