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3話 矛盾

◇◇◇



「それは創世神話、ですか?」

「あぁ。ノインの村で買ってきた本だ。レウワルツは始教会。8柱の神々について知らない事が書かれているかも、と思ってな」


 俺が生まれ育ったオーロングラーデは神聖ヒルア帝国。8柱の神々を信仰しているが、それ故に、研究が宗教的タブーとなってしまっている側面が存在する。

 レウワルツで流通している本ならば、新たな知識が得られるかもと考えたのだ。


「何か気になる事でも?」

「……いや、今更ながらに疑問に思ったんだ」


 というのも。


「創造神は「創造魔法」を使えた。しかし、それは「無」ではない「有」を生み出すことしか出来なかった。これは良いな?」

「えぇ。常識ですわ」

「故に。自らの似姿として8柱の神々を生み出し、神々は「交換魔法」によって「有」を法則や物質、命といったモノへと変えた。これは?」

「そちらも当然」


 そうだ。どちらも常識だ。

 しかし――


「これってオカシクないか?」

「……オカシイですか?」


 ――この話は、致命的な矛盾を抱えている。


「何故、「有」しか生み出せなかった創造神から「8柱の神々」なんてモノが生まれる?コイツ等は何だ……?」


 姿形があって、「交換魔法」という具体的な力が使えて。個々の「名前」だけは何処にも伝わっていない存在。

 そんな存在を生み出せるのならば、初めから創造神は自分の力で何かを生み出せたのではないのか。


「確かに……言われてみればその通りですわ。しかし、神話とは得てして、そういうモノではありませんか?」

「まぁ、それはそうかもしれないけどな……」


 クリスの言う通りではある。

 神話なんて大抵は矛盾やら破綻の塊。時代と共に、捏造・別解釈・修正・統合などなど、あらゆる変化に晒されていく代物だ。

 そこに整合性を求める方がオカシイかもしれない。

 だが、何かが引っ掛かる。少なくとも、思考を放棄して捨て去って良い疑問ではない気がする。


「8柱の神々と言えば……それらは既に世界から去ったのでしたよね?」

「あぁ。後の事を「ヒト」の選択に委ね、神々は姿を消したらしい。そこに関しては「教会」も「始教会」も同じことを伝えている」


 確か、記述は。

 『交換の奇跡にて創世は終わる。

  8神、聖女との対話を経て。

  後の世を人間の選択に委ね賜う。』

 ……だったかな。

 恐らくは異種族も含めた「ヒトの選択に委ねる」だったのを、人間たちが都合よく変えてしまったのだと思うが。

 ちなみに。ここで言う「聖女」とは、最初の聖女にしてゼクエス教開祖「ヒルアーゼ」のことである。


「既に消え去った存在に信仰を捧げ続けるなんて……理解できませんわ」

「そう言うな。信仰があればこそ救われる心もある」

「妾は見知らぬ「神」より、貴方を信仰致します」

「普通の奴は、信仰対象に剣を向けたりしないけどな。……っと時間だな。俺は一度寝る。また交代の時間になったら起こしてくれ」

「妾は眠らないのですから、夜の見張りは全部任せて下さっても構いませんのに……」

「何度も言ってるが、夜の見張り自体が訓練でもある。闇に眼を慣らし、あらゆる感覚を研ぎ澄ませるためのな」


 当初は、睡眠不要のクリスが見張りを全て引き受けると言い張った。しかし、それは断固として却下したのだ。

 既定の時間になったら、俺は起きてクリスと共に見張りをする。そう取り決めた。

 訓練というのも本当だが、流石に女性に毎日の見張りを押し付けて眠り続けるのは鬼畜過ぎると思ったからだったりする。



◇◇◇



 ――こうして。今日も夜が明けていく。

 数時間前に西の空に沈んだ太陽が、東の空から昇ってくる。

 本来であれば。

 それは絶対的な当たり前。逆になる事などあり得ない法則。

 繰り返される自然の営みにより。

 今日も1日は始まっていく。



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