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幕間 修行の日々①「洗濯物事件」

幕間は本編とは温度差があるため、ずっと最高難易度の鬼畜仕様を楽しみたい方は読み飛ばして下さいませ。

「弟子2号よ、たまった衣服の洗濯をしておけ」


 地べたに這いつくばる俺に師匠は容赦なく言った。

 戦闘訓練という名のただの蹂躙劇で俺の肉体は限界だ。もう1歩も動けない。

 それなのに洗濯をしろと?


「あぁ。洗濯機はないぞ。全てを己の魔術のみで行え。洗うところから、しわ伸ばしまで全てをな。これも修行だ」


 俺の目の前に一冊の本が置かれた。

 雑に置かれたので、栞が挟まれたページが開かれる。そこに書かれているのは洗濯洗剤の作り方。

 洗剤の調合も自分でしろ、ということか。

 加えて、水洗いも、乾かすのも、アイロンがけも。全部を魔術でやれと、そう言っているようだ。

 この世界では「地球」からの転生者たちの知識を元に、「地球」の家電製品に似た「魔道具」が普及している。必要な魔力を流し込むか、魔力が結晶化した「魔石」を嵌め込むことで起動する便利な道具だ。

 それを使わないで全部魔術でやれって?

 鬼か?あ、魔女か。

 そりゃ、良い修行にはなると思うよ?

 旅には大きな洗濯機を持って行けないし、旅の途中の洗濯の練習になる。

 また、洗う際の「水の魔術」、乾かす際の「熱の魔術」「風の魔術」、アイロンがけに至っては「重力の魔術」「熱の魔術」「水の魔術」が必要だ。

 けど、だからってなぁ…。

 まぁ、やるしかないんだけどさぁ…。



◇◇◇



「よし、これで洗剤の調合は終わりだな」


 洗剤、というよりは洗濯用石鹸と言うべきだろうけど。

 地球のソレとは原料も製法もまるで異なるから、厳密には「石鹸」でも無いのか。製作工程に魔術使ってるし。

 ともかく、完成だ。


「次に衣服を色分けして…」


 いくら魔術で洗うといっても色分けは大事だ。様々な色の衣服をいっぺんに洗えば大変なことになる。

 一枚一枚衣服を手に取って色分けしていく。

 俺とウアの衣服なんて着の身着のままの一着だけだったし、今の俺は素っ裸で洗濯中である。バルバルが気を使って大きな葉っぱを届けてくれたので、それを外套のように纏っているけど、それだけだ。

 ちなみに、ウアは師匠の服を貸してもらって着ている。師匠は小柄だし、ちょっとブカブカダけど着れたようだ。流石に女性の服を着るわけにはいかないので俺は断った。

 後ほど、俺とウアの分の服を師匠が作ってくれるとのこと。有難い話だ。

 最初の一着だけで、あとは自分で作れとのことらしいけどね。そこまで甘えちゃ駄目だよな。


「…あれ?」


 色々と取り留めの無いことを考えながら着実に衣服を分けていくと、ある衣服を手に取ることになった。

 淡い紫色のソレは…


「師匠の下着…」

 

 現在の俺は10歳の健全なボーイである。子どもをつくれるようになるアレも既に開通済み。思春期も丁度スタートダッシュを決めたくらいだ。

 前世はかなりの早死にだったし、そもそも記憶があるだけで意識は連続してない。

 思い出そうとすれば思い出せるけど、「前世(地球)の俺」と「今の俺」は完全な別物という認識だ。

 故に、俺のそういう感情は全盛期というわけで。

 何が言いたいのかと言うと、健全な思春期男子には凄まじく刺激が強いものだということだ。


「待て待て待て待て。落ち着け。女性の下着を無断でどうこうなど駄目に決まってる。他の服と同じく無心で洗濯をするだけだ」


 だが、次回もこうなるかは分からない。

 師匠が下着を異性に洗わせているという事態に気付いて、ウアに任せてしまうことは十分に考えられる。

 魔女の下着が手元にあるのは今だけかもしれないのだ。


「…………いや、やっぱ駄目だろ」


 流石に駄目だな。うん。

 理性を総動員して、寸前で踏みとどまる。

 恐るべしは思春期男子の欲求。油断も隙も無い。

 さて、この下着の色を考えると色分けは…


「あーーーー!!兄ちゃん何やってんの!」


 やべー。最悪のタイミングで妹登場である。


「待て、ウア。俺は踏みとどまったんだ。思春期男子の欲求と言う恐ろしい敵に勝利してみせた。褒められこそすれ、非難される謂われは…」

「良く分かんないけど、ジッと見つめてたよね?」

「…はい」

「兄ちゃんの変態!えっち!すけべ!」


 何もしてないけど、思考の片隅に浮かんでしまった事は事実である。

 言い訳など見苦しいことはしない。妹の言葉を真摯に受け止めよう。

 どんな言葉でも黙って受け止める所存――


「兄ちゃんは私の下着を見つめてれば良いの!」

「いや、その理屈はおかしい」


 ともかく、その一件以来、女物の服の洗濯はウアの担当になった。

 ちなみに、当の師匠の反応はというと。


「下着など唯の布だろう。何に使おうが我は一向に構わんが」


 流石にそれは女を捨て過ぎだと思いますよ、師匠…。


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