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60話 体力作りと力比べ


 イゼルたちがガイラ山の麓の村――ロッテについた翌日。

 デーテとロイト、そして二人の息子も含めた一同は、宿泊のために用意された平屋の一室でドロテアの話を聞いていた。


「さて、あんたらの修行だがね。まずは基礎体力をつけてもらわないと話にならん。今日からはニクスとレッタも混ざることだし、とりあえず五人でひたすらガイラ山の魔物を討伐してきな。一人で挑むもよし、誰かと協力するも良し。そこはあんたらの判断に任せるよ。ただし、あたしの援護は一切期待しないこと。無謀な行動をして命の危機に陥ろうが、助ける気はさらさらないよ」


 誰からも質問や抗議がないことを確認すると、細かい説明を始めたドロテア。

 1つ、食料・水の持ち込みはこちらで支給する一食分のみ。残りは現地調達すること。

 2つ、一人最低一匹は魔物を狩ってくること。種類の指定はなし。

 3つ、大容量の魔導収納具(マジックバッグ)を貸し出すので、狩った獲物は全て持ち帰ること。

 4つ、協力するのは構わないが、妨害やそれらに該当しそうな疑わしい内容の手出しはしないこと。

 5つ、スキルの使用は一切禁止。


 5つ目には驚いたレーティアたちだったが、ニクスとレッタの二人は日ごろから父親に似たような内容で稽古をつけられていたのか、驚いた様子はない。

 かくして配られたマジックバッグと食料をもって、命がけの修行が幕を切ることとなった。


 デーテの息子であるニクスは父親譲りの緑色の髪を後ろでひとまとめにしているが、背に背負う武器は弓。反対に、ロイトの息子であるレッタは茶色い髪を短く借り上げ、腰に剣を帯刀している。

 二人はレーティアたちを一瞥すると、見下したようにフンと鼻で笑って二人で森へと向かって行く。


「まだイゼルと変わらなそうな年齢に見えるが……強いな。今戦えば負けそうだ」


「……ん。でも、すぐに追い越す」


「だなぁ。オレっちたちも気張っていこうぜ」


「気を付けてくださいね。しばらくの間は麓近くで戦うほうが良いですよ」


 拳を手のひらに打ち付け、やる気を見せたジレグート。

 だが、ネムの一言に脱力したように転げかけた。


「んん?! ネムはいかねぇのか? いや、あんたはもうすでに似たような修行を終えた身ってことか」


「そういう訳ではないですが。現状私がいると皆さんの緊張感を緩める一因になりかねないので、しばらくはさっと一体だけ狩って来ようと思ってます。それ以外の時間は、イゼル様のお傍でお役に立つための時間に当てたいので」


 ドロテアがいるにも関わらず、あっけからんと言い放つネム。

 肝心のドロテアは好きにしなと言い残し、酒瓶を片手に自室へと戻っていった。

 イゼルはネムの修行を邪魔しているようで悪い気がしたが、昨夜ドロテアに直訴しても一人で山に入ることは認めてもらえなかったため、その後件の提案をしてくれたネムとの話し合いの結果、彼女の言葉に甘えさせてもらうことにしていたのだ。


「そうか。すまないが、イゼルのことを宜しく頼む。では、いってくるな」


 こくりと頷いたネムを確認すると、イゼルをちらりと見てからレーティアたちはガイラ山目掛けて走っていった。

 少し寂しそうに後姿を見送ったイゼルに気づいたネムは、背中を優しく押しながら気持ちを切り替えましょうと伝える。

 

「さぁ、イゼル様。今日からはまた私が相手を務めることができますから、実践形式で体力と戦闘勘を鍛えて皆さんに離されないよう、一緒に頑張りましょう」


「はいっ! よろしくお願いします!」


 気持ちを切り替えて笑顔を向けたイゼルに、微笑み返すネム。

 こうして二人も村から少し離れた平野に移動してから向かい合うと、修行を始めるのだった。

 内容はいたってシンプルで、10分ごとに攻守を交代しつつひたすら模擬戦を繰り返すだけ。現段階では相手にすらなっていないイゼルだが、諦めることなくひたすら挑み続ける姿に微笑むネム。

 そんな二人の様子をこっそり見ていたドロテアは、目を細めて物思いにふける。


 イゼルの修行に時折レムローも加わりつつ、各々がそれぞれの思いを胸に日々を過ごすこと一ヶ月近く。

 レーティア、リリス、ジレグートの三人は与えられた課題を厳守しながらも、すでに中腹程度の魔物なら一人で相手取れるまでに成長を遂げていた。


「レーティア、そっちに行ったぞ!」


「ああ、了解したっ!」


 勢いよく突っ込んでくる二本剣角猪(ブレードホーンボア)――頭部にうねりながら前方に伸びる、鋭い剣のような角が二本生えた巨大な猪型の魔物を前に、落ち着いた様子で刀を構えるレーティア。

 現在、彼女は自身の更なる成長のためにと、抜刀術を封印しながら戦っている。今日も今日とてその枷は解いておらず、正眼の構えで迎え撃つ。

 突撃を紙一重で躱しながら、刀を下から上に斜め一閃。首筋を切り裂かれたブレードホーンボアは、何をされたかもわからないまま力なく地面に崩れ落ち、そのまま動かなくなった。


「……また少し鋭くなってる」


「ふふ、それは重畳だな。同時に、どれだけ技能(スキル)に頼り切っていたか痛感させられるがな」


「……ん、同感。でも、そう考えるとイゼルは凄いよね」


「確かに。空中浮遊(エアリアル・マジック)があるとはいえ、アレも攻撃系かと言われると微妙な部類だからな……」


「おーい、次いくぞー!」


 二人が死体を回収しながら一息ついていると、魔物を見つけたジレグートが誘導することを告げる。

 視線を向ければ、先ほどと同様ブレードホーンボアが二人に狙いを定めて走ってくる姿が目に入った。


「……今度は私の番」


 腰からスッと短刀を引き抜き、重心を低くして構えるとブレードホーンボア目掛けて走り出す。

 速度重視のため軽装のリリスが直撃をもらえば身体に大きな穴が開くことは間違いない一撃も、当たらなければ意味はない。

 ぶつかり合うまで残り1mを切ったところで、一段速度を上げたリリスはブレードホーンボアの視界から一瞬で掻き消える。

 突然獲物を見失ったことで慌ててブレーキをかけるも、いつの間にか背中に乗っていたリリスが首の骨の継ぎ目目掛けて短刀を突き刺し、そのまま動かなくなった。


「リリスもさらに速くなったな」


「……私に必要なのは速さと技術だから」


「そろそろ上に進んでもいいのかもしれないな。あとはジレグートだが……」


 二人がジレグートを見やれば、彼もブレードホーンボアと戦っている最中だったのだが――その姿を見て、やれやれとため息をつくレーティアと白い目を向けるリリス。

 ジレグートはとても楽しそうにブレードホーンボアの角を掴んで力比べをしており、一進一退の攻防を続けている。


「なかなかやるじゃねぇか! それでこそ中腹最強だよなァ! だが、あめェっ!」


 ジレグートがぐっと力を籠めると、ブレードホーンボアの身体が宙へと浮かび上がった。

 ブレードホーンボアがなんとか逃れようとバタバタと足を動かすも空を切るだけで、そのまま頭上まで持ち上げたジレグートは勢いよく後ろへと倒れこむ。

 受け身すら取れずに脳天から地面に直撃したブレードホーンボアは、白目を向いてピクピクと痙攣していた。

 よっしゃー! とガッツポーズするジレグートは、二人の視線に気づくとにんまりと笑いながら駆けて来る。


「おい、見てたか今の?! オレっちのパワーも中々になってきたよな!!」


「阿呆め。なぜ危険を冒してわざわざ力比べのような真似を……」


「……そのうち痛い目見ればいい」


「な、なんだよっ?! あぁいうのは男のロマンなんだよ! イゼルもレムローも絶対理解してくれると思うぜ!?!?」


 呆れ顔の二人にたじたじになりながらも、あの二人ならきっと理解してくれる。そう信じて反論したジレグートだったが、いざ村に戻って二人に同意を求めてみても、苦笑いされるだけだったのは言うまでもない―――。

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