表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロード家の云々  作者: カキちゃん
第一章 物語は静かに
2/68

第1話「眠りの病」Part1

クロード家──ソルズカ共和国、セルカ島東岸に位置する中核都市ラグーザを治める小さなマフィア一家。

だがその実態は、“街の謎”を日々解決する、影の守護者とも言うべき存在だった。


今日もまた、1件の奇妙な依頼が舞い込もうとしていた。


「飯できたぞー」


野太い声と共に、食堂へどさりと何かが置かれる。

置かれたのは山のような肉料理。声の主は、身長180cmをゆうに超えるスキンヘッドの大男──バルタ・コレンだった。


「おいバルタ、これじゃあボスがお前みたいな肉だるまになっちまうぞ」

皮肉っぽく言うのは、黒髪をラフに流したおちゃらけ男──アラタ。


「ははっ、お嬢も食べ盛りなんだ。いいじゃねぇか」


そう笑ったのは、クロード家の“表向きのボス”──シュティーの側近にして、刀を携える男、ディノ・ファルク。


「まぁまぁ、ボクが食べられなかったらアラタが全部食べるから」

挑発するような調子で笑ったのは、この家の“真のボス”──16歳の少女、シュティー・クロードだった。


「なんで俺なんだよ!?」

即座に突っ込むアラタ。そんな平和で、少しだけにぎやかな昼下がり。


その空気を破るように──「コンコン」と扉がノックされた。


「あら、シュティー、こんにちは。昼に起きてるなんて珍しいわね」


入ってきたのは、制服に身を包んだ金髪の少女。

柔らかな微笑をたたえたその人物は、ヴァリーナ・セシル。

シュティーの幼馴染にして、街でも名高い名家・セシル家の一人娘だ。


セシル家は表向きにはクロード家と関係のない貴族として振る舞っているが、実際には資金援助や情報提供など、密接に支援をしていた。


ヴァリーナの役目は、街で起こる依頼や事件を“シュティーへ届けること”。


「おはよう、ヴァリーナ。また依頼?」

シュティーが興味津々に問いかける。


ヴァリーナは楽しげに小首を傾げて、言った。


「“眠り病”って、聞いたことある?」


「眠り病?」

シュティーは首を傾げる。


「ええ、ラグーザの西側にある小さな町で、最近流行ってるの。歩いていても、話していても、ご飯を食べていても──突然、眠ってしまうの」


「……危ないね」


「でも、深刻な症状ではなくて、すぐ起きるらしいの。自然な睡眠のようで。でもね、その“眠り病”にかかった人たちには、共通点が一つある」


「共通点?」


「みんな、1週間ほど前に、ある診療所に行ってるの。その町の外れにある、小さな診療所よ。おそらく、その関係者が何かしら関わってる可能性があるの」


「つまり──能力者の犯行ってこと?」


「多分ね。だから、お願いできる?」


ヴァリーナの目は真剣だった。それに応えるように、シュティーはわくわくした声で答えた。


「分かった。いいよ、行ってくる。アラタ、行くよ!」


「へいへい、また急だな……」


そんな軽いやり取りとともに、シュティーとアラタは出発した。



数時間後、西の町──


小さな町にたどり着いた二人は、どこか眠っているような街並みに違和感を覚えた。

人の気配はあるが、まるで町そのものが、深い夢の中に落ちているような静けさ。


「……空気が違うね」


そう言いながら、シュティーは一人の婦人に声をかけた。


「こんにちはー、“眠り病”って知ってますか?」


婦人は眉をひそめつつ、落ち着いた口調で答えた。


「ええ、よく知ってるわよ。近所の奥さんの息子さんがなったの。いきなり目を閉じて、ぐうぐう寝始めたって」


「その人たち、どこか診療所に通ってたって話を聞いたんですけど」


「ええ、街の外れにある“シン先生”の診療所よ。そこに行ってから、調子を崩す人が増えたの。でも、あの人は町でも人気のある優しい先生なの。まさか……そんなことは」


婦人の言葉には、先生を信じる気持ちが強くにじんでいた。


「……診療所の場所、教えてもらえますか?」


「もちろん。地図を取ってくるわ」


数分後、丁寧に手渡された地図をもとに、シュティーは即座に立ち上がった。


「アラタ、行くよ!」


「ったく、早いな……」


目的地は決まった。

あとは、“真相”を暴くだけだ。



別視点──診療所内


静かな診察室。陽が差し込む窓。小さな机。


「……今日は、夜の22時に眠れるようにしておきますね」


そう語りかけるのは、優しく穏やかな声の持ち主。

診療所の主──シン先生。


その声は、まるで春風のようだった。

だが、その目に浮かぶ光は──どこか異質だった。



リメイクしました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ