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竜虎相搏つ

 学園ものなのに自分のクラスの描写が遅くなったが、そこはご勘弁を。

 とはいえ、溜めた割に特筆すべき点は何もないんだけど。

 ただ一つ、素晴らしい点はある。


「ねえ、日高君。今大丈夫?」

「え?あ、ああ、大丈夫大丈夫」


 明るいんだけど、決してはしゃぎすぎない声で俺に話しかけてきたのは、西宮茜。先日連絡先を交換したばかりのクラスメートだ。やんわりした物腰と、清楚系の外見で、男子からも結構人気がある。


「あ、ごめんね?今、考え事してた?」

「大したことじゃないよ」

「そっか。用事あるんだけどいいかな」

「何?」


 彼女はそっと顔を近づけると。こっそり耳打ちしてきた。


「今日の放課後、よかったら一緒に駅前のショッピングセンター行かない?」

「……わかった」

「ありがと。それじゃあ、放課後よろしくね」


 そして彼女は、控えめな甘い香りを残し、友達の輪の中に加わった。

 ……マジか。連絡先を向こうから聞かれた時に、薄々感づいてはいたけど、これ、フラグ立ってね?いや、まだ確信するのは早いけれども……とりあえず放課後が楽しみだ。


 *******


「あれ?ふゆっち、今日はもう帰るの?」

「うん、今日は行くところがあるから」

「へえ、なんかすごく楽しそうじゃん」

「そうかなあ?うふふ……」


 *******


「おいっ、夏希!てめえ、今日こそ……!」

「うるせえ、どけ」

「なっ、なんだこいつ!笑顔で殴ってきやがる!こえぇよ!」

「……おっと、髪乱れてないよな」


 *******


「っ!?」


 な、何だ?今、いきなり寒気が……!


「どした、日高」

「いや、何でもない……」

「気をつけとけよ。お前、蟹座だろ。朝の占いで、年上の女と年下の女との間でトラブルになるとか言ってたぞ」

「お前、朝の占いとか信じてたのかよ……つーか具体的すぎだろ、その結果……」


 クラスメートの大杉が、図体に似合わないことを言い出したので、つい苦笑いしてしまう。まあ、結果は気になるあの子と急接近とかに訂正しておこう。

 西宮は、先生に用事があるって職員室に行ったけど、たしかそろそろ終わる時間だ。


「じゃあ、俺もそろそろ行くわ」

「おう、じゃあなー」


 俺は待ち合わせ場所の下駄箱へと、早足で向かった。


 *******


 下駄箱まで行くと、西宮は既に到着していた。

 じゃあ、ここは定番の台詞・パターンAを言わせてもらおう。


「ごめん、待った?」

「あははっ、今来たとこだよ」


 こちらの意図を掴んでくれたのか、西宮は笑いながら定番の台詞・パターンBを言ってくれた。よし、これは幸先がいいぞ。


「それで、今日はどこに行くんだ?」

「ん?まだ秘密……かな」

「そっか」


 まあ、目的地はわかっているのだから、今はそれでいいや。何より、二人でお買い物という事実を喜ばなきゃいけない。

 一人頷いて校門に目を向けると、そこに異変を感じた。

 あれ?なんか見覚えのある女子が二人校門のそばにいる……てか、間違いないよな。あれは真冬ちゃんと水瀬さんだ。

 ……つっても、俺に用事があるわけじゃないだろう。真冬ちゃんは如月先生に用があるんだろうし、水瀬さんは……わからないけど、上級生の誰かだろう。


「日高君、どうかしたの?」

「え?あ、今日もいい天気だなぁ~って……」

「も、もう夕方だけどね……あはは」

「あはははは……」


 内心の焦りを誤魔化しつつ、そのまますたすた歩いていると、なんと二人同時にこちらを向いて、手を振ってきた。


「おーい、直登~!」

「お兄さ~んっ」

「「ん?」」


 そして、二人は顔を見合せ、首を傾げた。

 ……い、今、間違いなく俺を呼んだよね?

 すると、下校中の周りの生徒がざわざわと慌てふためきだした。


「お、おい、あの人……水瀬夏希じゃね?」

「ああ、たしか不良男子が4人がかりで返り討ちにされたっていう、あの……」

「でもスラッとして、綺麗だよね……モデルみたい」

「あの黒髪の子って、たしか如月先生の妹だろ?」

「文武両道の超優秀生らしいぞ」

「海外の一流大学から既にオファーが来てるとか……」

「こっちはこっちでめっちゃ可愛いな……」


 知り合ったばかりの女子の知らない情報が開示されていくのを聞きながら、俺はポカンと口を開けたまま立ち竦んでいた。

 ……何故このタイミングで、二人まとめて俺を尋ねてきた!?

 えっ、マジで意味わかんないんだけど!?

 ちなみに、二人は今校門前でじっと見つめ合っている。あの感じからして、二人で一緒に来たわけじゃなさそうだが。


「あの……もしかして、お兄さんのお知り合いですか?」

「まあ、そんなところだ。そっちも直登に用があったのか?」

「はい、そうです」

「そっか。でも悪いな。先に声をかけたのはアタシだから、今日のところは……」

「待ってください。私のほうが早かったです」

「いいや、アタシのほうが早かった」

「いいえ、私です」

「あ?」

「は?」

「…………」


 な、なんだこれ……圧がすげえよ。暗黒武闘大会でも始める気なのか……。

 誰一人動けず、固唾を呑んで二人のやりとりを見守るなか、「あの……」と西宮が声をかけてきた。


「ええと、今日は一人で買い物行くからいいや。それよりも、日高君。浮気とかダメだよ?」

「え?あ、いや、ちが……えー……」


 すたすたと去っていく西宮に声をかけようとしたが、睨み合う二人を見ると、つい言葉を飲み込んでしまった。

 とりあえず……なんかとてつもない誤解をされた気がする。

 それだけは間違いなかった。

 

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