おやすみなさい、般若さま
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ〜」
「おう、おやすみ」
「おやすみなさい、お兄さん」
「夜這いなんてすんなよ〜」
それぞれの部屋に入っていくのを見送り、俺も自分の部屋に戻る。一人になると解放感と寂しさが同時に胸の中に湧いてきた。思えば今日一日でこれだけの出来事が起こったのか……なんかゴールデンウィーク分ぐらいの量は思い出ができた気がする。
ていうか、2人と出会ってからはなんかやたらと毎日が濃くなった。ていうか、まあ……楽しい。ちょっとおっかない空気になる時もあるけれど……。
今は割と非常事態のはずなのに、何だかほんわかした気分というか、何とかなるんじゃないかという根拠のない自信みたいなものがあった。日中楽しかったからまだ気持ちが浮ついているだけなのだろうか。
「眠れないのか?」
「はい、まだ気持ちが高ぶっているみたいです」
「そっかアタシの残り湯で……悪いな」
「いや、そんなんじゃないですよ」
「…………」
「…………ってなんでいるんですか!?」
「呼ばれた気がしたからだよ」
「いや、何をそんな気の利いた脇役キャラみたいな事言ってるんですか!さっき姉さんと同じ部屋に入っていきましたよね!?」
「ほら、アタシくらいになれば気配なんていくらでも消せるからな」
「ていうか、何の用ですか?」
「そりゃあ、お前アレだよ。アイツが変なことしないか見張りに来たんだよ。アイツなら絶対忍び込んでくるからな」
「もうアンタが忍び込んでるけどな!」
「そうですよ、まずは自分の行動を振り返るべきです」
真冬ちゃんがもそもそとベッドの下から這い出てきた。
「「お前が言うな!!!」」
マジでいつからそこにいたんだ。この二人、忍者の末裔か。
「私はお姉さんがみだらな真似をしないように監視していただけです」
「お前の方がみだらだわ!ベッドの下とか何考えてんだ!」
「どっちもやべえ奴だわ!さっさと自分達の寝床に戻りなさい!じゃないと……」
言いかけたところでガチャっとドアが開く音が聞こえた。あ、まずい……
「なにをやっているのかな?」
「い、いや、姉さんこれは……」
「春香、目がめっちゃ怖いんだが……」
「お、お姉さん?あのですね、この状況は致し方ないというか……」
「ねえ二人とも、お泊りはしていいけど夜這いはダメだって言ったよね?」
「「はい……」」
何だ、その微妙なラインは……と思いながらも口にすることはできなかった。
何故なら姉さんが背後に般若が浮かんで見えるくらいに怒っていたから。
「めっ!!!!!」




