決心
清水寺を離れ、京都の町をぶらぶら歩いていると、いつの間にか結構な時間が経っていた。
「そういや腹減ってきたな」
「たしかに、そろそろ昼時ですね」
思い出したように呟く二人に、こちらもつい首肯してしまう。たしかにそろそろ腹に何か入れたい。
「なあ、お前この辺のうまい店とか知ってんのか?」
「私中学生ですよ?とりあえずお姉さんにはそこのマックをおすすめしておきます」
「何でだよ!観光地まで来てチェーン店は虚しいわ!」
「た、たしかに」
「じゃあ今からネットで検索してみるか」
高級なものとは言わないが、せめてその地域ならではのものとかを食べてみたい。
携帯で検索を始めると、二人が左右から画面を覗き込んできた。
「……調べにくいんだけど」
「我慢しろ」
「我慢してください」
「…………」
だから何でこんな時だけ息ぴったりなんだよ。
とはいえ、まあ……悪い気はしない。もうちょい穏やかな時間を過ごしたいものだが。
********
割と近くに安く美味しいものが食べれる店が見つかったので、とりあえず向かってみると、運良く空いていたので、すぐに座れた。
人数分の水が運ばれてきて、やっと一息ついたと思ったら、「なあ」と夏希さんが何でもない会話を始めるように口を開いた。
「そういや、結局なんでお前は京都に行きたかったんだ?」
夏希さんがいきなり核心に迫る質問をしてきたので、真冬ちゃんは目をぱちくりさせていた。
そして、数秒だけコップの中の水を見つめてから、ゆっくりと口を開いた。
「……家族旅行で来たことあるだけです」
「そっか」
「…………」
夏希さんは少し気まずそうに窓の外に目をやった。形は違えど、彼女も過去にそれまで当たり前だった家族の形がある日突然壊れてしまったからだろうか。
真冬ちゃんの寂しそうに伏せられた目を見ると、自然と言うべきことは決まった。
「じゃあ……全部回ろうか」
「え?」
「真冬ちゃんの思い出の場所、全部回ろうか。もし、悲しい思い出になりそうならさ、楽しい思い出で塗りつぶそうよ」
「だな」
「お兄さん、お姉さん……ありがとうございます」
「おっ、素直に礼を言うなんて、たまにはかわいいとこあるじゃん」
「そうやって調子に乗るところが悪い癖ですよ。とりあえず三回回ってワンと鳴いてください」
「なんでだよ!」
どんな空気からも、最終的にはこんなやりとりをする二人。
それは気のせいかもしれない。
でも、この二人……ほんの少しだけ仲良くなった気がする。




