奴隷の少年
「ショッピング、ですか」
「ええ、ジャンヌと一緒に!ダメかしら?」
「いえ…ですが、商人をいつものように招けばよろしいのでは?」
「もう!せっかく外に出られるようになったのよ?それじゃあつまらないわ!」
アンリエットの言い分に、ジャンヌはなるほどと頷く。
「それでは、護衛に声をかけて参ります。少々お待ちください」
「お願いね」
ということで、アンリエットはショッピングを楽しむことになった。
「色々買ってしまったわ!とっても楽しかった!」
アンリエットは、ジャンヌと護衛数人をお供に買い物をエンジョイした。
護衛が三人ほど荷物持ちにされている。ジャンヌは幸い、日傘担当なので荷物持ちはせずに済んだ。
残る数人の護衛はちゃんと護衛しているのでまあ、問題はないが。
「抱き枕にちょうどいいぬいぐるみに、人をダメにするビーズクッション、そして可愛いアクセサリー。満足だわ」
「それは良かったです」
ジャンヌはアンリエットの嬉しそうな顔に、思わず少し微笑む。そんなジャンヌを見て、アンリエットはさらに嬉しそうな顔をした。
「じゃあ、今日は帰りましょうか」
「はい、アンリエット様」
その時だった。
「このガキがっ!!!」
「なっ…なに?」
乱暴な声、激しい音。アンリエットの目は、少年をボコボコに殴る男を捉えた。
「じゃ、ジャンヌ、あれはなに…?」
怯えたアンリエットに、ジャンヌは視界を塞ぐように立つ。
「アンリエット様は知らなくて良い世界です。さあ、馬車に乗って帰りましょう」
しかし、アンリエットは動かない。怯えて動けないのかと、ジャンヌはアンリエットに手を貸して連れて行こうとしたのだが。
「ジャンヌ…あの子を、助けて…?」
不安で揺らぐ瞳。しかし、そこには確かな光。
そんな風に言われては、ジャンヌは動かないわけにいかなかった。
「騎士様。日傘担当を代わってくださいますか」
「はい」
ジャンヌは護衛の一人に日傘を渡し、アンリエットを託して少年の方に行った。
「弱い者イジメは、みっともないですよ」
「ああん!?このガキがまともに強盗もこなせないからこうなるんじゃ!!」
「そういうことなら裏通りでやってください。うちのお嬢様が怯えてるんですよ。ほら、金はやりますからその奴隷の所有権を寄越しなさい」
ちなみに、ジャンヌはアンリエットの侍女としてそれなりの額を稼いでいる。そのため、普段からそれなりの額を持ち歩いてもいる。か弱い子供の奴隷くらいなら、サクッと買えるのだ。
…それだけの給金を侍女一人に払えるほど、エステル家は裕福だった。
そしてジャンヌの提示した額に目を丸くした男は、奴隷契約書をジャンヌに渡して少年の所有権はジャンヌに移った。
「アンリエット様。これでよろしかったですか?」
「ありがとう、ジャンヌ」
男とジャンヌの詳しいやり取りは知らないアンリエットだが、少年が助かったのはわかりホッとした。
「ありがとうござい…ます」
奴隷の少年は頭を下げた。アンリエットは優しく微笑む。
「いいのよ、気にしないで。ジャンヌ、この子はどうしてあげたらいいのかしら?」
「…孤児院に連れて行くか、それでなければ…捨て置くか」
「え!?す、捨て置くのはダメよ!?」
「ならばやはり、孤児院に連れて行きましょう」
「わかったわ。…僕もそれでいいかしら?」
少年はアンリエットに問われて、こくりと頷いた。