遠出
「お兄さん、着きましたよ」
「…………は?」
真冬ちゃんに連れられて到着した場所。それは何と……駅だった。
「あれ?お兄さん、駅に来たのは初めてですか?駅っていうのは……」
「いや、知ってるから。駅の説明いらないから。俺が知りたいのは、何で駅に来たかっていう理由を……」
「そりゃあ、今から電車に乗るからですよ。いえ、新幹線に乗るからですよ」
「新幹線!?」
「あ、新幹線は知らないんですね。いいですか、新幹線というのは……」
「いや、だから知ってるよ!今からどこ行こうとしてるんだよ!」
「……そうですねー。二人っきりになれるところですかね」
「さっきなってたよ!ていうか、俺そんな遠出する金ねえよ!」
「大丈夫ですよ。私が出しますから」
「いや、中学生の小遣い程度で……」
「今年、お爺ちゃんがお年玉として五十万円くれたので……」
「そこは関係円満なんだな!甘いってレベル通り過ぎてるが……」
「ええ。ちなみにお父さんとお母さんには、一万円を受け取ったということにしています」
「差額がえぐい!多分バレてるよ、それ!」
「というわけで行きましょう、お兄さん」
「いや、さすがにこの二人でそんな遠出ってのも……それに年下の女の子に奢ってもらうのもなんか……」
「あはは。いいですよ、気にしなくても。私が誘ってるんで」
「いや、でも……」
「お願いします」
いきなり頭を下げる真冬ちゃん。さっきまでのおどけた雰囲気は、あっという間に霧散してしまう。急にシリアスな雰囲気が訪れたことに戸惑いながらも、俺は即答することはせず、もう一度よく考えた。
そして、答えが出た。
「…………わかった。ただ、何があったかはいつか話して欲しい」
「ありがとうございます。やっぱりお兄さんは優しいですね。ちーちゃんと同じくらい好きですよ」
「どのくらいなのかはっきりせんが、ありがとう」
こうして、俺は妹の友達とちょっとだけ遠出をすることが決定した。
「くっ、あいつらどこ行こうとしてんだ!?ていうか、新幹線なんて……ああ、もう!」
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真冬ちゃんは慣れているのか、テキパキと新幹線の切符を購入し、差し出してきた。
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとう……京都?ああ、京都は知ってるから」
「あら、そうですか」
先回りしてツッコんでおくと、真冬ちゃんは少し残念そうに笑った。ふん、ざまあみろ。
とはいえ、今から彼女の奢りで京都へ行くのだから、カッコつけても仕方ないのだが……。
「でも、何で京都?さすがに神奈川から遠すぎじゃ……」
「まあまあ、そこは置いておきましょう。ついでに狂犬のような危険人物も置いていきましょう」
「は?どういうこと?」
「いえ、こちらの話です。ささ、そろそろ時間ですよ」
「ああ、わかったよ」
なんか釈然としないな。もしかして、もう一つの人格とかそういうことだろうか。まあ中学生だし、中二病を発症しても何ら不思議ではないけど。
「なんかお兄さんが失礼なことを考えてる気がします」
「気のせいだよ、気のせい」
いらん事言って機嫌を損ねるわけにはいかないので、俺はさっさと改札を通過した。
「お兄さん、こっちですよ」
「はい……」
とはいえ、今日の主導権は完全に向こう側にあるのだが……。
それと、改札を通過してから、背後に何か威圧感のようなものを感じたが、こっちは気のせいだろう。




