アンリエットの価値
ウラリー王国筆頭公爵家、エステル家。権力、地位、財力全てを持ち合わせており、広大な土地を治める。領内も優れた統治で年々豊かになり、領民からの信頼も厚い。また有り余る財力を使い国に尽くす姿勢から、領内外問わず貴族と平民両方から支持されている。教会にも多額の寄付をしていることから、その信仰の篤さを尊ぶ教会関係者も多い。もちろん王室も、忠義を尽くし国を豊かにするエステル家に信頼を置いて優遇していた。
となれば当然、エステル公爵家と王室の結びつきも強い。今は亡きアンリエットの母、リナ・ジュリエット・エステルは元は王室の第三王女であった。
また、エステル公爵家と教会の結びつきも強い。アンリエットの父ジスランの祖母は、当時の教会の聖王の孫であった。
そして、そのエステル公爵家には今アンリエット一人しか子供がいない。
喉から手が出るほど、王室も教会もアンリエットを求めている。
「それでも未だにアンリエットに婚約者がいないのは、結構色々危ないと思うがなぁ」
「うるさい、ジェイドには分からん」
「可愛い可愛い愛娘を嫁に出したくないなら、婿を取ればいいだろう」
「アンに相応しい男でないと譲らん」
「あーあー、そうやって箱入りにすればいいってものでもないだろうに」
ジェイドはジスランをからかって遊びつつも、実際のところアンリエットを酷く心配していた。
そもそも、父や使用人、護衛以外の男をほとんど知らなかった箱入りお嬢様って時点で危ない。
それでありながら、あの愛らしさだ。そして、本人にすごく『価値』もある。天使であり、エステル公爵家の一人娘であり、本当に誰もが醜く手を伸ばして望むような少女なのだ。
「いっそ俺が婿にでも入ってやろうか?俺が婚約者になれば、迂闊に手を出してくる輩はいないだろ」
冗談めかしてジェイドがそう言った。だがまあ、ジェイド的には見た目は若いとはいえ『親である私と同い年のこんなおっさんに、アンリエットはやらん』と返されると思っていたのだが。
「…アリだな」
「は?」
「お前、アンと婚約しないか」
「はぁ!?おま、冗談やめろよ!」
「冗談じゃない、本気だ」
ジェイドは、とうとうアンリエットが可愛すぎて頭が沸いたかとジスランを見つめるしか出来なかった。




