日常に戻る
星見教とのいざこざが終わり一週間。アンリエットは再び日常に戻っていた。
「そう言えば、この間のお茶会でルシア様から美味しいケーキをいただいたでしょう?」
「はい、アンリエット様」
「あれをウチでも食べられるように出来ないかしら」
アンリエットの無邪気な提案に、ジャンヌは頷いた。
「良いお考えですね。では、味の感想などをいただいてもよろしいでしょうか?料理長の方に伝えて、再現をお願いしてみます」
「まあ!ジャンヌ、ありがとう!」
「いえいえ」
「…アンリエット様、お待たせ致しました。料理長に再現を頼んだケーキの第一号です」
「ありがとう、いただきます!」
ぱくりと一口食べたアンリエットは、すごく笑顔になる。
「美味しい!この間食べたものとはちょっと違うけれど、こっちも素敵だわ!」
「…そうですか。他にも色々試してみますか?」
「いいの?」
「ええ。また明日再現してもらいましょう」
「ふふ、楽しみね!」
アンリエットはケーキに舌鼓をうちつつ、再現元のケーキとこのケーキの違いをジャンヌに伝えた。
それを元に、料理長はさらにケーキの再現度をあげていく。
再現を目指して五日目には、完璧な再現度のケーキが出来上がっていた。
「やっぱりうちのシェフはとても素晴らしいわ!」
「恐縮でございます」
「いつもありがとう。これからもよろしくね」
「はい!」
アンリエットから褒められた料理長は、あとでこっそり隠れて泣いていた。アンリエットからの労いがとても嬉しかったのだ。
そうとも知らないアンリエットは、今日も満足気に大好きなケーキを堪能して頬を緩めていた。




