第17話「向けられた刃」Part3
突き破られた壁の奥、鉄骨がむき出しになった廃墟の一室に、乾いた足音が響く。 ディノとバルタは並び立ち、静かに前方を見据えていた。その視線の先には、無骨な黒のジャケットに身を包み、サングラス越しに二人を射抜く男──クロム。
「突っ込むぜ、兄貴!」
バルタが歯を剥き出しにして叫ぶ。
「おうよ!」
ディノが応じ、刀を抜き放つ。その刃が光を受け、荒んだ部屋に一瞬だけ静寂が宿る。
その瞬間──
パンッ!
甲高い銃声が響く。クロムのリボルバーが火を噴いた。ディノは即座に反応し、飛来する弾丸を斬る──はずだった。
キィン!
「切れねぇ……?」
刃が触れた瞬間、弾丸は軟質の金属のようにしなって跳ね返り、ディノの背後へと飛び去った。次の瞬間には壁に当たり、跳ねて天井へ、そこから床へ──まるで意志を持ったように跳ね回る。
「人体に当たるまで止まらない。それがこの弾の仕様だ」
能力「魔弾」自身の血液を媒介とした弾丸を生成できる。弾丸は細かく性能や性質を設定できる
クロムは淡々と、機械のような口調で言った。
「俺にも当たる危険はあるが……それ以上のリターンがある」
ディノは跳ねる弾をかわしつつ、口元に苦笑を浮かべた。
「クセが強ぇな……!」
バルタが叫ぶ。
「だが、本人を叩けば終わりだ!」
「……叩ければ、な」
クロムは新たな弾をリボルバーに装填しながら、左手で複数の魔弾を宙に投げた。その瞬間、右手の銃でそれらを撃ち抜く。
──爆発。
投げられた魔弾と発砲された魔弾が接触し、爆裂。衝撃波がバルタを吹き飛ばす。地面に倒れたバルタの肩には、爆発の余波で生じた鋭利な破片が突き刺さっていた。
「ぐっ……!?」
「投擲+爆破弾。近距離には効くだろ」
クロムはわずかに首を傾げて呟く。
「バルタ、避けろ!」
再び銃声。貫通弾が放たれ、バルタの肩を穿つ。鉄の皮膚をも貫く威力。
「……っち!」
ディノは眉をひそめつつも、跳弾を読みながら冷静に分析する。
「一度に性質を変えられねぇなら、跳弾中の弾はそのまま。爆発や貫通、タイマー炸裂……組み合わせがキモだな。だが操作はできねぇ。ならば、読み切れば攻略の余地はある」
クロムが鼻で笑う。
「読み切れるものならな。お前らクロード家ってのは、感情だけで動くバカの集まりかと思ってたが……」
「褒め言葉として受け取っくぜ」
ディノはそう言いながら、跳弾に手を伸ばす。命を狙う跳弾を、掌で受け止めたのだ。
「なっ……!?」 クロムが声を漏らす。
「痛ぇけどな……軌道と威力を刀で削いで、なんとかいけたわ」
掌からは血が滴っていたが、その表情はどこか楽しげですらある。
「バカか……」
「そうかもな。でも、バカはバカなりに、意地があるんだよ」
クロムが再びバルタへ銃口を向ける。
「今度は確実に殺す」
だがディノは素早く間に割り込み、今度は弾丸を斬り伏せた。刀を弾が弾き、空中で不穏な煙を吐き始める。
「……爆発するな、これ」
ディノとバルタは同時に行動。バルタは全身を鉄に変え、盾となり、ディノは壁を蹴って受け身を取りながら距離を取る。
ドンッ!!
激しい爆発が起き、壁が一部崩れ落ちる。
「はっは、いいの貰っちまったぜ……」
ディノが壁に手をつき、苦しげに笑う。
「お前の能力と技術、CIDに推薦状でも書いてやりてぇくらいだ」
「関係ない」
クロムが淡々と応じ、再び銃を構える。
ディノは急に表情を緩めた。
「ちょっと待ってくれや。死に際に話くらいさせてくれ」
クロムは警戒しつつも、指は引き金にかかっている。
「俺の能力は『風錆』。触れたモンを錆びさせるだけの、地味な能力さ」
「だからなんだ?」
「天井を見てみな」
──ピシ、ピシピシ……。
音がする。クロムが顔を上げると、天井に刺さった一本の刀。その周囲の鉄が、明らかに錆びて崩壊寸前だ。
「……!」
ガラガラガラッ!
一気に天井が崩れ落ちる。クロムは咄嗟に銃を構え、爆発弾で迎撃しようとする──
「うおおおおおおおお!!」
バルタが絶叫とともに突っ込む。全身を鉄に変え、クロムに組みついたまま瓦礫の直撃を受ける。
「死ぬのは、お前だけだ!」
クロムの銃声が一発だけ鳴ったが、それ以上は何も響かなかった。
……静寂。
瓦礫の山から煙が立ち昇り、ディノがゆっくりと歩を進める。
「……勝てたのはお前のおかげだぜ。爆発で建物を揺らし、俺の錆と刀で崩れを誘発。バルタが止めてくれたからこそ、詰めができた」
気を失ったクロムの顔は、どこか安堵したようにも見えた。
ディノは肩をすくめて言った。 「強かったぜ、若造」
正直、今回の回で一番つまんないバトルさせた、能力相性的に、これしか勝ち目なかった…本当ごめん




