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誰が為の生  作者: 早乙女なな
2/14

生きながらの死 2

残念ですが、もって数年かと思われます。

そう言われた時の衝撃は、今でも鮮明で、忘れることは出来ない。

それでも、だいぶこの感情には慣れてきた。


"死ぬまで静かに生きる。"

それが、私が自分に課した目標だった。

通っていた大学も中退し、就職活動も諦めた。

この先、生きることはないとわかっているのに、なぜ学ぶ必要があるだろう。


蓄積された学力も、死んでしまえばなかったことになる。

そんなことにお金を使いたくなくて、すぐに退学届けを出した。

病院の先生にも、治療だけではどうにもならないと言われた。


手術という方法もあると言われたけれど、私にはそれだけのお金がなかった。だから断った。

二十歳を過ぎて間もないのに、既に余生を楽しむ余裕さえ見せていた自分に、少し驚いてもいた。

それでも、手術は受けないと言ったのだが。


「せめて、経過観察でもしに来てよ」

と、担当の先生に言われてしまった。

「でも私、長く生きなくてもいいです」

「そんなこと言わないで。僕とお話に来るって感じでさ、どうよ」


どうよ、と言われても。そもそも人と会話する気力すら残っていないのに。

「最近来ないなあって思ったらあの世に行ってた、なんてことあるんだよ。君のそんな知らせ、聞きたくないから」

「はぁ」


もはや強制的らしい。そこまでしないと来ないと思われているのだろう。大正解だ。

「とりあえず、週一くらいで考えてみよう。いい?」

「え、週一もですか?」

私が目を丸くすると、先生はニヤッと笑い

「冗談だよ」

と一言加えた。


全く、なぜ彼が医者になれたか不思議でならない。

「月一くらいでいいよ。月一で来れるかな?」

先生に問いかけられて、私は小さくうなずく。

よし。と言って、先生は満足そうな顔を浮かべた。


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