第9話「繰り返される刃」Part1
静かな午後、穏やかな陽光が差し込む部屋の中で、シュティー・クロードは豪快にソファに寝転がっていた。
手には開きかけた本、足元には寝かせていた猫型のクッション。時間がゆっくりと溶けるような、平和で怠惰な空気。
――その静寂を、乱暴なノックが打ち破った。
「シュティー!暇よね!?今、超暇でしょ!」
ドアをバンバンと叩きながら、怒涛の勢いで入ってきたのは、幼馴染のヴァリーナ・セシルだった。学生服姿の彼女は、いつも通りの強引さでシュティーの休日を破壊してくる。
「いや、今ボクは“のんびりする”っていう大事な予定で忙しいんだけど……」
「ダメよ。超特急の依頼が入ったの。CIDから!しかも直々!」
「CIDから…?」
その名前に、さすがのシュティーも顔を上げる
【中央情報局(Central Intelligence Department)】
通称“CID”。
能力を利用した犯罪――いわゆる〈能犯罪〉を取り締まる、ソルズカ共和国公認の治安組織。
その実態は、正義と恐怖の両面を持つ“秩序の象徴”。
一度マークされたら最後、影の中からでも手を伸ばす無慈悲な存在。
「って、なんでボクたち? うち、マフィアなんだけど」
「それが逆に怪しいのよ!」
ヴァリーナは言いながら部屋の机に封筒を叩きつける。
「アンタ、CIDと何かコネあるんじゃないの?」
「うーん……関係はないけど、なんか色々やらかしても、何故か見逃されることが多い気はするかも」
「でしょ!?なんでなのよ!」
「さあ?よく分からないけど」
シュティーはソファからもぞもぞと起き上がり、封筒を受け取った。
中には、分厚い写真と一枚の報告書。
写真を見た瞬間、シュティーは顔をしかめた。
「うわ……こりゃひどい」
「……何が写ってるの?」
気になったヴァリーナが覗き込む。
そこには――無残な遺体。
全身に刺し傷。規則性も、容赦もない。ただ「殺す」ことだけを目的としたような、冷たく、機械的な暴力の跡。
「もう一枚は……?」
写っていたのは、黒髪の長髪の男。痩せこけた体格に、落ちくぼんだ目。無表情ながら、どこか“凍った空気”をまとった風貌だった。
シュティーは報告書へと視線を移す。
「ふむふむ……。この死体が見つかったのは、一昨日の夜9時ごろ。場所はローレン旧区画の廃棄路地。死因は多発性の刺創による出血多量。致命傷は心臓を貫いた一撃」
「で、その場にいたのがこの男ってわけ?」
「みたいだね。遺体の近くを“目的もなく”彷徨ってたらしい。それで通報された」
「でも、それならCIDが捕まえれば済む話でしょ?なんでわざわざマフィアに依頼するのよ」
シュティーは黙り込む。確かに、状況は奇妙だ。
情報局が、自分たち“非公認の治安組織”に捜査依頼を出してくるなんて――あまりに異例。
「試してるんじゃない?」
ふと、ヴァリーナが呟いた。
「シュティー達って、マフィアとは言っても、この街の治安を陰から支えてるわけじゃない?民間人を守ったり、薬の横流し止めたり。だから本当に“信頼できる存在”なのか、CIDが見極めようとしてるんじゃないかな……たとえ口には出さなくても」
「ふーん……」
シュティーは報告書を読み終え、写真を静かに戻す。
「ま、面白そうではあるね。それに、CIDからの依頼となれば報酬も期待できる。じゃあ行ってくるよ。ちょっと、この男の正体、調べに行ってみようかな」
「本気?」
「もちろん」
「……無理だけはしないでよ?」
「ヴァリーナ。ボクって、ちゃんと加減するタイプじゃん?」
「“やりすぎるタイプ”って意味なら同意する」
軽口を交わしながら、シュティーはジャケットを羽織った。
その目には、いつもの気だるさではなく、わずかに獰猛な光が宿っていた。
外では、どこかの鐘が低く鳴った。
血の匂いが風に混じる気配を、シュティーは確かに感じていた。
結構ぐだぐだ進むし長くなるよ!
そして出し忘れてた舞台や世界世界も出していかねば




