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遠出

「お兄さん、着きましたよ」

「…………は?」


 真冬ちゃんに連れられて到着した場所。それは何と……駅だった。


「あれ?お兄さん、駅に来たのは初めてですか?駅っていうのは……」

「いや、知ってるから。駅の説明いらないから。俺が知りたいのは、何で駅に来たかっていう理由を……」

「そりゃあ、今から電車に乗るからですよ。いえ、新幹線に乗るからですよ」

「新幹線!?」

「あ、新幹線は知らないんですね。いいですか、新幹線というのは……」

「いや、だから知ってるよ!今からどこ行こうとしてるんだよ!」

「……そうですねー。二人っきりになれるところですかね」

「さっきなってたよ!ていうか、俺そんな遠出する金ねえよ!」

「大丈夫ですよ。私が出しますから」

「いや、中学生の小遣い程度で……」

「今年、お爺ちゃんがお年玉として五十万円くれたので……」

「そこは関係円満なんだな!甘いってレベル通り過ぎてるが……」

「ええ。ちなみにお父さんとお母さんには、一万円を受け取ったということにしています」

「差額がえぐい!多分バレてるよ、それ!」

「というわけで行きましょう、お兄さん」

「いや、さすがにこの二人でそんな遠出ってのも……それに年下の女の子に奢ってもらうのもなんか……」

「あはは。いいですよ、気にしなくても。私が誘ってるんで」

「いや、でも……」

「お願いします」


 いきなり頭を下げる真冬ちゃん。さっきまでのおどけた雰囲気は、あっという間に霧散してしまう。急にシリアスな雰囲気が訪れたことに戸惑いながらも、俺は即答することはせず、もう一度よく考えた。

 そして、答えが出た。


「…………わかった。ただ、何があったかはいつか話して欲しい」

「ありがとうございます。やっぱりお兄さんは優しいですね。ちーちゃんと同じくらい好きですよ」

「どのくらいなのかはっきりせんが、ありがとう」


 こうして、俺は妹の友達とちょっとだけ遠出をすることが決定した。


「くっ、あいつらどこ行こうとしてんだ!?ていうか、新幹線なんて……ああ、もう!」


 *******


 真冬ちゃんは慣れているのか、テキパキと新幹線の切符を購入し、差し出してきた。


「はい、どうぞ」

「ああ、ありがとう……京都?ああ、京都は知ってるから」

「あら、そうですか」


 先回りしてツッコんでおくと、真冬ちゃんは少し残念そうに笑った。ふん、ざまあみろ。

 とはいえ、今から彼女の奢りで京都へ行くのだから、カッコつけても仕方ないのだが……。


「でも、何で京都?さすがに神奈川から遠すぎじゃ……」

「まあまあ、そこは置いておきましょう。ついでに狂犬のような危険人物も置いていきましょう」

「は?どういうこと?」

「いえ、こちらの話です。ささ、そろそろ時間ですよ」

「ああ、わかったよ」


 なんか釈然としないな。もしかして、もう一つの人格とかそういうことだろうか。まあ中学生だし、中二病を発症しても何ら不思議ではないけど。


「なんかお兄さんが失礼なことを考えてる気がします」

「気のせいだよ、気のせい」


 いらん事言って機嫌を損ねるわけにはいかないので、俺はさっさと改札を通過した。


「お兄さん、こっちですよ」

「はい……」


 とはいえ、今日の主導権は完全に向こう側にあるのだが……。

 それと、改札を通過してから、背後に何か威圧感のようなものを感じたが、こっちは気のせいだろう。


 

 

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