愛を語るには重すぎて。
ほんのり性描写あり。ほんのり人死あり。ヤンデレ注意。近親相姦注意!
人によってはハッピーエンド。バッドエンドかも?
結婚して2年。子が出来ず、義母から催促の嵐。それに対して、盾にも剣にもならない夫。役に立たないわ…
最近、使用人達も仕事を疎かにしてるのよね。原因は、一人の使用人の女。夫のお気に入り。若くて可愛いからと、仕事も出来ない馬鹿女。
私の目に入らなければいいと、屋敷のあちこちで浮気をしているのはとーっくに知ってますが?クソ野郎。他にも数人の浮気相手がいる。全員まとめて慰謝料を貰うんだから!
今じゃ使用人達の間では、許されない恋だとか真実の愛だとか、ふざけんな。
そんなに欲しければくれてやるわ。と言いたい所だけど、政略結婚だもの。離婚は難しい。
子供さえ一人産めば、解放されるのに…あーあ…夫に兄弟がいれば良かったのに。血の繋がりさえあればいいんだもの…ん、血の繋がり?
閃いたわ!一人いるじゃない!
早速手紙で呼び出そう!と執務室へ向かう途中、義両親が来たと侍女に呼び止められた。
あら、タイミング良いわね。いつもなら腹立つことだけど。
遠くから義母の声が聞こえる。今日も元気に喚いてるわ…息子の浮気現場、目撃してくれればいいのに。
二人の待つ部屋へと向かいながら、私はこれからのことを考えた。
馬鹿息子は恐らく種無しよ。浮気相手さえ妊娠してないんだもの。
ということは。種があって、血の繋がりもある…そう、義父に頼めばいいのよ!
義母とは仲が良いとは言えない、空気みたいにいつも隣にいるのよね。
会話しない、目も合わさないんだもの。何の為にこの家に二人で来るのか謎なくらい。仮面夫婦ってやつかしら。私達と同じね。
「お待たせ致しました」
「本当よ!遅いわ!呼ばれたらすぐ来なさいよ!」
出たー!鼓膜破れそうな大声。淑女失格ね。
「子供は?まだなの?」
「ええ。子は授かりものですから…」
「言い訳は結構よ。息子をその気に…」
「お義母様。私は必ずこの家の後継ぎを産みます。ですが、肝心の夫には…種が無い可能性が高いのです」
悲しい顔をして俯いた。全く悲しくもないし、奴への情も無いもの。
「そ、そんなわけないわ!」
「ですが、あちこちで浮気相手を作っても誰も妊娠しておりません」
「そ、そんな…」
「そこでお義母様!お義父様をお借り出来ませんか?」
「は、はぁぁぁぁ!?」
心底驚いてるわね。愛が無い訳ではないのかしら?
義父をちらりと見ると、いつもと変わらず無表情…ん?若干、顔が赤いような…いや、気の所為だわ。
「血の繋がりがもうお義父様しかいません」
いっっっつも『我が家の血を絶やす気ね!』と罵る義母。これなら文句無いでしょ。
「お義父様!子種をください!私、必ず後継ぎを産みます!」
唖然とする義母は放っておこう。
義父の手を掴み、必死になって頼んだ。もう貴方しかいないわ!あの馬鹿息子じゃ、いつまでも産めないもの。
「分かった」
「あ、あなた!?何を言ってるのよ!!」
「お前がいつも言っているだろう。早く後継ぎを作れ、血を絶やすなってな。さて、今日から私もここに住むが…良いのか?」
「は、はい。お願い致します」
あの無表情、無口な鉄仮面な義父が…話してる。よく見たら美丈夫…なのよね。私好み。
彫刻のような美丈夫が私の手を取り、口付けた。
義母の顔が歪んでいく。愛があったとは驚きね。それとも自分の物が嫁なんかに渡るのが気に食わないのかしら。
「あなた!嫁を抱くつもりなの!?」
義母のいつもより激しさを増す怒りが、義父に向けられる。義父の腕を掴み、揺さぶる。
「なら、血を絶やすか?」
「そ、それは…」
「お前がまた子でも作るか?私はもう抱くつもりはないから、愚息に抱かせるか?若いし、お前の欲の発散には丁度いいし、奴もお前ならいくらでも抱けるだろう」
あ、あら…何だかお義父様が怖いわ…何だか陰りが見える気がする。義母は美人だけど、母親を抱くだなんて…想像しただけで、気分が悪くなるわ。
一歩下がろうとした時、ぐっと腰を抱き寄せられた。力強く、振り払うことも出来ない。
逃げられない…私、間違えた…?でも、子供一人は産まないと離婚出来ないし…
この際、お義父様で良いかなんて安易な考えだったことを今、後悔している。
「後で愚息を送ってやる。楽しめ」
義母の顔が凍りつく。青ざめ、震え出した。
私もきっと同じ表情をしているだろう。こんなに恐ろしい人だった?今までまともに会話したことないわ…
義父と共に歩き出す。いや、引きずられるように。
一歩が恐ろしい。このまま、どこへ向かうの?
「お、お義父様…」
「あぁ、すまない。さて、まずはお茶にしよう」
ベッドに引きずり込まれそうな空気だったので、ホッとする。
さっきの憎悪混じりの空気は、何だったのかしら。
使用人にお茶を準備してもらったのだが、何故か使用人が一人残らず部屋を出ていく。
ちょ、ちょっと…いくら義理の親子でも二人きりはマズイとは思わないのかしら…
扉が閉められ、もうどうしようもないので紅茶を飲む。
「愚息のことは、もう気にしなくていい。ただ私との子を産むことだけを考えなさい」
「は、はい…」
何でこんなに乗り気なのかしら。そ、そんなに嫁を抱きたい…?いえ…きっと後継ぎ問題で、仕方なくよね。馬鹿馬鹿、私の馬鹿!失礼よ、そんなこと…
「子供は三人は欲しいな」
新婚の夫婦の会話…?え、お義父様、三人…?やっぱり一人じゃ駄目か。仕方ないわ、自由への道は険しいものね。
「頑張ります!」
その日の夜、私は散々抱き潰された。もう無理、駄目ですと泣きついてもやめてはくれなかった。野獣だわ…
耳元で…可愛い、愛してる等、ずーっと囁かれて私はあっという間に蕩けてしまった。
最後は気絶してしまい、朝になって隣で眠る義父を見て、悲鳴を上げそうになって、手で口を押さえた。
は、裸…!待って…彫刻みたいに綺麗。腹筋も割れてる…年齢より若々しいわ。ちょっとくらい…触ってみようかしら?
そーっと…
「おはよう」
「おっ、おおおおはようございます…っ」
抱き寄せられて、何度も口付けられる。舌を入れられるともう何も考えられなくなる。
夫の閨は苦痛だったのに、不思議だわ。
「これで子供が出来れば…」
「回数が必要だ、毎日頑張るとするか」
「え…!?」
ま、ままままま毎日?毎日抱き潰される?無理無理!
離れなければ!と動いた瞬間、押し倒された。
あぁ、また野獣の目をされてる…食べられてしまう。
あの熱が籠もった瞳は私を動けなくさせる。
「君はもう私のものだ」
「ふふ…また眠ってしまったな」
朝から彼女を犯した後、風呂へ一緒に入り、綺麗なシーツに整えられたベッドへと戻ると、あっという間に彼女は寝てしまった。
まさか彼女を手に入れるチャンスが来るとは。
初めての顔合わせの時、どこにでもいる淑女で、作られた微笑みを見せていた。つまらない女の一人だと思っていた。
だが、蓋を開ければ、全くの別人だった。
妻の心無い言葉にもやんわり反論しつつ、負けるものかと強い意志を見せた。
やんわりと文句を言いつつも、愚息のフォローをしてきた。必要があれば、駆け出していく程に。
お淑やかな妻…にはならず、夫の尻を叩いてやる気を出させ、浮気相手からはしっかりと慰謝料を頂く、金の無駄遣いは許さない、どこまでも強かな人だと気付いた。
気付けば目で追っていた。会う度に張り付けた笑みには『愚息に聞け!』『愚息が悪いんだ!』と心の声が漏れていた気がした。
面白い。こんな女は今までいなかった。
欲しいと願っても、愚息の嫁。ただ義父として会うしかない、つまらない関係性だった。
そこにこんなチャンスが出来るとは。
あぁ、そうだ。妻という名ばかりの女に会いに行くか。
私と彼女が過ごした部屋からかなり離れた部屋に向かう。
彼女が起きる前には戻らなくてはいけない。
とある部屋の前で、家令が私を待っていた。
「今は眠られたのか、静かになりました」
「そうか。夜は楽しめただろうな」
「ええ、媚薬を二人の食事に混ぜましたので。後は部屋から出られないよう鍵をかけました。ご命令通り」
「ふっ。お互い久々に楽しめただろう。本当に…吐き気のする奴らだ」
愚息が15の時、妻…いや、あの女を抱いているのを家令から教えられた。
親子で何を考えているんだと吐き気がした。その時には二人への愛など消えた。
元より、愛ではなく情だったのだろう。
私がいない時を狙い、まるで新婚夫婦のように愛し合っていたと聞かされた時は本当に吐いた。
それからは会話などなくなった。必要最低限の会話しかしなくなった。
愚息も女も私が知っていたとは思わなかったのだろう。いつも通りに話しかけられた時は殴ってしまいそうだった。
そこから私は考えた。この愚息に後継ぎなんて必要ないな、と。
子種を殺してしまえばいいのだ、と。
そして、奴を当主から引きずり降ろしてやろう。
私と彼女の子供が後継ぎだ。
扉を開けて中へと入る。
生臭い臭いに吐き気がした。体液で汚れた二人に思わず、顔をしかめる。
眠る愚息と馬鹿女を叩き起こした。
「久々に楽しめたか?」
「ち、父上…」
「これからも楽しめる。お前達はお似合いだからな」
「あ、あなた!わ、私達は薬を盛られて…」
「結婚前夜も愛し合っていたのに?」
私達が領地に引っ込むと決まってから、こいつらは獣のように抱き合っていた。
何故知っているのかと驚く二人に溜息を吐く。
「違います!父上…」
「もうお前らは必要ない。別邸を用意した。死ぬまで二人で過ごしてもらう。良い話だろう?」
「待って!あなた、お願い…!」
「毎日媚薬漬けにしてやろう。死ぬまで抱き合ってろ」
「旦那様、今、お腹を蹴られましたわ!」
今、私のお腹の中に赤子がいる。義父に頼んで子種を貰うようになってしばらく経って、私は妊娠した。まぁ、毎日抱かれれば…あっという間だったわ。
お腹が膨れて赤子がお腹を蹴ることに喜んでいると、義父…旦那様は嬉しそうにお腹を撫でてくれた。
「君のように逞しい子になりそうだ」
「あら、旦那様だって逞しいでしょう?それに旦那様のような優しい子に育って欲しいわ」
「あぁ。そうなるよう子育てを頑張らねばな」
そっと私に寄り添い、口付けてくれた。
私が初めて旦那様に抱かれた日から、夫と義母の姿が消えた。
まさか、いやでも…と旦那様を疑うように見てしまった。
『後で愚息を送ってやる、楽しめ』という言葉…もしかして、と。
あの夫婦の仲の悪さは…と邪推して、やめた。
知らなくていいのよ。知ったとして、私には何も出来ない。
使用人達もかなり入れ替わった。仕事をきちんとしてくれる有能な人達。あの浮気相手も、そういえばいなくなったわね。
夫の他の浮気相手達に請求していた慰謝料が一括で届いたりと、良いことばかりね。
ただ不安なことはひとつ。
もし、この赤子が夫のようになってしまったら。その時は彼らのように消えてしまうのだろうか。
…大丈夫。旦那様と一緒に優しく賢い子供に育てるの。大丈夫…大丈夫。
力強く旦那様に抱きしめる。
この人からの愛を失えば、私は…子供は…
「旦那様…いつまでも私だけを見ていてください」
「勿論だ。君はもう私のものだ。私も君のものだ」
旦那様の執着が。愛が。
失われないように、私はひたすら愛を乞う。
愚息共が死んだと別邸の使用人達から聞かされた。
毎日薬漬けにしたおかげか、毎日獣のように抱き合っていたそうだ。最期まで。
ようやく片付いた。粗悪品が。
私に必要なのは、彼女とその赤子だけだ。
赤子が当主となる頃には、私の寿命が来るかもしれない。
その時は彼女と死ぬことにする。
きっと死に怯えるだろう彼女の為に、穏やかに死ねる毒を用意しよう。
あぁ、愛とはこんなにも残酷に、そして素晴らしいものなのだ。
愛する者と逝けるのだと想像するだけで、興奮してしまうな。
だが、今は出来るだけ長生きをして彼女と子供と幸せに過ごすことが目標だ。
死ぬその日まで。