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クロード家の云々  作者: カキちゃん
第一章 
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第14話「放たれる刃」Part3


その日、シュティーは再びローレン旧区画を訪れていた。


──廃棄路地での殺人事件、宝石店での強盗、アラタへの襲撃……それら全ては、ここローレン旧区画で起きている。そして何より、アラタを襲ったあの狙撃手。やつはアラタをわざと、袋小路へと誘い込んだ。つまり、ローレン旧区画に土地勘がある者の犯行ということだ。


「キリアン・シャード……“刃”の能力、ね」


能力名から推察するに、刃物に関連したものだろう。おそらく、自身の身体から刃を生み出し、それを操作する能力。廃棄路地で見つかった死体には、どれも同じ形状の刺し傷が残っていた。しかも一撃ではなく、複数同時に突き刺されたような痕跡。一人でそれをやるには、“同時多発”的な手段が必要だ。


「自分の身体から刃を生成し、何本も一気に撃ち出す……うん、それなら納得できる」


シュティーはそう確信し、旧区画の奥へと足を踏み入れる。


彼女が向かったのは、ローレン旧区画の最奥。かつて経営施設として使われていたという廃墟。今では雑草が生い茂り、コンクリの壁は風化とヒビで崩れかけている。見る者が見れば、立入禁止に指定されていてもおかしくない──だが、隠れるには最適の場所だ。


「ま、隠れるならここが一番だよね」


彼女は軽い足取りで正面扉へと向かう。そして──


「……鍵、開いてる」


不用心なミスか、それとも意図的か。だが、人の気配は確かにある。扉を静かに開き、埃の立ちこめる廊下へと足を踏み入れる。


内部は暗く、かすかな光に照らされて埃が浮遊する。床を見れば、靴の跡が多数。大きさ、向き、数……ざっと見積もっても、二十人以上は出入りしている。


「ここがアジトってわけか……」


注意深く奥へ進んでいく。曲がり角に差しかかろうとした、その瞬間だった。


「止まれ」


静かに、だが明確な威圧とともに、声が響いた。


シュティーが踏み入れた曲がり角、暗がりの中に佇む男が銃を構えていた。


「わーお、まさかボクが気づかないとは。君、なかなかやるね」


「“コンプレス”が言ってたガキだな。……うちに何の用だ」


「コンプレス……やっぱり関係してたんだ、ありがと、教えてくれて」


「……失言だった。忘れろ。それより、何の用だ」


「うーん、そうだね。君、キリアン・シャードって知ってる? まぁ十中八九、君に関係してるだろうなーって思ってるんだけど」


「……変なガキだな。何故聞く?」


「もしそうなら嬉しいなって思ってさ。ボクはそのキリアンのことが、ちょっと気になってて。ほんの少しだけ、用件があるんだよね」


クロムはしばらく無言のまま、銃口を逸らさない。


「……帰れ。今ならその脳みそを弾き飛ばさずに済む」


「そうだねぇ、この距離じゃさすがのボクでも避けられそうにない。うーん……ま、じゃあ一週間後に正式に挨拶に来るよ」


「挨拶?」


「うん、返せてない挨拶があるからさ。あ、次は一人じゃないかも。じゃ、またねー」


あっさりと踵を返し、廃墟を後にする。


銃は撃たれなかった。撃てなかったのか、撃たなかったのか。いずれにせよ、シュティーは一歩先へと駒を進めた。


夜。ローレン旧区画、同じ廃墟の一室。


クロムが、キリアンに事の顛末を報告していた。


「それで、そのガキは?」


「一週間後、また来るらしい。口ぶりからして、仲間も連れて来る気だ」


「仲間……そのガキは何者だ?」


「ゼンに調査を頼んだ。“クロード家”ってマフィアに出入りしてるらしい」


「クロード家……?」


キリアンの眉がわずかに動いた。


「ラグーザを裏から支配してる連中だ。だが、マフィアって呼ぶには妙な連中らしい。“表向き”には街の守り人として知られてる。ボスの名は、ディノ・ファルク。年齢は四十代半ばだそうだ」


「そうか、マフィア相手に俺たちが勝てば──それなりに名も上がるってことか」


キリアンは窓の外に目をやる。夜の空に浮かぶ、丸く濁った月。


「……楽しみだな。相手がマフィアでも、俺たちが“新しい時代”を証明するってわけだ」


その笑みは、支配を確信した者のそれ。

だが──月は何も語らない。

仕事休憩の合間に書いてるからクオリティは見逃して〜

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