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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第二章 
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第29話「火線交錯」

豪奢な調度に囲まれた応接室は、静寂と緊張に支配されていた。深紅の絨毯と艶めく黒檀の机が存在感を放ち、天井から垂れるシャンデリアが細やかな光を揺らす。その部屋の主――バスクファミリーのボス、レガルドは背もたれに深く腰を下ろし、ふてぶてしく脚を組んでいた。


その隣には、硬く黙り込んだ少女・ミオナが立っている。細い腕、伏せた目、けれどその背筋は不自然なほどに真っ直ぐだった。


向かいにはスーツに身を包んだ政治家。トゥレーノで名を馳せる中堅議員の男は、緊張からか額に浮かぶ汗をハンカチでぬぐいつつ、へらへらと笑みを浮かべた。


「それで……バスクファミリー様に、力添えをお願いしたく……」


低姿勢の言葉に、レガルドは鼻で笑った。


「ハッ、トゥレーノ一の政治家ともあろう奴が、こんなマフィアに殺しを依頼するか。……自力じゃ勝てない、ってことだな?」


その口調に政治家は即座に頷く。卑屈な笑みを浮かべたまま、言葉を継いだ。


「は、はい。ぽっと出の若手候補に、最近は貴族からの強力な後ろ盾がつきまして……正直、このままでは選挙戦が苦しいかと」


レガルドは興味深そうに顎に手を当てる。


「それで? 俺たちがそいつを“始末”したら、見返りは?」


「もちろん。当選の暁には、バスクファミリー様への援助を最大限……政治的な保護や融通もお約束しますとも」


その瞬間、静かだったミオナがぽつりと口を開いた。


「この人……嘘をついてます」


その一言に、政治家の顔が強張った。


「な、なにを……馬鹿なことを! 私が嘘を!? 嘘をついてるというのか!」


ミオナは、怯えながらも静かに言葉を重ねる。


「また、嘘をつきました。……たぶん、この人はファミリーを利用したあと、手のひらを返して貶めようとする」


「このクソガキがッ!」


政治家が机を叩いて怒鳴り声を上げる。だがレガルドは表情を変えず、低く尋ねた。


「ミオナ、本当か。こいつは“嘘”をついてるか?」


「……はい」


レガルドはゆっくりと立ち上がり、政治家に歩み寄る。その目には一切の情けも慈悲もなかった。


「コイツ、ミオナの能力は“嘘発見器”。相手が嘘をついたか、必ず分かる。そんで、ミオナは俺の“忠実”な部下だ。嘘はつかない、お前と違ってな?」


「ち、違うッ! 私はっ……!」


「はいはい、“由緒正しき政治家サマ”が、マフィアに殺しを依頼したあげく嘘までついた。そのツケ、払ってもらおうか」


その手が政治家の喉元を掴んだ瞬間、レガルドの掌に炎が灯った。あまりに呆気なく、男は悲鳴も虚しく一瞬で灰となり、風に散った。


灰を手で払いつつ、レガルドは部屋の扉に声をかける。


「おい、リオ。こいつの事務所、潰してこい」


扉が開き、無表情の男・リオが入ってくる。「わかった」と一言だけを残し、再び部屋を出た。


レガルドはミオナの方へと目を向け、口元に歪んだ笑みを浮かべた。


「よくやったな、ミオナ。お前のおかげでまた一人、死んだぞ?」


ミオナは小さく震え、瞳に怯えを浮かべて下を向いた。


そのとき、レガルドの携帯が鳴った。画面を見て、口元が吊り上がる。


「おう、俺だ。どうした、シェイド」


電話の向こうから冷静な声が響く。


『ボスの言った通り、男二人がサンティーノ島に来た。恐らくクロード家の者だろう』


「それで?」


『……ああ。始末した。引き続き、監視を続ける』


「……わかった」


レガルドは通話を切り、ミオナに顔を向けた。


「聞いたか? お前を助けに来たやつ、死んだってよ」


ミオナはガタガタと震え始め、瞳から大粒の涙が零れ落ちる。


「残るは……シュティー・クロードか」


と、そのとき、応接室に伝令が飛び込んでくる。


「レガルド様、報告です。ギルバート、戦闘の末、死亡。おそらく、シュティー・クロードに討たれたかと……」


「へぇ……」


レガルドは興味なさそうに眉をひそめる。


「で、シュティー・クロードは?」


「はい。ギルバートに深手を負わされた模様で、現在CID管轄の病院に搬送されたとのことです」


「CIDか……手ぇ出すには面倒な相手だな。まぁ、今回は見逃してやるか」


そう言いながら、レガルドはミオナに歩み寄り、耳元で囁いた。


「お前を助けようとする奴は、みーんな死ぬなぁ?」


ミオナは声を殺して泣いた。



---


場面転換:サンティーノ島


乾いた岩肌に打ちつける風が、緊張を含んでいた。


アラタが怒りに任せてバルタの胸倉を掴みかける勢いで詰め寄る。


「ボスがやられたって、本当かよ!?」


バルタは低く唸るように答えた。


「焦るな。正確には、敵に負傷を負わされた。……今はCIDの病院にいるらしい」


「……ボスの方にも刺客が来てたってことかよ」


アラタは拳を強く握り締め、唇を噛む。その拳から滲む血が、怒りの深さを物語っていた。


「なぁ、バルタ……この野郎シェイド、殺していいか?」


バルタは一つ溜息を吐いて、静かに言う。


「気持ちは分かる。でも今やったら、レガルドにバレる。病院はCIDの監視下だ。まずはボスが回復するまで、あいつらを騙すしかねぇ」


「……どうやって?」


「お前の“変幻”を使え。“声”まで再現できるんだろ? なら、あいつのフリしてレガルドに報告しろ」


アラタは少し黙って、そして鼻で笑った。


「……なるほどな。わかったよ。マジでムカつくが、必要ならやってやるよ」


シェイドの携帯を拾い、深く息を吐く。


「ギルティ――“変幻”」


アラタの姿が、シェイドの姿に変わった。声も、身振りも完璧に再現されている。


通話ボタンを押す。


『おう、俺だ。どうしたシェイド』


「ボスの言った通り、男二人がサンティーノ島に来た。おそらくクロード家の者だろう」


『それで?』


「……あぁ、始末した。引き続き監視を続ける」


『……わかった』


通話が切れた。


アラタは無言で変幻を解除し、シェイドの顔を睨みつけた。


「とりあえず、これで誤魔化せたな。……クソ、マジで殴らせろ」


殴りかかろうとした瞬間、バルタが口を挟んだ。


「気絶させるなよ。俺も殴るから」


アラタはニヤリと笑った。


「上等だ」


暗い怒りが、静かに幕を下ろしていた。


アラタの能力便利すぎ!

そしてミオナが囚われてる理由もなんとなくわかるよね

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