迫りくるクリーム
周辺の観光地を巡り、少し足も疲れてきたので、近くの喫茶店に入ることにした。
店内はちらほら観光客らしき人達もいて、賑やかな会話の隙間を縫うように控えめなジャズが聴こえていた。
「お姉さん、随分大きなパフェですね」
「ん?あげないからな」
「頼んでないですけど……」
夏希さんは三人分ぐらいありそうな巨大なパフェと格闘していた。ヤンキーの食欲ぱねぇな。ヤンキー関係ないけど。
「どした、直登。食べたそうな目でこっち見て」
「いえ、見てないですけど……」
「しょ、しょうがねえな〜。直登は食い意地ばっかはって」
今のアンタに言われたくはないんだが……。
すると夏希さんはクリームをスプーンですくって、こちらに差し出した。心なしか頬が赤い。
「ほら、食ってみろ」
「え?いや、その……」
いきなりそんなんされても……少しテンション上がってしまうけど……。
こちらをじ〜っと圧をかけるように睨んで……見つめてくる夏希さんは、そりゃあもう文句無しに綺麗で、もちろん断れるはずもなく……。
「あ〜ん」
それはあっという間の出来事だった。
読者の皆さんに言うまでもないかもしれないが、横から身を乗り出した真冬ちゃんがぱくりとクリームの乗ったスプーンを頬張った。
「あっ、てめ!」
「ふむ、少し甘すぎかもですが、子供舌のお姉さんにはちょうどいいかもしれません」
「やかましいわ!」
「…………」
既に舌が甘い物を待ちわびていたので、何だか残念な気もするが、真冬ちゃんが幸せそうにしてるので、まあよしとしよう。
すると彼女は小悪魔めいた笑顔をこちらに向けてきた。
「はい、お兄さん。あ〜ん」
「んぐっ」
いつの間にか手にしていたスプーンで真冬ちゃんはクリームを俺の口の中に押し込んできた。
確かに想像していたよりも結構甘いが、観光で疲れた身体にはちょうどいい。
「おいしいですか」
「……おいしい。ありがとう」
「おいっ、それアタシのだよ!ちくしょう、直登!食え!」
「んぐっ!?」
無理やりクリームを押し込まれ、今度は甘い塊で息苦しくなる。
「だ、だめですよ、お姉さん!お兄さんが倒れちゃいます」
「ん?ああ、悪い!大丈夫か、直登?」
「ら、らいりょうふれふ……」
「まったく、お姉さんはやんちゃなんだから……」
「確かに反省しないとな……ってなんかおかしくね?」
「でも、お二人といると、私とっても楽しいです!」
「お前、こっちが怒りづらいのわかってやってんだろ!」
「えへへ、バレちゃいました?」
甘いクリームを何とか飲み下しながも、この2人が何だか姉妹に見えてしまったことに口元が緩んでしまった。




