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笑顔

「もう結構時間経ったな」


 携帯で時間を確かめながら夏希さんがぽつりと呟いた。確かにもう日も傾きかけている。そろそろ戻らないと新幹線に乗り遅れてしまう。

 真冬ちゃんに目を向けると、彼女は満足そうな笑みを浮かべて、こくりと頷いた。


「今日は付き合ってくれてありがとうございました、お兄さん……お姉さん」

「どういたしまして」

「かわいいとこあるじゃん。てか、別に礼なんていらねえよ」

「それもそうですね。お姉さんはそもそも呼ばれてないのに飛び出てきただけですし」

「やっぱかわいくねえな!」

「ふふっ、まあちょっとは感謝してますよ。お姉さんがいると賑やかですし」

「と、とりあえず駅に向かおっか」


 この二人の喧嘩ループに巻き込まれたら間違いなく新幹線に乗り遅れるので、俺はやんわりと二人を急かした。


 ********


 凄まじい速さでも周りの風景の移り変わりはどこか緩やかで、見ているとついウトウトしてくる。夏希さんは既に熟睡していた。まあ、勢いで京都まで来たんだから、そりゃ疲れるだろう。俺もそうなんだけど。


「お兄さん、寝てて大丈夫ですよ。私、起きてますから」

「いや、流石にそういうわけには……」


 別に悪くはないんだろうけど、最年少にそこまで甘えていいものかと思ってしまう。最年長は真っ先に寝たけど。

 そんなこちらの気持ちを読み取ったのか、真冬ちゃんは大人びた笑みを見せた。


「いいんです。今日はお兄さん達に素敵な思い出をもらいましたから。このぐらいしないとバチが当たっちゃいます」

「……そっか。じゃあ少しだけ眠るね」

「ええ、おやすみなさい」


 そこまで熟睡しようとは思ってないけど……まあいいや。

 抗いがたい睡魔に身を任せると、すぐに意識はどこかへ飛んでいった。


 ********


「……さん、お兄さん。そろそろつきますよ」

「直登、起きろ」

「……うん?ああ、もう着いたの?」


 どうやら熟睡してしまったらしい。いつの間にか窓の外の風景が見慣れたものに変わっていた。

 二人か顔を間近で覗き込んでいるものだから、すぐに眠気は吹き飛んだ。あと夏希さんが「お前、いつまで寝てんだよ」みたいな目で見てくるのは少し納得いかない……。

 傾けた座席を戻し、もう一度窓の外に目を向けると、寝ている間に何処かに押し付けたのか、左の頬に何か違和感があった。さすがに熟睡しすぎだろ。しかもまだ眠気が残っている。


「お兄さん、お兄さん」

「ん?」

「家に帰ったらすぐに写真送ってくださいね」


 そう言って笑う真冬ちゃんの顔はさっきより大人びていて、窓から差し込む夕陽が頬をほんのり染め上げていた。




 

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