子龍と出会う
子龍が泣けば、みんないつだってご飯になってくれた。
だから、これは初めてのことだった。
みんなで帰ろうとしてしまう。せっかく泣いて呼んだのに。
それは許せない。
だから、姿を見せてしまうことに決めた。
ジェイドたちがアンリエットを囲み、声のした方と逆側に突き進んでしばらく。まだ出口が見えない上に、霧がまた発生した。しかも濃くなる一方だ。
ジェイドが霧をまた魔法で祓う。しかし、霧の先に見えたものは。
「…嘘だろ」
ホワイトドラゴンの幼体であった。
『寂しいよ、お母さんどこ?』
『お腹が空いたよ』
『食べてもいい?』
無邪気な声でそんなことを言う子龍。ジェイドはアンリエットを後ろに隠す。
「ダメに決まってるだろ」
『なんで?』
「食べられた方は死ぬんだぞ」
子龍は首をかしげる。
『でも、お腹空いたよ』
「…なあ、アンリエット。少し目を瞑って耳を塞いでいてくれるか?」
「は、はい」
アンリエットが目を瞑り耳を塞ぐ。すると、ジェイドの黄金の目が光を放った。
「…悪いが、アンリエットを危険に晒すわけにはいかないんだ」
ジェイドが複数の魔道具を同時に展開した。
鎖型の魔道具で子龍を縛り上げ、槍型の魔道具で身体の至る所を突き刺した。
『痛い!痛いよ!!!』
「特製の槍だからな。ドラゴンすら貫けるとは、さすが俺の発明」
『離して!』
「…今楽にしてやる」
もう一つ。同時に発動してあった、箱型の魔道具が効力を発揮した。
毒が、子龍の全身に回る。
『あれ?眠い…』
「そのまま寝ておけ」
『うん…』
幼い子龍は、即効性の高い毒で命を落とした。
「…これで、北の果ての森での行方不明は無くなるだろうな」
そう言ったジェイドは少し悲しそうに子龍を見た。
「…」
ジェイドは子龍のために、そっと祈りを捧げる。そして、鳥型の魔道具を使って今度こそ北の果ての森を抜け出した。
「アンリエット、もう目を開けていいぞ」
アンリエットの耳を塞ぐ手を離させて、ジェイドは優しくそう言った。
アンリエットは、何が起きていたか知らないままに全部解決してしまった。
「あの、ここは?」
「北の果ての森のすぐ近くだ。ここからなら転移魔法も使えるから、屋敷に帰ろう」
「はい」
転移魔法でアンリエットが屋敷に帰ると、既に深夜を回っていた。
色々聞きたいことはあったが、全員聞かれたくなさそうなのでアンリエットは黙って受け入れてベッドで眠ることにした。




