第10話「繰り返される刃」Part2
ローレン旧区画――
ソルズカ共和国の都市開発からも取り残された、廃れた迷路のような路地。
シュティーはその奥に足を踏み入れていた。まだ立ち入り禁止のテープが張られているが、そんなものはお構いなしに、彼女は足を進める。
「ここが……」
薄暗く、埃の匂いが漂う路地の一角。
そこには、乾いた血痕がアスファルトの隙間に黒くこびりついていた。
「……写真通りだ」
シュティーは、CIDから届いた封筒に入っていた写真を再確認する。
被害者の体に刻まれていたのは、十数ヶ所にも及ぶ刺し傷。
だが、それらには妙な共通点があった。
「……全ての刺し傷が、角度も深さも似通ってる。真っ直ぐ、正確に、何度も……」
通常の暴力による殺人ではない。
怒りや激情に任せた滅多刺しならば、傷の位置も角度もばらばらになるはずだ。
だがこの被害者は、まるで“機械のように”同じ刺し方で貫かれていた。
「犯人は、冷静で、残酷で……それに、何か特殊な手段を使ったってことになる」
シュティーはひとつの可能性に思い至る。
「同時に複数の刃で一斉に刺した。」
それが真実なら、犯人は単に刃物を振るっただけではない。
何かしらの“能力”によって、その複数の刺突を成し得たということだ。
調査のため、シュティーはローレン旧区画に隣接する、かつての繁華街へと向かった。
この一帯もまた、かつては賑わいを見せていたが、今ではほとんどの店がシャッターを下ろしたままだ。
だが、いくつかの店舗にはまだ人がいた。
そのひとつ、寂れた売店で無気力そうにレジに立つ中年の女性を見つけると、シュティーは軽い足取りで近づいた。
「こんにちはー」
「ん……あら? お嬢ちゃん、こんなとこで迷子かい?」
「ううん。ちょっと調査してるだけ。あ、一昨日の事件……ローレン旧区画の廃棄路地で死体が見つかったって話、知ってる?」
「……ああ、あれね。ずいぶん物騒な話よ」
女は軽く眉を寄せながらも、シュティーの問いに応じてくれた。
「でもあの辺り、今じゃ誰も寄りつかない場所だよ。そりゃまあ、たまに若い子たちが騒ぎに来たり、落書きしたりってのはあるけど……事件があった夜は、アタシはここで閉店作業してたから、音も聞かなかったわね」
「そっか……ありがと。あ、せっかくだし何か買っていくね」
「お嬢ちゃん、可愛い顔して気遣いもできるのね」
シュティーは、埃をかぶった棚から適当な缶詰をひとつ手に取ると、微笑んで支払いを済ませた。
「この街もさ、昔はもう少し明るかったんだけどね……いまじゃ何が起きても驚かないよ」
女の言葉は、街の疲弊そのもののようだった。
シュティーは軽く礼を言い、その場を後にした。
そして帰路へ。
傾いた街灯、ひび割れた歩道。シュティーは、何かを考えるように黙々と歩く。
……が、その背後。
遠く離れた薄暗い廃屋の窓から、彼女の姿を見つめる者がいた。
音もなく、ただ静かに、彼は“観察”を続けていた。
こんなぐだぐだした調査回無限に続くよ!能力バトルは物語の終盤やな




