第34話 「水上の闘い」
水上カジノ〈ノクターリカ〉──煌々と輝くライトと高級感溢れる装飾の中、レガルドは深い眉間の皺をさらに刻みつけていた。彼の眼差しは冷たく、何か不穏な気配を感じ取っている。
「おい、カリナを呼んでこい」
部下が素早く動く。数分後、妖艶な美貌を漂わせるカリナがゆっくりとレガルドの前に現れた。
「レガルド様、どうしましたか?呼びつけるなんて珍しいですね」
その声にはわずかに挑発めいた色気が混じっているが、レガルドは気に留めずに切り出した。
「例の……イカサマしてた男と繋がっている政治家の情報は掴めたか?」
カリナは一瞬、首をかしげる。
「男は舌を噛み切って死んだって……シェイドに伝えるよう言ったはずよ?シェイドから何も聞いてない?」
レガルドは険しい表情で問い返す。
「シェイドなら、2日前にサンティーノ島に来た奴を始末したと報告してきた。カリナ、その話は確かか?」
カリナは自信ありげに答えた。
「えぇ、昨日シェイドはレガルド様に報告するために帰って来ていたわ。多分、他の者もシェイドの姿は確認しているはず」
レガルドは懐から携帯を取り出し、すぐにシェイドへ電話をかける。
「もしもし、俺だ。シェイド、そっちの様子はどうだ?」
電話の向こうから返ってきたのは冷静な男の声。
「特に異常はありません。引き続き怪しい者が来ないか張り込んでいます」
だがレガルドはすぐに引き下がらず、鋭く詰め寄る。
「一つ聞かせてくれ。カリナから聞いたが、昨日帰って来ていたらしいな?だが俺への報告はない。どういうことだ?」
電話の向こうから、微かに嘲るような笑い声が漏れた。
「そうだな……もう少し仲間を見る目を鍛えたほうがいい、レガルド」
突然、声が変わる。低く、冷酷な響きを帯びていた。
レガルドは怒りを滾らせる。
「一体お前は誰だ…?どうせクロードの者だろ?」
「そうだな、二日前にシェイドのフリをして電話したのは俺だ、良かったよ騙されてくれて」
電話越しの声は不敵に挑発する。
「どうせ今もサンティーノ島にいるんだろう?」
「敵を送り込むのは構わないが、自分のことをもっと気にしたほうがいい」
その言葉が終わるや否や、扉が勢いよく開き、息を切らした部下が駆け込んできた。
「ボス!大変です!外にCIDの連中が!」
レガルドは即座に窓へと走る。そこには無数のCID特殊部隊が待ち構えていた。
「シュティー・クロード……マフィアのくせにCIDと手を組むとはな」
怒りが燃え上がる。だが電話の向こうから最後の一言が聞こえた。
「とりあえず頑張ってくれよ。シェイドは始末した。じゃあな」
通話が切れ、静寂が戻る。
「カリナ!お前は地下で今電話に出たやつに応戦しろ!“ドロマ”にも伝えろ!」
カリナは微笑みながら答えた。
「はい、了解しました、レガルド様」
彼女の笑みはどこか楽しげで、戦いへの予感を含んでいた。
「フェルナ!シュティーがCIDに紛れているなら、必ずここに来る。お前が仕留めろ」
フェルナは静かに頷き、屋上へと足早に向かう。
「リオ、部隊を率いてCIDごと壊滅させろ。ギルバートの仇を討て」
リオは無表情に答えた。
「ギルバートって誰?」
「細かいことはいい。俺には誰も勝てない。CIDもクロードもな」
己の能力に揺るぎない自信を持つレガルド。国すら敵に回す覚悟がその言葉に宿っていた。
「おい、ミオナをここに連れてこい。地下だと逃げられる」
部下たちは指示に従い、走り出す。
レガルドは呟く。
「シュティー・クロード……お前の代で、クロード家を終わらせてやる」




