プロポーズ
「…アンリエット、俺だ。入って良いか?」
ノックをして、声をかけて返事を待つ。
「ジェイド様?どうぞ」
珍しく緊張して、バクバクの心臓を押さえつける。深呼吸して、ドアノブに手をかけた。
「…アンリエット」
「ジェイド様、どうしたんですか?何かありましたか?」
「ああ、大切な話があるんだ」
ジェイドは、アンリエットの前に跪く。そして、一輪だけの薔薇の花束を差し出した。
「アンリエット、俺と婚約して欲しい」
「え…?」
ジェイドは真っ直ぐにアンリエットを見つめる。アンリエットは、ジェイドの言葉を飲み込むのに時間がかかった。そしてようやくその意味を理解すると、当然ながら驚いた。
「ええ!?」
「ジスランと話したんだ。アンリエットと婚約を結ぶのはどうかと。俺としては、アンリエットとずっと一緒にいられるのなら願ったり叶ったりだ。でも、アンリエットが嫌がるのなら身を引くつもりでもいる。…どうしたい?」
「も、もちろん婚約したいです!」
アンリエットは言い切った。ジェイドは、その反応に少し驚く。
「え、いいのか。俺はジスランと同い年の老いぼれだぞ」
「老いぼれだなんて!ジェイド様は素敵な人です!優しくて頼りになって、私はジェイド様が大好きです!」
「そ、そうか」
ジェイドの頬が僅かに赤らんだのを、アンリエットは気付いた。それに、胸が弾んだ。
「ふふ、ジェイド様。薔薇、ありがとうございます。嬉しいです」
「あ、ああ」
アンリエットが、差し出された薔薇を受け取る。嬉しそうに微笑むアンリエットに、ジェイドは少し見惚れてしまった。
「…アンリエット、本当に俺でいいんだな?」
「わがままを言っていいなら、ジェイド様が良いです!」
「そ、そうか。じゃあ…ジスランに、報告に行こうか」
「え?」
「プロポーズ、成功したぞって」
とうとう真っ赤になってそんなことを言うジェイドに、アンリエットは微笑んだ。
「では、行きましょう」
「おう」
ジェイドが差し出した手を、アンリエットは優しく取った。そして、ジスランの部屋に二人で向かった。




