硝煙と影に咲く
この街には、二つの顔がある。
一つは整った街並みに彩られた日常。
もう一つは、
──血と金と力で築かれた、裏の秩序。
名もなき裏通りでは、時に法よりも「能力」がものを言う。
人の常識を越えた“異能”を持つ者たちが、闇に潜みながら世界を動かしている。
それでも、表向きには平穏な日々が流れていた。
力の均衡は保たれていた。
ある一つの“古き家系”が、その均衡を支えていたから。
クロード家──かつてこの街の裏社会を掌握していたマフィア組織。
だがその栄華は、今はもうない。
数年前、先代の死をきっかけに、組織は壊滅した。
残されたのは名ばかりの看板と、わずかな人員だけ。
誰もがその名を過去のものと笑った。
──だが。
その瓦礫の下に、確かに灯は残っていた。
「……今日の依頼は三つ。“青い目の密売人”と、“隠し倉庫の襲撃者”、あと一つは……失踪した猫、ね」
少女の声が静かに部屋に響く。
スーツの男たちが頷く。冗談ではない。猫の依頼にも真剣だ。
この場に軽さはなく、しかし形式張った堅さもない。
ただ、確かな信頼と、鋭い緊張だけが流れていた。
彼女の名は──シュティー・クロード。
年若くして、この崩れた“家”の中心に立つ存在。
誰もが彼女をボスだとは知らない。
それでいい。
そう決めたのは、彼女自身だった。
銃でも金でもなく、“異能”という力が支配するこの世界。
この街では、“能力者”という言葉は珍しくない。
だが、それを“どう使うか”で、その者の価値が問われる。
誰かを守るためか、
誰かを壊すためか。
あるいは、自分すら知らない理由のまま──
力が呼び起こすのは、常に“代償”と“選択”だ。
古き名家の崩れた残骸から、新たな“秩序”を築こうとする者がいる。
一人ではできない。
それでも歩み出す。
瘴気をまとうその手で。
この街の汚れと痛みを、この身に抱えながら。
「いいよ。全部引き受ける。その代わり……この街、壊させないから」
まだ誰も知らない。
少女の手が背負う“穢れ”の意味も、
この街の奥に眠る“真実”も。
それは、物語の中で、少しずつ明かされていくことになる。
えー、初めての一次創作で、なろうでの初投稿になりまーす。渋の方で二次創作齧った程度なので、拙い部分もありますが、是非読んでくれたらなと!