生きながらの死 2
残念ですが、もって数年かと思われます。
そう言われた時の衝撃は、今でも鮮明で、忘れることは出来ない。
それでも、だいぶこの感情には慣れてきた。
"死ぬまで静かに生きる。"
それが、私が自分に課した目標だった。
通っていた大学も中退し、就職活動も諦めた。
この先、生きることはないとわかっているのに、なぜ学ぶ必要があるだろう。
蓄積された学力も、死んでしまえばなかったことになる。
そんなことにお金を使いたくなくて、すぐに退学届けを出した。
病院の先生にも、治療だけではどうにもならないと言われた。
手術という方法もあると言われたけれど、私にはそれだけのお金がなかった。だから断った。
二十歳を過ぎて間もないのに、既に余生を楽しむ余裕さえ見せていた自分に、少し驚いてもいた。
それでも、手術は受けないと言ったのだが。
「せめて、経過観察でもしに来てよ」
と、担当の先生に言われてしまった。
「でも私、長く生きなくてもいいです」
「そんなこと言わないで。僕とお話に来るって感じでさ、どうよ」
どうよ、と言われても。そもそも人と会話する気力すら残っていないのに。
「最近来ないなあって思ったらあの世に行ってた、なんてことあるんだよ。君のそんな知らせ、聞きたくないから」
「はぁ」
もはや強制的らしい。そこまでしないと来ないと思われているのだろう。大正解だ。
「とりあえず、週一くらいで考えてみよう。いい?」
「え、週一もですか?」
私が目を丸くすると、先生はニヤッと笑い
「冗談だよ」
と一言加えた。
全く、なぜ彼が医者になれたか不思議でならない。
「月一くらいでいいよ。月一で来れるかな?」
先生に問いかけられて、私は小さくうなずく。
よし。と言って、先生は満足そうな顔を浮かべた。