表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロード家の云々  作者: カキちゃん
第一章 
19/91

第18話「刃の向かう先は」

廃墟の最奥。崩れかけた天井からわずかに差し込む光の中で、二人の影が向き合っていた。


キィン、と金属が擦れるような音。


その直後、空気を裂くように無数の刃がキリアンの身体から飛び出し、シュティーを貫かんと襲う。


しかし──そのすべてを、シュティーは紙一重で躱し、あるいは銀の刃で受け流した。


「へぇ、それが君の“刃”の能力……ってことはさ、廃棄路地での件。犯人は、やっぱり君で確定ってことでいいかな?」


キリアンの表情は変わらない。ただ、静かに──まるで当然の義務のように、口を開いた。


「……ああ、あの件か。確かに俺だ。正直、アジトの近くでやるのはリスクだったが──あいつは俺たちの金を持ち逃げしようとした。裏切り者は、生きている価値がない」


「ふーん。それで“リーダー様”がわざわざ自ら手を下したんだ?」


「上に立つ者には、それなりの“矜持”ってものがある」


その言葉と同時に、再び刃が放たれた。数は十、二十ではきかない。壁から、床から、まるで空間ごと刃に変わったような圧力。


シュティーは後方へ跳びながら、冷静に観察する。


(刃の展開範囲は……約5メートルってとこかな。一本一本の強度は高いけど、手応えは均一。となると……素材は恐らく、彼自身の鉄分……)


「君、バルタと似てるね。構造は違うけど」


キリアンの目が細くなる。


「ふん、本当に分析好きなガキだな」


「癖みたいなもんだからね」


シュティーは攻撃を捌きながら、じわじわと距離を詰めていく。だが、近づくたびに刃の数は増え、その密度は高まる。


キリアンは一瞬、ニヤリと笑った。


「──お前の瘴気、“熱”に弱いらしいな。コンプレスが言ってたぜ」


「うん、そうだね。でも……君はボク相手に“使う必要はない”と思ってる。違う?」


キリアンの瞳がわずかに動いた。


「リーダーだから、自分の力でケジメをつける。そういう矜持があるんでしょ? だったら仲間に任せず、自分で倒す。……でもね、それって」


シュティーは足を止め、笑う。


「──仲間を信用してないってことでもあるよね」


キリアンの顔が、露骨に歪んだ。


「……少し、喋りすぎたようだな」


怒りが爆発するように、刃が嵐となって襲いかかる。だが、シュティーは怯まない。むしろ、その勢いに乗るように、一歩前へ踏み込む。


「君の能力──殺傷性、持続性、どれも高水準。だけど、欠点がある」


その瞬間、一本の刃を真っ向から斬り落とした。


キィンッ!


「折ったら元には戻らない……そうでしょ? 君の刃、折れたら身体にも戻せない。毎回“新たに作り直してる”──正解?」


キリアンの攻撃が止まらない。だが、シュティーも止まらず、次々と刃を斬り落としていく。


(一本、二本……刃を削げば削ぐほど、再生速度と硬度が落ちてる。きっと鉄分を補う手段も、限られてるんだ)


最後の一本を打ち払ったと同時に、鋭い踏み込みから──


「──終わりだよ」


シュティーの刃が、キリアンの胸元を斬りつけた。


キリアンは膝をつき、がくりと前のめりに倒れる。


「なぜだ……なぜ能力を使わなかった……!」


「うーん、そうだねぇ」


シュティーは片目を細め、悪戯っぽく笑う。


「君くらいなら、能力なしでも勝てると思ったから──かな?」


その笑みは、どこか悪魔のように残酷で、そして恐ろしく冷静だった。


キリアンの意識が薄れていく。


その暗闇の中で──彼は、遠い記憶に呑まれていった。


血が流れていた。


それは敵のものでも、自分のものでもなかった。


「──キリアン、お前がやったってことにされてる。逃げろ」


仲間だった男は、まるで荷物でも捨てるように言った。キリアンではなく自分が助かったことに、心から安堵した顔をしていた。


十四歳のキリアンには──現実は、あまりにも重すぎた。


正義のために力を使いたかった。

誰かを守れる力がほしかった。


でも、信じた“仲間”は、その力を恐れ、切り捨てた。


それから、彼は“信じる”ことをやめた。


路地裏で倒れた少年に声をかけたのは、赤毛の青年だった。


「……その血、売れるか?」


「は?」


「冗談。でもさ、弾が要るんだ、撃つためにはな。俺は、血から弾を作れる」


そう言って笑った青年──クロム。

彼は刃を見て、面白いと言った。価値があると言った。


キリアンは、差し出された手を取った。


ただし、それは友情ではない。


「俺たちは“共犯”だ。それ以上でも以下でもない」


「上等」


その日、“刃”と“魔弾”は契約を交わした。

心が壊れた二人が、それでも前に進むための。


キリアン(……信じねぇって決めてた。信じりゃ裏切られる。……でも……もしあの時……信じていれば──)


遠のく意識の中、誰かが言った。


「──仲間は大事にした方がいいよ、お兄さん」


──それが、シュティーの言葉だったのか。

──それとも、かつて信じた誰かの幻影だったのか。


その答えは、キリアンの心の奥、静かに閉じられたままだった。

前話より良い感じにかけた!正直第一章はほぼノリで書いてるからぐちゃってる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ