71話 最高のショー
新作
『追放から始まる吸血ライフ!~剣も支援も全てが中途半端なコウモリヤローとクビにされたが、実際は底の見えない神スキルだった件~』
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首無し騎士はどこから声を発しているのか、不気味な声が辺りに響く。
「おれさまにこの形態を取らせたんだ……。すぐに死んでくれるなよ?」
騎士は左右の手で手刀を形作ると身体の前で交差させ、その場で勢いよく腕を振り下ろすと腕全体が刃物のような形へと変化。
両腕の刃をこすり合わせると、まるで金属同士をこすり合わせたかのような不快な音を鳴らした。
「身体の形を自在に変える上に、金属並みの硬度……? まるで金属形状変化魔液みたいだね」
「あんなチンケなカスどもと一緒にするんじゃねぇよ。おれさまは頂点、皇帝金属形状変化魔液だ」
首無し騎士――エンペラーメタルスライムの言葉を聞いて、ようやく全てを理解した一同。
ロイトはエンペラーメタルスライムに身体へと侵入され、なす術なく内側から侵食された上に亡骸を利用されていたのだと。
「苦しかっただろうに……」
ロイトが襲われたであろうその時を想像し、顔をしかめるドロテア。
すると、エンペラーメタルスライムはあろうことかロイトの顔にそっくりな銀色の頭部を作り出し、語り始める。
「クク、アレは最高のショーだったなぁ。のたうち回るコイツを、体内からゆーーっくりと時間をかけて侵食してやったんだ。最初は聴覚を奪い、お次は嗅覚といった具合に、徐々に身体のコントロールを失わせていきながら語りかけてやるのさ。初めはなんとかおれさまを追い出そうと必死だったコイツも、次第に『助けてください』とか懇願するようになってよぉ。最後には『家族だけは、家族だけはどうか』って泣きながらわめいてたぜ??」
そのとき見た表情を再現するかのように、次々にロイトの顔の表情を変えながら語り終えたエンペラーメタルスライムは、最後にまるでこの世の全てを恨むかのような鬼の形相をした表情を形作った。
「あんたの無念は……あたしが必ず晴らしてやるからねッ!!」
我慢しきれなくなったといった様子のドロテアは、怒気を多分に孕んだ瞳でエンペラーメタルスライムを睨みつけたまま力強く駆けだす。
「3分は持たせてくれよォッ?!」
ロイトの顔を消して再び首無し騎士姿に戻ると、エンペラーメタルスライムは嬉々とした雰囲気で真っ向から両腕の刃で斬撃を受け止めた。
ドロテアは先ほどまでよりもさらに熾烈に攻め続けるが、ロイトの肉体を操作――いわば二度手間をする必要がなくなったエンペラーメタルスライムは、楽々とその全てを弾いて見せる。
「こんなもんかよォ?! まだ奥の手を隠してんなら、さっさと出さねぇと後悔するぜ??」
「ハンッ、上等じゃないか! その余裕、すぐに無くしてあげるよ!! 『水蓮・流』」
初めて技能を使用したドロテア。
清流を彷彿とさせる青いオーラを漂わせながら、圧倒的な速度で織りなす連撃。
全てを飲み込む激流のような目にもとまらぬ攻撃に、レーティアたちはゴクリと生唾を飲んだ。
だが、当のエンペラーメタルスライムはまったく余裕を失わないばかりか、平然と対応してみせたことで強がりなどではないことを証明した結果、逆に攻めているはずのドロテアに焦りの色が浮かぶ。
「……ッ?! 驚いたね、まさかこれほどとは」
「王くらいなら、今ので傷をつけられたかもなァ~? だが残念、おれは皇帝なんだぜェ??」
「おっと、そうだったねぇ。あまりにも迫力がないから、忘れちまってたよ!」
「あぁ……ッ?! どこまでも生意気な人間がッッ!!」
怒りでプレッシャーが増したエンペラーメタルスライムは、受けから攻めに転じるや否や瞬く間にドロテアに無数の切り傷を刻み込んで行く。
彼我の実力さを思い知らせるために、あえて致命傷に至らないよう手を抜いた上で、だ。
ドロテアが受けきれるギリギリを正確に見極めていないと、こんな芸当ができるはずもない。
「おばあ様ッッ!!」
居てもたってもいられなくなったネムは、とにかくエンペラーメタルスライムを引き離すことだけを考え、力任せに大剣を振り下ろす。
「ゴミがしゃしゃり出てくんじゃねぇッ!!」
エンペラーメタルスライムは鬱陶しそうに、それでいてあっさりとネムの渾身の一撃を上へとはじき返す。
「あ……」
ネムが攻撃を弾かれたと認識できた時には、すでにがら空きになった胴体へとエンペラーメタルスライムの蹴りが叩き込まれていた。
ガードも受け身も取れないまま、ネムは壁へと打ち付けられてぴくりとも動かなくなる。
「ネムッッ!? ……貴様ァァアアアアッッッ!!!」
激昂したドロテアが双剣を激しく振るうも、怒りに呑まれ力任せになった今の彼女の剣に精彩さはない。
攻撃を避けることすらせず、ただ黙って攻撃を受けていたエンペラーメタルスライムは、ドロテアの腹部へ殴打を加えて黙らせる。
「……チッ、つまんねぇな。もういいや、お前も」
まるで壊れたおもちゃに興味をなくした子供のように、無造作に掴み上げると壁へと投げ捨てた。
「で、どうするよ? お前らも、無意味だと知りながら最後まであがくか? それとも、素直に殺されるか?」
問われたレーティアたちは、当然のように武器を構えて敵意を顕にする。
「そうこなくちゃなァ。無抵抗のやつを殺しても、まったく面白くないしよ」
「バカにするなっ! 貴様程度に殺されるつもりなど、微塵もないっ!!」
「……私たちには、まだやることがある」
「っつーことだ、諦めて帰んな!」
3人は油断しきっているエンペラーメタルスライム目掛けて駆けだすと、弱点部位を探しつつ攻撃を繰り返す。
「威勢の割には、まったく効かねぇなぁ? 頑張らないと、反撃しちまうぜ??」
防御もせずに一方的に攻撃を受けながら、それでも平然と佇み余裕を崩さない姿に、内心で焦るレーティアたち。
レーティアは『血華・閃』を連発。リリスも短剣で関節部を狙い、ジレグートも鎧ごと砕くつもりで大戦槌をフルスウィング。
それでも傷1つ付けられず、打開策が見つけられない。
「一点突破だっ!」
レーティアの掛け声に、すぐに頷いた二人。
「『血華・穿孔』」
刀の切っ先をエンペラーメタルスライムに向けて構え、スキルを発動したレーティア。
回転を加えつつ繰り出された鋭い刺突は、胸部の鎧表面に僅かな窪みを作るに至る。
「……『突貫札生成』」
リリスは生成された青い文字が書かれた札をクナイの柄に巻き付けると、窪み目掛けて投擲。
「『会心の一撃』ッッ!!」
ジレグートはクナイが鎧に当たった瞬間、クナイの柄尻目掛けてウォーハンマーを叩きつけた。
「なにッ?! おれさまの鎧が……?!」
レーティアが弱点を作り出し、リリスが付与した貫通特化のクナイを起点に、ジレグートが力づくで押し込んだ連携攻撃。
深々と体内に突き刺さったクナイを中心に鎧にヒビが入っていき、膝を折ってその場に崩れ落ちるエンペラーメタルスライム。
「あ……あんたたち……早くそいつから離れな……」
止めを刺すべく武器を構えたままにじり寄っていた三人に、ドロテアのか細い声が響く。
「……今を逃したら、次はねぇんだぞ?!」
目の前の絶好のチャンスに、忠告を受け入れられずウォーハンマーを大きく振りかぶるジレグート。
「……ッ?! 違う、罠だ!!」
エンペラーメタルスライムの違和感にようやく気付いたレーティアは、咄嗟にジレグートの首根っこを後ろへと思い切り引っ張った。
コンマ数秒前までジレグートの頭があった場所には、真下から鋭い針山が伸びている。
レーティアの判断があと僅かでも遅れていれば、完全に貫かれていただろう光景。
「チッ、死にぞこないが邪魔しやがって。おれさまの名演技をよくも台無しにしてくれたなぁ?!」
何事もなかったかのように立ち上がったエンペラーメタルスライム。
胸部のヒビも綺麗に元通りになっており、手のひらの上で転がされたばかりか、チラリと頭の片隅を過った勝利という希望すら用意されたシナリオだったのだとすぐに理解したレーティアたちは、悔しそうに顔を歪めた。
だが、それもつかの間。
苛立ちをぶつけるように、壁にもたれかかったまま動けないドロテア目掛けてエンペラーメタルスライムが無造作に腕を振るうと、腕から分離した鎧が鋭い針のように変化してドロテアの右肩に深々と突き刺さる。
「ぐぅうううう……」
「楽には殺してやんねぇぞ? 分不相応にもおれさまの邪魔をしたんだ、その分楽しませてもらわねぇとなぁ??」
続けて腕を振るおうとしたところで、レーティアたちが間に割って入った。
「今の相手は私たちだろう!」
「あ~? 相手、だぁ? 気まぐれで遊んでやってやったのに、図に乗るんじゃねぇよ!! そういうのはなぁ、おれさまの一撃を防げて初めて口にしろや!!」
心底見下した口調でそう叫ぶや否や、背後にいるドロテア目掛けて再び針を飛ばすエンペラーメタルスライム。
ジレグートがはじき返そうとウォーハンマーを振るうも、針は槌部分をいとも容易く貫通しながら真っすぐにドロテアの左肩に命中。
「ぐっっ……」
「なっ?!」
自身で鍛え長らく愛用してきた頑強な槌がまったく歯が立たないばかりか、身体で防いだところで貫通してしまうであろうことをすぐに悟ったジレグートは、驚きのあまり硬直。
レーティアたちもすぐに同様の考えに至り、どうすべきか必死に頭を回転させるも答えはでない。
当然エンペラーメタルスライムが待ってくれるはずもなく、どうしたよ? と挑発しながら第三射の体勢に入る。
「あたしのことはいいから……あんたたちだけでも逃げな……」
ドロテアの言葉を聞き入れるはずもないレーティアたちは、最後まで抗うことを決意。
折れない心に呆れたエンペラーメタルスライムは、やれやれと肩を竦めた。
「愚かだねぇ……。ま、希望通りゆっくりと殺してやるよ。せいぜい長生きしてくれよな?」
振るわれる腕。ドロテアの右太もも目掛けて飛ぶ針。
レーティアが軌道を逸らそうと刀を振るったところで、突如として針がピタリと空中で止まった。
「ああ……?」
エンペラーメタルスライムは何が起きたかわからず、ドロテアも状況を理解できずに困惑。
そんな中、レーティアたちだけがすぐに誰の仕業なのか見当がついた。
三人が見つめる先、無機質な冷たい瞳でエンペラーメタルスライムを見据えるイゼルが、ゆっくりと歩き出した―――。
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