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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第二章 
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第42話「交わす空」Part1


カジノ・ノクターリカの屋上で、夜空を割るように紅い閃光がほとばしった。

その閃光を、ディノは一歩離れた場所から見上げていた。彼がリオとの死闘を終えた直後だった。


「……派手にやってるな」


ぽつりと呟くディノだったが、屋上へ駆け上がる足は持たなかった。

それは――彼女との約束だったからだ。

シュティーとの約束を破って加勢に向かうことは、彼にとって「信頼」を裏切る行為に他ならない。

ディノはゆっくりと息を吐く、彼はCIDとともに、残るバスクファミリーの掃討に力を尽くすことを選んだ。


場面はノクターリカの屋上へ。


夜を引き裂くような紅蓮の翼が宙を翔ける。

シュティーの頭上を、鳥のように、流星のように、フェルナが翔けた。

炎で構成された羽根は、夜空にあってなお紅く、激しく、鮮烈に燃え上がる。

そこから繰り出される猛攻は、爆撃のような火球と、高速滑空による突撃。

空と地という絶対的な優位を持ったフェルナの攻撃に、シュティーは追い詰められていた。


(くそっ……触れなければ穢せない……)


地に立つシュティーにとって、上から振り下ろされる熱と衝撃は、一発一発が命取りになりかねない。

瘴気は放っても、炎の熱で即座に消し飛ばされる。空気を媒介にしても意味がない。

足場を使った回避や攪乱も、屋上という開けた場所では通じない。


(能力の相性が最悪すぎる……攻撃のタイミングを見極めて、カウンターを狙う? でもそんな隙、あの動きでくれるわけない)


汗が額を伝う。それは炎の熱によるものか、それとも思考を絞り出す焦燥によるものか。

しかし、そのとき――

空中に舞うフェルナの背にある羽根の「端」に、わずかな“黒”を見た。


シュティーの目が細まる。

そして、ニヤッと口の端を吊り上げた。


「フェルナちゃーん? 君の能力、相性的にも悪くてさぁ。今のボクじゃ正直勝ち目ないんだよね」


空中のフェルナはその言葉に応じることなく、旋回しながら再び火球を放ってくる。

だがシュティーはそれを回避しつつ、なおも言葉を続ける。


「でもね、ひとつだけ、君の能力の“弱点”が見えた」


シュティーの声に、フェルナの眉がわずかに動いた。


「夜だから気づきにくかったけどさ……君の羽根の先、黒くなってるよね? 炭化してる。つまり、君の炎の羽根、永続じゃない。

 炎系能力者って、確かに炎に強いけど――耐性が“無限”じゃない」


フェルナは空中で旋回しながらも、ほんの僅か、視線をシュティーへと寄せた。


「……それがどうしたの?」


「どうって、ボクの勝ち筋はそこしかない。炭化して羽根が全て落ちれば、君は空を飛べなくなる。そうなれば、今度はこっちの番ってことさ」


「その前に倒せばいいだけ。……それに私は、貴女のために燃えてるわけじゃないの」


その言葉に、シュティーの目が細められる。


「ふーん……レガルドのためってわけか。忠義? それとも……呪縛?」


煽るような口調だった。

挑発しているようにも、時間稼ぎをしているようにも取れる。

だがどちらにせよ事実だ。

炭化が間に合うまで耐える、そんな呑気な選択肢は最初から存在しない。


(時間を稼ぐには足りない。そもそもこのまま回避を続けても、いずれ限界が来る)


フェルナは苛立ちと共に、攻撃を一段階引き上げる。

火球が矢のように降り注ぎ、シュティーの立つ場所を灼熱地獄へと変えようとする。


シュティーは避けながら、心の中で呟く。


(……これはレガルドと戦う時の切り札にしたかったんだけど)


それは、彼女のために「誰か」が用意してくれた、大切な“武器”。


「仕方ないか……」


シュティーは、金色に輝く短剣を抜いた。

それはまるで“何かを記す”ような形状をしており、刃には微かに蒼白い光が揺れている。


戦局が、音を立てて変わろうとしていた。



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