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風情ぶちこわしかよ

「チッ」

「ケッ」

「…………」


 突き刺さる視線。微かに耳に届く舌打ち。

 日本有数の観光地で何故こんな気分を味わう羽目になるのか。

 真冬ちゃんが俺の顔を覗き込み、わざとらしく声をかけてきた。


「お兄さん、どうかしたんですか?浮かない顔をしてますけど」

「うん。それじゃあ離れて歩こうか」

「それは認められません」

「直登、諦めろ」

「はい」


 今俺は左右から腕を強制的に組まされている。

 右腕に夏希さん。左腕に真冬ちゃん。

 ……何故だろう。本来ならば両手に花と喜ぶべきなんだろうけれど、そんな気分になれない。

 人がうようよいる場所でこんな真似をするものだから、とにかく注目を浴びまくっている。さらに……


「あらあら、最近の若い子ときたら……」

「堂々と二股なんてサイテー」


 おい。何故悪評が俺に集中している。言っておくがこの三人の中では一番まともな思考回路をしているからな。割とマジで。


「クソが」

「あぁん?」

「ひぃっ……!」


 睨んできた男を夏希さんがさらに鋭い視線で睨みつける。

 すると、その眼光に恐れをなしたのか、周りの野次馬達もさっと目を逸らした。

 俺も逃げ出したい。至近距離だとマジで震えるくらい怖い……!

 とはいえ、これで少しは落ち着いて観光できそうだ。

 ほんの少しほっとした気持ちになっていると、夏希さんがぽんぽんと肩を叩いてきた。


「な、直登……」

「はい?」


 若干ビビりながら夏希さんに目を向けると、彼女はもじもじしながら、上目遣いでおれを見た。


「今の……その……可愛くなかったよな?」

「っ!」


 な、何だ?

 今の表情……うっかり夏希さをを可愛いとか思ってしまったんだが……いや、元から綺麗な顔立ちとは思ってたし、常々美人とは思っているけれど……。


「あー、いや、別にそんなこともないとは思いますけど……何より助かったし……」

「……そっか。じゃあ、よかった」

「むむっ」


 左腕に微かな痛みを感じる。

 目を向けると真冬ちゃんが頬を膨らませていた。


「ど、どうした?」

「お兄さん。今日のメインディッシュを忘れていませんか?」

「いや、言い方」


 一度も召し上がったことはないので、その言い方は勘弁してほしい。ほら、あっちの親子連れがひいてるよ?


「くっ、まさかお姉さんにこんな奥の手があったとは……!私もやらないと……」

「何言ってんだ、お前?こちとら奥の手も奥の足もあるから覚悟しとけ!」

「あっ、今のでブラマイゼロなので大丈夫です。お姉さん、ドンマイです」

「どういう意味だよ!納得いかねぇ!」


 いや、風情ぶちこわしかよ。


 

 

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