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エステル家のお姫様は、今日も大切に愛される。  作者: 下菊みこと


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夢の話

「アンリエット!何があった!?」


「ジェイド様!」


ジェイドはジャンヌに緊急事態だと呼び出され、いち早くアンリエットの元に駆けつけた。


アンリエットはジェイドに抱きつく。ジェイドはそんなアンリエットをしっかりと受け止めた。


「ジェイド様!ジェイド様…」


「大丈夫。大丈夫だ、アンリエット。俺がついてる。絶対に守る、約束する。お前も、お前の周りの大切なものも、全部だ」


ジェイドは事情がわからないなりに、アンリエットを慰める。


「ジェイド様、ナハト様が…!」


「うん、全部話してくれ」


ジェイドはアンリエットを抱きしめたまま、話を聞いた。


アンリエットの話は、ジェイドやジャンヌ、ルーヴルナやルロワには衝撃的な話だった。


そして、アンリエットの怯え方を見るにただの夢と片付けることはできない。


「…そうか。怖かったな、もう大丈夫だ。ナハトたちは俺が守ってやる」


「でも…」


「大丈夫。もしただの夢で、杞憂でも。それならそれでマシだろう?」


こくりと頷くアンリエットに、ジェイドは優しく微笑んだ。


「心配するな、俺は強いからな。魔族にだって負けるつもりはない」


ジェイドの力強い言葉を、アンリエットは信じることができた。


「ジェイド様…」


「アンリエットはここにいてくれ。俺は魔道具でナハトたちの居場所を探る。魔族や星見教の襲撃がないか、見張っておくから…」


「い、嫌です!」


「アンリエット?」


「私も連れて行ってください!」


アンリエットが涙目で訴える。ジェイドはどうしたものかと悩む。


「ダメだ、アンリエット。もしただの夢で済まないなら、危険すぎる」


「…それは。でも、でも大切なお友達なんです!どうしても…どうしてもそばに居たい!」


「アンリエット…」


ジェイドはジャンヌを見る。ジャンヌも困った顔をしていた。


「お願いします、ジェイド様…!」


「アンリエット…」


「製作者様、ご主人様は私とルロワさんで守ります!だから連れて行って差し上げてください!」


「ルーヴルナ、そうは言うけど」


「ぴゃっ!」


ルーヴルナとルロワはジェイドを説得する。ジェイドとしては可愛いアンリエットを危ない目に遭わせたくはない。しかしアンリエットが涙目で、今にも泣きそうな顔で連れて行ってと懇願してくるのだ。


ジェイドはもう降参した。


「…ジャンヌ」


「はい」


「俺が作った魔道具の中でも、トップクラスの結界を張れる魔道具を託す。アンリエットたちと自分を、それを使って守ってくれ」


そういってジャンヌに魔道具を手渡すジェイド。ジャンヌはため息を吐いたが、結局受け取ってジェイドに頷いた。


「え、ジェイド様は?」


「俺は別の魔道具もあるからな。というか、強いから結界なんてお守り程度のものだ。無くても大丈夫だ。それよりアンリエットを守るほうが優先。そうだろ?」


さも当たり前というようにそう言ったジェイド。


「さて、じゃあさっそくナハトたちがいる場所…集落が何処にあるか探知するぜ」


そう言って魔道具を取り出したジェイド。ジェイドが魔道具を起動して、いつのまに採取したのかナハトの毛髪をセットすれば魔道具は地図に印をつけた。


「…ここだな。さあ、行こうか」


「はい!」


ジェイドがアンリエットの手を取る。そして、転移魔法を使うための魔道具を起動した。

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