表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/72

47話 指切り


 イゼルの決意にレーティアたちが笑い、シクルとユリーアも期待の眼差しを向けた。


「それで、もう聞いているかも知れませんがミーナさんたちの処分は僕たちに一任されることになりました」


「……はい」


 ミーナに向き直ったイゼルは、真剣な表情でそう告げる。


「そこで、お願いがあります。ミーナさんたちの処分は、僕に決めさせてもらえないでしょうか」


 レーティアたちが頷いたのを確認すると、順番にミーナたちと目を合わせ、口を開いた。


「ミーナさんたちにはしばらくの間、ここ――セリエンスで活動して頂きます。ほぼ全ての問題をリコルが引き起こしていたのは事実ですが、皆さんも彼の仲間として周知されてしまっていますからね。禊じゃないですが、迷惑をかけてしまった分を貢献で返してください」


「え……?」


「それから、もう一つ。ユリーアさんに、直接謝ってあげてください。今回、一番ひどい目にあったのは彼女だと言っても過言じゃありません。止められなかったとはいえ、元パーティーメンバーとして謝罪し、それでリコルとの関係も清算してしまいましょう」


「ちょ、ちょっと待ってよ! 何を言ってんの?!」


「え??」


「うちらはイゼルさんたちの命を狙った! 迷宮(ダンジョン)内とはいえ、立派な殺人未遂だよっ! そんなんじゃ全然償いきれないっ!」


 もっと重い罪を、そう願うミーナはぼろぼろと大粒の涙を流しながら叫んだ。


「いいんです。ミーナさんたちは全員、自責の念を強く感じている。それさえ忘れなければ、同じことは繰り返さないでしょう。どうしても、ということであれば貸し1つとしておきますので、今度僕たちが困って助けを求めたとき、返してください」


 二コリと微笑み、手を差し出したイゼル。


「ごめん……ごめんなさい……ごめんなさい……!」


 溢れる涙を拭いもせず、イゼルの手をとったミーナは何度も……何度も謝った。

 しばらくの間アリーやサラに背中をさすられながらも、イゼルの手を握り続けたミーナはようやく少し落ち着きを取り戻すと恥ずかしそうに手を離す。


「ミーナさん、アリーさん、サラさん、エンさん。僕たちはこれから、困っている人を助け、みんなを守る冒険者仲間です。仲良くしてください」


 そう言って、次々に握手をかわしていく。

 アリーとサラはイゼルの手をとると涙を零したが、エンだけはどこか寂しそうにその手をとった。


「ありがとう……。これからも、この子たちをよろしくね」


「何言ってるんですか、エンさんもですからね? 元気になったら冒険者活動を再開して、強くなるんです。そして、理不尽な要求をしてくる人たちを突っぱねてやりましょう! もし目の届く範囲で困っている人がいたら、助けてあげましょう!」


「フフ、そうね。そうできたらどんなに良いか――」


「大丈夫ですよ。あんなにすごい火魔法が使えるじゃないですか! もっともっとその力を使いこなせば、出来ることなんていくらでもあるはずです!」


 遠い目をしたエンに、力強くガッツポーズしてみせたイゼル。


「そうだな。イゼルの言う通りだ。私もCランクの職業(クラス)だが、豚鬼王(オークキング)と戦えるくらい強くなれているぞ」


「……ん。私もDランクだよ」


「だなぁ。オレっちもCランクだぜ」


「「「「え……?」」」」


 レーティアたちの言葉に、目を見開いて驚きを顕にする四人。


「僕もEランクです!」


「そういえば、リコルがそんなこと言ってたけど……。え? 何かの間違いじゃないの……?」


 心底信じられないと言った様子のミーナに、苦笑いを浮かべたイゼル。


「正直な話、私も信じていない。だが、Eランク認定されたのは間違いないと思うぞ。イゼルは嘘をつけるタイプじゃないからな……」


「うそ……」


「アハハハハハハ」


 突然笑い出したエンに一同が驚く中、エンは目じりにたまった涙を拭いながらじっとイゼルを見つめる。


「そうね。年下のアナタが頑張ってるんだもの、私が先に諦める訳にはいかないわよね」


「はい! いつか一緒に、あっと驚くような魔物を倒しに行きましょうね。それまでに、僕も強くなりますから!」


「ええ、約束するわ。私ももう一度、一から鍛えなおさなきゃ」


「はい、約束です」


 イゼルが小指を差し出し、エンも小指を絡めると指切りを交わして約束を誓い合う。


「あー、ずるいよエン! イゼルさん、うちも! うちとも約束しよ!」


「え、えぇ?」


 困惑したイゼルに、ミーナだけでなくアリーとサラも詰め寄る。


「それなら、私ともしてもらわなきゃ」


「わ、私もお願いしますっ!」


「うーん……? 確かに、エンさんとだけするのも……? そうですね、みなさんとも約束です!」


 一人一人としっかり指切りをして誓い合うと、小指を見つめて頬を緩める四人。イゼルもその様子を見て、元気になってくれたみたいだと嬉しそうに笑っていた。

 その背後に血涙を流さんばかりの苦しそうな表情を浮かべる二人と、羨ましそうに見つめる一人がいるとも知らずに。


「うんうん、よく耐えたな。あとでオレっちがうまいもんでもおごってやらぁ。えらいぞ、うんうん」


「「……くぅううう」」 「いいなぁ……」


 ジレグートに慰められていることにも気づかない二人は、頭の中でどうしたら自分もイゼルと指切りができるかと考えるのであった。

 ユリーアも祝勝会のことは聞いていたため、そこで何か行動に移さないと! と意気込む。

 シクルはそんなユリーアを見て、つい先日までの気落ちが嘘のようだと喜ぶと共に、あとで相談に乗ってあげなければと微笑んだ。


「あ、そうだ。実は僕たち、迷宮(ダンジョン)踏破をお祝いして祝勝会をする予定なんです。ミーナさんたちも良ければどうですか??」


「え? いや、でもうちらは……」


 参加できる立場にない――そう告げようとしたミーナ。


「細かいことは気にするんじゃねぇやい。あんたらはオレっちたちに攻撃しちまったことを悔いているようだが、幸い誰一人として傷ついてねぇ。それに、イゼルが罰も与えたんだ。無理にとは言わねぇが、変な遠慮で断るくらいなら、素直に気持ちを伝えてやったほうが喜ぶぜ」


 心中を察したジレグートが告げると、四人で顔を見合わせるミーナたち。


「ほ、本当にうちらが参加しても良いの? 迷惑じゃない??」


「迷惑なんかじゃないですよ! ミーナさんたちも、経緯はどうあれ魔物の氾濫(スタンピード)を防ぐためにダンジョンに潜ってたんですから、立派な功労者です! 無事その目的が達成できたんですから、一緒にお祝いしましょうよ!」


 無邪気に笑うイゼルに、本心から誘ってくれていると理解できた四人は頷き合う。


「うん、ありがとう! うちらもぜひ参加させてもらうよ!」


「はいっ!」


 ミーナたちも笑顔で返事を返すと、楽しみですねと喜ぶイゼルの姿にさらに笑顔になる。

 シクルとしては少々甘い気もしたが、彼女たちは加害者であると同時に被害者でもあることを思い出し、皆が笑顔ならそれで良いのかもしれない――そう思った。

 それから全員で日程を決め、エンの体調も考慮しつつ問題なければ五日後の夜、近くの酒場を貸し切って祝勝会を行うことを決定。

 シクルが一度ギルドへ戻り『記録水晶(ログ・クリスタル)』を取ってくると、ミーナたちへの処分をイゼルたち立ち会いのもと記録。

 

 1.ミーナ、アリー、サラ、エンの四名への処分は、各々が十分だと思うまでの期間セリエンスでの依頼遂行、及びダンジョン攻略への貢献とし、その間はセリエンスを中心に活動すること。

 2.上記の約束事を守り活動を終えた場合、此度の問題を不問とし、以後此度の責任を一切追及しないものとする。


 上記の内容で間違いないことをイゼルたちが認め、正式な処分として決定。

 その後、四人それぞれがユリーアに頭を下げながら直接謝罪。ユリーアもそれを受け入れ、手打ちとなった。


「じゃぁ、僕たちはそろそろ失礼しますね。また五日後に!」


 イゼルたちがそう言って部屋を後にしたあと、ミーナたちはエンの近くに集合。


「ねぇねぇ、今日のイゼルさんてあの時とずいぶん雰囲気ちがくなかった?」


「確かに。あの時はとても冷たい目をしてたけど、今日はすごく優しい目をしてた」


「ですねー……。あ、でも本質的なところは一緒なんだなぁって思いましたよっ! どっちも温かいというか、なんとうか」


「あー、それはわかるかも! なんか年下なのに、すごい守ってくれそうな感じがするよね」


「フフ、ミーナたちが男の子の話で盛り上がるなんていつぶりかしらね?」


「それはエンも同じ。指切りしてるときなんて、今にも抱き着きそうな顔してた」


「えっ?! そ、そんなことないわよね?! ねっ?!」


「うーん、私も人のこと言えなそうなのでなんとも……」


「あはは、確かにねー。今まで男って力で優位を取って見下してくるか、良い顔して騙そうとしてくるやつしかいなかったけど。イゼルさんはなんていうか、ちゃんと私たちを見てくれるよね」


「うん、そう思う。今の私たちでは、そんなことを願う資格はないが……。いつか、いつかきちんと今回の罪を償えたら……彼の仲間にしてほしいと頼みたい」


「そうですね……。優しい彼なら今でも受け入れてくれそうですけど、それじゃあ私たちは胸を張って仲間だって言えないですもんね」


「うん……。まずは迷惑をかけちゃった人達に、少しでも報いなきゃ」


「フフ、そうね。イゼルくんは、私たちの身を案じてわざわざ理由をつけてセリエンスを指定してくれたんだもの。しっかり応えないとね」


「「「え?」」」


「あら? あなた達、まさか気づいてなかったの? イゼルくんは私たちがここに留まってもセレイルから文句を言われないよう、大義名分をくれたのよ? 仮にあの貴族が裏からギルドに手を回そうが、私たちは罰でここでの活動を義務付けられているんだもの。応じる必要がないでしょう? それも、処分を決定したのはギルドじゃないわ。だから、矛先が向くとすれば彼にだけど。おそらく、それすらも考慮してたんじゃないかしら」


「……私たちはこれからも、彼に守られ続ける……ということ?」


「ええ、そうよ。優しすぎてびっくりしちゃうわよね。ほんと、どうしてシャンバールの家はイゼルくんのような良い子を手放したのかしら。たとえEランクだろうが、彼が当主になれば安泰だったでしょうに」


「うぅ……。へ、変だなとは思ってたんですっ……。期間も定まってないし……。でも、私たちのためだったんですね……」


「イゼルさん……ありがとぉ……っ。うえーーーん」


 サラ、ミーナと次々に感極まり泣き出すと、つられるようにアリーとエンの頬にも涙の雫がいくつもつたっては零れ落ちていく。

 こうして、彼女たちはイゼルたちへと感謝をしながら、決意を新たにし一歩踏み出したのだった―――。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたら、↓の☆から評価やブックマークをお願いします。

とても作者の励みになり、モチベーションに直結しますのでぜひー!


2章は49話+エピローグ1話の50話で完結し、51話からは3章がスタートします。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ