ルロワ
アンリエットは、ともかくホワイトタイガーの赤ん坊に名前をつけることにした。
「どんな名前にしようかしら」
「アンが名前をつけてあげれば、どんな名前でもきっと喜ぶよ」
「ううん…そう言われると迷ってしまいます…」
アンリエットは書庫から、命名図鑑をジャンヌに持ってきてもらう。
「お待たせしました。命名図鑑です」
「ありがとう、ジャンヌ」
「いえいえ」
アンリエットはしばらく命名図鑑と睨めっこをした。
そしておよそ十分ほど悩み、ようやく顔を上げた。
「ルロワ。ルロワにするわ」
「ほう、良い名前だね。よかったね、ルロワ」
「さすがはアンリエット様です。センス抜群だと思います」
ということで、ホワイトタイガーの赤ん坊はルロワという名前に決まった。
「ねえ、お父様。使い魔にもご飯はあげていいのよね?」
「そうだね。食べたものは魔力に変換され貯蓄されるから、いくらでもあげていいよ。でも、あげなくてもアンの魔力が譲渡されるから死ぬことはないけど」
「せっかくならご飯やお水もあげたいわ!」
「ならばそうするといい。損をするものでもないし」
アンリエットは早速、ジャンヌにお願いして猫用のミルクを哺乳瓶に用意して貰う。
アンリエットが腕の中のルロワに哺乳瓶でミルクを与えれば、ちゅぱちゅぱと愛らしく飲む様子が見られた。
「…可愛い!」
アンリエットのその様子にご満悦だ。一方でジスランとジャンヌもそんなアンリエットに癒されていた。
「ふふ、全部飲めたわね。偉いわ」
優しくルロワを労わるアンリエット。そんなアンリエットに、ルロワは甘えるように可愛らしい鳴き声を出した。
「まあ!声も可愛らしいわ!」
そんなルロワにアンリエットはさらに喜び少し意識が飛びそうになったので、一旦休憩ということでジャンヌが交代してルロワの世話をした。
「ふふ、最近良いことばかり」
日傘をもらって外に出られるようになってから、なんだかんだで楽しいことが多かった。
「これもジェイド様のおかげかしら?」
アンリエットは、遠目でルロワとジャンヌの様子を見つつそんなことを言った。
「お父様にもジェイド様にも、ジャンヌ達使用人にも感謝しなくちゃね」
そんな健気なアンリエットにルロワは余程懐いたのか、ピーピーと鳴いてアンリエットを呼んでいた。アンリエットもそれに気付いてルロワを再び撫でに行く。




