バチバチ
「で、どこ行くんだ?」
「私達は清水寺に。お姉さんは熊本です」
「おう、わかった。……じゃねえよ!何で今から九州に行かなきゃならねえんだ!」
「ちっ」
「おい、舌打ちしたな、今!」
喧嘩はやめて!さっきから通行人がチラ見してるから!俺まで巻き込まれて変な目で見られてダメージ受けちゃうから!
「とりあえず、時間がもったいないから行こうか。ね?」
「「…………」」
ピタリと止まった二人は顔を見合わせた後、こちらを向いて頷いた。
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バスに揺られながら窓の外に目を向けると、いつもと違う景色にワクワクする。少しくらい写真を撮って、帰ったら姉さんと千秋に自慢してやろう。
ちなみに、俺の隣には真冬ちゃんが座っている。夏希さんは後ろの座席だ。そのせいか、なんか圧みたいなのを感じる。
「お姉さん、さっきから睨まないでください。お兄さんと二人きりの気分が味わえません」
「いや、もう既に二人きりじゃねえんだよ。認めろよ」
「はぁ……空気が読めない人って嫌になりますよね。お兄さん」
「直登はそんなこと思わねえよ。な?」
……ダメだ。とても侘び錆びなど感じられない。悪寒と緊張感なら感じられるが。
とにかく話を変えよう。
「そ、そういえば、夏希さんは京都に来たことあるんですか?」
「ん?ああ、中学の修学旅行以来だな」
「そして今回が最後の京都旅行なんですね」
「なんでだよ!まだ行くわ!あと一万回は行くわ!」
さすがに多すぎでは……それもう住んだほうがいいよ。
「直登!例えに決まってんだろ!」
「俺の心の中読まれてるんですか!?」
やばい。迂闊なことは考えられない。
「一万回って例えがもう馬鹿っぽいです」
「おい、さらっと馬鹿とか言ったな」
よし、もう他人のフリをしておこう。ああ、いい景色だなぁ。まるで心が洗われるようだ。大学は近畿地方にするのもいいなあ。
「ママー、あれがシュラバっていうのー?」
「しっ、見ちゃいけません」
どうやらそれも無理らしい。
そんなこちらの心中を察してか、真冬ちゃんが肩をぽんぽんと叩いてきた。
いや、半分くらいお前が原因だよ!
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「あ、着きましたよ。お兄さん」
「おお、そうだね」
「ふぁぁ……」
いつの間にか眠っていた夏希さんは大きな欠伸をしながら、ゆっくり座席を立ち上がった。
何故かは知らないが、ただそれだけの動作がやけに艶かしく見えて、つい見とれてしまう。
「えいっ」
「っ!?」
真冬ちゃんから尻をつねられた。
これも何故かはわからない。




