表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロード家の云々  作者: カキちゃん
第二章 
38/91

第36話「鋼の怒り、機械の絶望」Part1



薄暗く湿った水路に、打ち鳴らされる金属の音が響き渡っていた。

バルタの鉄皮が軋む。その体が、異形の機械人形の連打を全身で受け止めている。


燃えるような蒸気、そして熱。

それは通常の機械ではない。ドロマの“発明品”──炎を動力源とする機械人形は、ただの兵器ではなかった。死体を素体にし、ドロマの異能によって魂を持たぬ破壊装置と化していたのだ。


「ほっほっほ、しかし実に頑丈な身体じゃのう」


バルタの肉体が殴られ、焼かれ、打ち据えられるのを、ドロマは楽しげに見つめていた。


「わしの機械人形の攻撃をこれだけ防ぐとは。こりゃあ、お主の身体そのものを素材にすれば、さぞ良い発明品になるじゃろうて」


ドロマの声はまるで品定めをする商人のようだった。

バルタは鋭く睨みつけるが、言葉を返す余裕はない。機械人形の攻撃は、寸暇も与えぬ連打。思考する間も惜しい。


(このままじゃジリ貧だ…あれはただの鉄塊じゃない、炎のエネルギーが加わった、まさに戦闘兵器。俺の鉄皮でも、受け続ければ持たない)


バルタは歯を食いしばる。

殴られ、吹き飛ばされ、水路の壁を割りながら転がる。

(攻撃が通じねぇ…どうする? このまま時間稼ぎに徹するか…でも、そんなに保たねぇ…)


吹き飛ばされたバルタが水面に伏す。

呻き声が漏れる。それは痛みに対してか、それとも無力感か。彼自身にも分からない。


「そろそろ終わりにするかのう?」

ドロマが手を掲げ、命じる。

「機械人形、その男を仕留めろ」


機械人形が無機質に歩みを進める。

バルタは苦しげに体勢を立て直し、再び鉄皮を発動──しかし鋼鉄の腕が砕かれる。片膝をついたその背に、重い一撃が打ち込まれる。


「実に見事な素材じゃ、実戦データも取れたし、お主の体は極上の部品になりそうじゃ」


ドロマが近づく。

──それこそ、バルタの狙いだった。


倒れたまま気絶を装い、相手を油断させる。ドロマの姿が目前に来た瞬間、バルタの身体が一気に跳ね起き、右腕での打撃を叩き込もうとする──!


「やはりなぁ」


しかしその一撃は、バルタの期待を打ち砕くように、機械人形が割って入り受け止める。


「そんな簡単にやられるとは思っておらん。だが嬉しいのう、やはりお主は最高の素材じゃ」


ドロマは不気味な笑顔を浮かべ、バルタの傍に立つ。


「この興奮、孫娘を“実験”に使った時以来じゃわい」


その言葉に、バルタの表情が変わる。

深く、底冷えするような怒りが湧き上がる。


「今、なんて言った?」


「ん? 聞こえなかったかの? わしの孫娘をじゃな、素材に使ったんじゃよ」


ドロマは楽しそうに語り出す。


「10年ほど前のことじゃ。可愛らしい子でのう、わしのことを慕ってくれておった。死体集めは手間がかかるが、家族なら楽じゃろ? 義理の息子に罪をなすりつけて、わしは無罪放免よ」


信じられない、といった表情でバルタはドロマを見据える。

怒りというより、もはや言葉にできない人としての嫌悪だった。


「バスクファミリーはええところじゃ。素材は溢れておるし、幹部の地位にいれば誰にも邪魔されん」


ドロマの声は、バルタの神経を刃で削ぐように響いた。


「……それが、“いいところ”だと?」


バルタの目から光が消え、代わりに鋼の怒りが灯る。

立ち上がるバルタの身体から、鋼の皮膚がさらに硬質化する音が響いた。


「お主にできることなど、もうないぞ。すぐに素材として回収してやる」


ドロマが笑う。


「……そうかもな」


バルタは静かに呟いた。

だがその声には、どこか狂気すら滲む“覚悟”がこもっていた。


そして、その覚悟の奥には──

自分が失った家族への、もう二度と譲れない正義があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ