ジャンヌの質問
ジスランから、ジェイドと婚約するとしたら嬉しいかアンリエットに聞いて欲しいと頼まれたジャンヌ。
ジャンヌとしてはそれを言われた時点でそういうことかと察しはついた。
ジャンヌとしては、ジェイドならばアンリエットを幸せにしてくれるだろうと思っている。
それは、ただの勘もあるが…今までのジェイドのアンリエットへの態度もあってのことだ。
ジェイドはずっとアンリエットを大切にしていた。それはジャンヌから見てもよく分かる。そのジェイドの感情の正体など知らないが、アンリエットを幸せにしてくれるならばそれでいい。
「ですから、良いお返事が聞きたいものですね」
ジェイドとの婚約をアンリエットが嫌がるようならば、多分アンリエットは誰とくっつくこともないだろう。
まあ、修道院に二人で入るのも悪くはないが。
それはそれとして、やっぱり幸せな結婚もして欲しいものだ。
「せめて、嫌がるそぶりはないといいのですが」
そして、ジャンヌは覚悟を決める。
「聞きに行きましょう」
「アンリエット様、お待たせしました」
「ジャンヌ、おかえりなさい。お父様はなんて?」
「いえ、その…今度、みんなでまた幻のケーキシリーズを食べたいものだとお話していて…アンリエット様にはどの幻のケーキシリーズがいいかと相談を受けていまして」
ジャンヌは嘘が下手だ。しかしアンリエットは、それに普通に騙されていた。
「そうなのね!楽しみにしてるわ!」
「クリスマスケーキにお出ししますね」
「ありがとう!お父様もジャンヌも大好き!」
あとで旦那様にこの嘘を報告しなければとジャンヌはこっそり思った。
「それでその、アンリエット様」
「なあに?」
「もし万が一、ジェイド様がアンリエット様の婚約者になったりしたら…どう思われますか?」
きょとんしたアンリエット。その後満面の笑みを浮かべた。
「もちろん大歓迎よ!ジェイド様は天才魔導師様ですもの!エステル公爵家にとって良いお婿さんになってくださるわ!」
そんなことを言うアンリエットに、それは違うとジャンヌは首を振る。
「エステル公爵家のための結婚としての感想ではなく、アンリエット様のご意思を聞きたいのです」
「私の意思…?」
アンリエットは少し迷ってから口を開く。
「ジェイド様は実年齢よりもとても若く見えるし、すごくかっこいいわ。そして天才で、誰より強いし頼りになる。お話もとても面白くて、素敵な方よ。きっと、なんのしがらみもなく結婚できるなら最高のお相手ね」
「そうですか」
「でも、ジェイド様はきっと私の素晴らしいパートナーとなってくださるけど…私は、ジェイド様に何かできることがあるのかしら」
そう言って、アンリエットは憂いを帯びた目をジャンヌに向けた。




