プロポーズの準備
「アンリエット様…」
「…まあ、そもそも仮定の話だものね!余計な心配だったかしら」
「…アンリエット様、ジェイド様ならおそらくアンリエット様がそばにいてくれるだけで充分だとおっしゃると思いますよ」
アンリエットはジャンヌのその言葉に目を丸くする。
「え?」
「ジェイド様は、アンリエット様を大切に思っていらっしゃいますから」
「そうかしら…?」
「ええ」
「ふふ。なら万が一にもそんな縁談があっても、安心ね」
ジャンヌは穏やかなアンリエットの顔を見て、これならばこの縁談はいけると踏んだ。
「アンリエット様、私少しお手洗いに…」
「あ、ええ。いってらっしゃい」
ジャンヌは、ジスランへアンリエットの反応を報告しに行った。
「…というわけで、アンリエット様はおそらくジェイド様と婚約を結ぶことには抵抗はありません」
「ジャンヌ、ありがとう。なら、早速…」
ジスランから目を向けられて、ジェイドは困ったように笑う。
「はは。…本当に、本気なんだな」
「アンほど良い相手はいないぞ。泣いて喜べ」
「そうだな、有り難い話だ。だがなぁ…年齢差とか本当に大丈夫なのか?俺みたいな老いぼれでいいのか?」
「何言ってる、見た目だけなら若いくせに。しかも魔導師界ではまだまだ若造だろうがよ」
「うるせぇ」
ジェイドは自分の黒髪を撫でて、そして。
「…わかった。なら、俺も覚悟を決める」
「よし」
「ただし、俺からアンリエットに話をさせてくれ」
「もちろんだ、今すぐ行ってこい!」
「馬鹿野郎、準備があるんだよちょっと待ってろ!」
ジェイドはそう言うと転移魔法を扱う魔道具を発動した。
「逃げたか」
「いえ、準備に行かれたのでしょう」
「準備ねぇ…」
ジスランとジャンヌは、ジェイドの帰りを待つことにした。
「さて、プロポーズといえばやはり薔薇の花だな。だがあまり仰々しいのも…一輪の薔薇が良いか。花言葉は確か…私には貴女だけ。俺からアンリエットに捧げるにはぴったりだな」
花屋に向かうジェイド。感じの良い店員に出迎えられ、注文をする。
「プロポーズをしようと思うんだ。一輪、とびきり素敵な薔薇を用意して欲しい」
「まあ!お待ちくださいね」
店にある薔薇の中でもとっておきのものを用意する店員に、ジェイドは微笑んだ。
「ありがとう、美しい薔薇だな。これならば彼女も喜ぶだろう」
「ええ、丁寧に包みますね」
「よろしく」
可愛らしく包まれた薔薇を大切に抱えて、ジェイドはアンリエットの部屋の前へ転移した。




